二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 13 - 勇者の決断
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 13 - 勇者の決断
これで、何がわかると思う? 身軽になった……まぁ、それ今話したんだけどね。ゴミ箱に捨ててましたか?……それ今聞く? 着替えは大丈夫か心配だって……言われても、俺は知らん。っていうか、君たち真面目に考えるつもりないでしょ?
まぁいいや、時間がないから言っちゃうけど、この時にはもう闘いをやめるつもりはなかったんだよ。俺の前……いや、魔王の前にやってきた時には、あまりに勇者が支払った代償が大きくなりすぎて、後に引くことはできなくなっていたんだ。だから、どんな正論であっても……いや、正論であればあるほどそれを勇者は拒絶する他なかったんだ。
仲間の死を無意味なものにしないためには、俺は……魔王は絶対悪であり、一片の正当性もない存在でなくてはならなくなっていた。そして、勇者は絶対正義でなくてはならなかった。それ以外の理論は、けして認めるわけにはいかなかったんだ」
どこまでも冷静に、淡々と分析を続ける魔王バランのトークに、荒れていたコメントは落ち着きを取り戻していく。
「それにさっきしていた話を思い出してくれ。勇者という存在には、常に敵が必要なんだって。つまり、魔王というのは勇者が勇者である限り永遠に敵でなければならない存在なんだよ。
もちろんそれは、勇者というフィルターを通して見た場合の話で、視点を少しずらすとまったく異なった様相が見えてくるんだ。たとえば、君たちのような魔王チャンネルの視聴者のようにね」
話しながら魔王バランは勇者のパネルを別のパネルと取り替える。
「さて、これは今の勇者が魔王城に入ろうとしている所を捉えた画像だ。勇者の他に三人いるよね。戦士に魔法使いと僧侶。典型的なバランス型のパーティだ。
この画像で見る限りにおいて、特に誰かが大きく傷ついているというわけではなさそうだ。というのも、バランス型のパーティというのは、全員が生き延びていて初めて最大限の力を発揮できるような戦闘スタイルだからね。それだけ戦いのマネージメントを上手にする必要があるんだよ」
ここまで話した時、魔王バランはまたパネルを取り替える。
それは魔王城の中で撮影された画像で、やはり勇者のパーティが映っている。
「これは、魔王城の入り口から謁見の間までの中間地点で撮られた画像だ。勇者はもちろん、パーティ全員が揃っているね。誰も致命的なダメージは負っていなくて、魔王城の入り口の時とそれほど変っていないね」




