二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 10 - 魔王城
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 10 - 魔王城
えっ? なら、魔王城の中から魔物を排除して、すんなり移動できるようにすればいいんじゃないかって? そんなことができたら、真っ先にやってるよ。わざわざ強敵を生み出すためのような仕組みを、すき好んで残しとくはずないでしょ?
あいにく、魔王城っていうのは魔界の最深部に建てられていて、動かせないんだ。詳しい説明は省くけど、魔物の生態系を維持するためだってことだけは言っておくよ。
それで魔王城を徘徊している魔物っていうのは基本強力だ。しかも、勝手に繁殖して独自の生態系を作っている。もちろん、定期的に俺も加勢して駆除するけど、姿を消すのはほんの僅かの間だけですぐにまた繁殖を始める。
君ら人間だって、シロアリとかゴキブリの駆除ってイタチごっこだろ? 魔物の駆除も基本的に一緒なんだよ。ただ、圧倒的に危険がともなうけどね。
魔王なんだから、恐怖とか力で言うこと聞かせればいいじゃんって書き込んだ君。もし君が同じことをゴキブリにできるなら俺もやってみるよ。それと君ら人間は根本的に魔王を勘違いしてるようだから言うけど、魔王城に住んでいる魔物だって俺にガンガン襲いかかってくるからな。
そのときには力で排除するけど、命令すればなんでも従うなんて生易しい世界じゃないんだよ。
だいたい考えてみてくれ。勇者なんていう強さを極めた化物に、ホイホイ戦いを挑むような連中が俺の力に恐怖して従うなんて思うか?
……思わない、思わない、かき氷くいてぇ……それには、俺も同意だ。というわけで、勇者の襲来が確認できたとき、俺にできることはここ、玉座の間と名付けられた危険物処理室で待っていることくらいなんだよね。
逃げ出せばって書いた君、正直俺も何度もそうしたいって思ったんだけど、魔王だからあんまり意味ないんだよね。
さっき言ったでしょ? 勇者の仕事は敵を見つけることだって。勇者はかならず魔王を探し出す。だったら、ホームグラウンドで待ってた方が、よっぽどマシでしょ。って話てたら、勇者が俺……魔王の前に立ったね。拡大できる?」
魔王バランがスタッフに声をかけると、すぐに魔王と勇者が対峙している映像が拡大表示される。
上方から見下ろす形になっているから、今ひとつ見えづらいが、臨場感はそれなりにあった。




