二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 15 - 分析結果
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 15 - 分析結果
そこで、君たちは一つ忘れてると思うけど、魔王城はダンジョンじゃないんだ。勇者の目的は極めて限定されていて、彼らはその目標を達成するために魔界の最深部にある魔王城までやってきたはずなんだよ。
こう言ってる間にも、すぐ正解がコメントされてるね。その通り、誰もが簡単にわかることなんだけど、要するに魔王と闘って倒すことができればいいんだ。そのためには、極力無傷の状態で勇者が魔王の前に立つことができればいい。
その視点からいくと、パーティのようにぞろぞろと集団でいって戦闘を繰り返しながら力づくで進むより、勇者単体によるスニーキングミッションに切り替えるべきだったんだよ。
できれば魔物と接触することなく、すべての戦闘を回避して、万全の状態のまま魔王に戦いを挑むことができればそれが理想なんだよね。そんなこと話して大丈夫ってコメントいくつかきたね。
俺のこと心配してくれてるのかな? 勇者が俺を斃しにきたら、正直俺も困る。でも、おそらくそうはならないんだ。思い出して欲しい。勇者は極めて曖昧模糊とした存在だと話したよね。
それでも、勇者が勇者としていられるのは、常に敵がいて戦い続けているからなんだ。スニーキングミッションに切り替えて、冷徹なまでに目的を遂行しようとした瞬間、勇者としてのアイデンティティを失ってしまうことになる。
魔王と闘うことと、魔王を斃すことは似て非なるものなんだ。勇者の場合、本当の目的は魔王と闘うことであって、魔王を斃すことはその目的の結果にすぎないんだよ。
だから、スニーキングミッションに切り替えて、単身乗り込み魔王を暗殺してしまおうという発想自体が起こらない。いきなり殺してしまったら、戦い自体がおこらないからね。
その瞬間に勇者ではなくなってしまう。勇者が勇者であるかぎり、たとえパーティ全員を犠牲にしたとしても、絶対に魔王と闘う必要があるんだ」
ここで魔王バランは少し言葉を切って、水分を補給する。
のどが渇いていたというより、喉の調子を整えたのだ。
その間も、コメントは止まることなく流れていく。




