二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 04 - ドラゴンの場合
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 04 - ドラゴンの場合
一応軽くコメントを処理しながら、魔王バランはフリップを上から覗き込んで指し棒の位置を確認する。
「それで、そういったドラゴンはすぐに近隣の軍隊が対応することになるんだ。いくら強いと言っても、所詮は獣だからね。武装した軍隊に狩り立てられたら、どうしようもないよ。
これまでづっと狩る側だったドラゴンは、生まれて始めて狩られる側になってその生を終えることになる。つまり、こうしたドラゴンの場合だと、勇者の出番はないということになるよね」
そう言いながら、魔王バランは指し棒をドラゴンから勇者へと移して指し示す。
「では、勇者が実際に闘うことになるのは、どういうドラゴンなのかを考えてみるね。今、適当に闘ってるんじゃないのって書き込んだ君、勇者だって命は一つしかないんだよ?
適当に命を賭けてドラゴンと闘うなんて、勇者じゃなくて単に強くてイッちゃってる人じゃん。えっ? 勇者ってそんなんだと思ってた? まぁ、否定はしないけど、人前で公言しないほうが長生きできるとおもうよ?」
話を再開しようとした所で、いきなり画面が静止する。
コメントにtmtとか止まったとか、いきなり魔王のスクショはきついとか、一斉に流れ始める。
しばらくその状態が続いた後、配信が再開する。
「どう? 動いてる? Ok、おk、動画になった、俺のメンタル面は十分鍛えられた……どうやら、再開できたようだね。勇者の陰謀か? とかいうコメント結構あるけど、それはないよ。その理由は有料部分でいっぱいアブナイ話しちゃうから、会員になってもらったらわかるよ。
もっとも、勇者以外の誰かなら可能性があるかもね。っていうのは冗談で、トラブルのない配信なんて神がかってるようなもんだろ? なんかトラブルの無い配信の方が怖くない? 運営に洗脳されてるぞって書き込み、それを言ったらおしまいだよ?
俺だって、内心は色々と言いたいこともあるんだからさぁ。で、どこまで話したったっけ? またいつものお約束かって書いてる君。俺がわざとやってるとか思ってないか?
ああ、そうそう、そうだった。勇者と闘うドラゴンのことだったね。実際に襲撃してきたドラゴンの対応には軍隊が派遣されるから、勇者の出番はないよね。
それと同じように、人家の近くに住み着いたドラゴンにたいしても、軍の見張りが張り付くか、駆除対象になるのでこれも違う。ということは、勇者が相手にするドラゴンというのは、必然的に人間とは直接かかわりのないドラゴンということになるよね。




