二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 05 - 勇者の特殊性
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 05 - 勇者の特殊性
そんなのわざわざ退治する必要あるのって書き込みすごいね。その通り、無いんだよ。ほんとはね。でも、ドラゴンと闘って倒したら、そいつは勇者なんだよね。普通の人間に到底できないことだし、一般の人間にとってはどんなドラゴンも脅威だと思われているからね。
たとえそれが普通の人が一生接触するはずのなかったドラゴンであっても、斃せば勇者なんだよ。実際、ほとんどのドラゴンは人間と接触することなく一生を終えているんだけどね。
ここで大切なのは、ドラゴンを斃したという事実を持って勇者として成立するということなんだよ。斃したドラゴンが人間にどんな被害を与えたのかなんて、まったく関係ないんだ。この一例をもってしても、勇者という職業の特殊性が理解できるよね?」
魔王バランが視聴者に問いかけるように言うと、コメントが一斉にくる。
「できた、できた、できない、それって美味しいの? ……色々来くるね。勇者を職業って呼ぶのに抵抗がある、というコメントありがとう。まさにそこなんだよね。
いままで散々言ってきておいて申し訳ないんだけど、勇者って実は職業ではないんだよね。ではなんなんだって話になるけど……おっ、すぐに正解きたね。その通り、勇者っていうのは本来は称号なんだ。
だけど、称号だと言い切るにも問題があるんだよね。それは、勇者は勇者になった瞬間から勇者に縛られてしまうからなんだ。イマイチよくわからんとか、何言ってのってコメント来たけど、言ってる俺も思ったよ。
そこで、もう一度このフリップを見て欲しい。勇者を中心にして書いてあるから、なんとなく勇者の存在が大きく見えているけど、実際にはなくてもなんの問題もない存在なんだ。
その説明のためにドラゴンの話をしたんだけど、本来は斃す必要のないドラゴンを斃すことで勇者になれるんだよ。では、勇者が勇者で有り続けるためにはどうすればいいと思う? ってコメント早いよ。反射的に正解出してこられると、話盛り上がんないでしょ? このチャンネルって俺のトークと君たちのコメントで成り立ってるんだから、少しは察してくれ。
それで、もう答え出ちゃったから話を先に進めるよ。勇者が勇者で有り続けるただひとつの要件、それは敵を見つけて斃していくことなんだ。ドラゴンの例を紐解くまでもなく、国家レベルで対応できない敵なんてそうそういるわけじゃない。




