三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 02 - 古典魔導書
三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 02 - 古典魔導書
少し難しい言い方をすると、魔導書は人間やエルフといったヒューマノイド系の知的生命体が魔法を使用するための手順書なんだよ。簡単に言うと、これを読めば魔法が使えるようになるって話しだね。
だけど、魔界に住む魔物はその存在自体が魔法の側面をもっているんだ。結果はそんなに変わんないんだけどね。その辺りのことは、後半になって触れていくことになるけど、今はそんなものなんだってことだけ覚えといて」
ここで魔王バランは魔導書を開いて見せる。
開いたその頁には魔法陣と一緒に説明の文章がぎっちりと書かれていた。
「カメラアップにしなくていいよ。どうせ読めないから。で、見て分かると思うけど、魔法陣が書かれているよね。これは、召喚陣なんだ。人間が悪魔を召喚して契約を結ぶ時に使うやつだよね。
厳密には魔法の直接行使ではないけど、これも立派な魔法なんだよね。見ての通りこれは、古い写本なんですべて手書きで書き写されている。そのため間違いも多く、魔法の理論体系を熟知していない人間の手による写本なものだから、ひどく無駄も多い。
おそらく原典にまで遡ればだいぶすっきりするはずなんだけど、写本を書き写す度に間違いがあって、その修正のために余分な部分が雪だるま式に増えていったんだろうね。
特にこの魔方陣の円周部にびっちりと文字が書かれているけど、本来はこんなのまったく必要ないんだ。それどころか、紋章自体が必要ない。というのも、召喚陣とか言ってるけど要するに只の結界だから、線一本で円を書けばそれですむんだ。
ただ、それじゃ不安だとか、有り難みが薄れるとかそんな理由でどんどん複雑化していった結果こうなったんだろうね」
そこまで話すと魔王バランはいったん魔導書を閉じる。
「知ってるのと違う、線一本とかマジかよ、あのややっこしい魔法陣役にたつん?……まぁ当然そうなるよね。色々と書いてあるけど、どれも内側と外側の円の二重構造になってるでしょ?
あれって、内側の線が大切なんだ。っていうか、内側の線だけが大切なんだけどね。内側の線が外と内を隔てる役割。すなわち結界を明確化させる役割をはたしてる。外の線とその間にごちゃごちゃ書かれた何か得体の知れないものは、まぁハッタリだね。




