二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 22 - 魔王さまの解説
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 22 - 魔王さまの解説
「さっそくコメント来たね。すぐにバレるんじゃね?、何か証拠はありますか?、スキャンダルきつ過ぎるだろ、ありえねぇー、まぢかよ、トイレいきてぇ……それはさっさと行ったほうがいいよ。
で、この話なんだけど、僕の方から補足しとくね。というのも、この話には魔界が関わってるんだ。もちろん、利用されたって意味でなんだけどね」
話しながら魔王バランはまた新しいフリップを立てる。
「これには簡単に金の流れが書いてあるけど、きちんと説明しとくね。
まずリュールちゃんが、疑惑として話してくれた内容なんだけど、まさしくその通りなんだ。膨大な額の資金がアイゼランド皇国政府からイヴセン大公とガレス王の個人口座に流れている。
なんのためかと言うと、最近になってガルウィット王国とツェック公国の両国とアイゼランド皇国との間で自由貿易協定が結ばれたでしょ? この協定で人と物の移動がほぼ完全に自由化されて、関税もかからなくなった。
さらにこれから、この三国間で通貨の統合を行おうという協定が行われようとしているんだ。そうなれば、周辺諸国の多くがこの流れに乗ってこざるを得なくなるだろうね。
世界最大の市場であるアイゼランド皇国との取引でガルウィット王国とツェック公国両国に比べて、圧倒的に不利な立場に立たされることになることがわかりきっているからね。
アイゼランド皇国は大陸に巨大な統一経済圏を作り上げようとしているんだ。そのための下地作りとして、アイゼランド皇国政府はイヴセン大公とガレス王に対して巨額の資金を流すことで、様々な形で内政に干渉しているんだよ。
さすがにこんなことが公になればいくら大公や国王と言えども無事にはすまない。
資金の出処を知られることだけは、なんとしてでも避けなくてはならなかったんだ。そこで彼らは、魔界を利用したんだ。今、トイレから帰ってきたって?……しらんがな」
よくわけの分からないコメントを処理することで、魔王バランは異様に高まってきた空気を一旦リセットする。
横で食い入るように魔王バランの横顔を見つめながら聞いていたリュールも、はぁっと息をついていた。
緊張がいい具合にほぐれて来た感じを掴んだ魔王バランは話しを再開する。




