二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 03 - 客観性
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 03 - 客観性
「おけ、おけ、ナイス、字が汚い……これでも、時間かけて丁寧に書いてるんだから、読めるならそれで勘弁してくれ。よめる、よめる、努力する……まぁ、先に行ってもよさそうだから話をすすめるね。
で、とっくに見てもらってると思うけど、勇者を敵対する側から見てみることにするよ。魔王視点と行きたいところだけど、ここはあえて敵がドラゴンだと想定するね。
話したらまずい事でもあるのかってコメントけっこうあるね。そりゃあるに決まってるでしょ。でも、いままでだって話したらまずいことしか言ってないし、今更って話だよね。
この場合、まず俺が魔王だからあえてそこを避けるってこともある。どうしても、主観的な視点が入ってしまう可能性がでてきてしまう。客観性が失われたら、分析なんてうまくいくはずないからね。
それにドラゴンなら、妙な思惑とか、人間界の政治と絡んだりとか、妙な繋がりがないからより問題点を先鋭化できるという利点もあるんだ。驚きの速さで、妙な繋がりってなんだよってコメントきたね。今はそこら辺は察してくれ。機会があったら詳しく話すからさ」
ここで魔王バランは手でフリップを隠すのを止めて指し棒に持ち替える。
「それでは、もう一度これを見てくれ。この図に書かれているドラゴンは、人間側と敵対関係にある。実にシンプルで単純な構図だ。本来ドラゴンは人間だけでなく魔物にとっても脅威なんだけど、そこの所はひとまず置いておこう。話しがややこしくなるからね。
ドラゴンという存在は、まさに捕食者としての頂点に立つ存在であり、縄張り内にいる中型と大型の動物全てが獲物になる。人間も捕食対象なんだけど、ドラゴンが最も好む獲物は牛や馬や豚といった家畜なんだ。
ただ、すべてのドラゴンがそうだというわけではない。なんらかの理由で、傷ついて体の一部が不自由になったり、年老いて体力が落ちてきたために自力での捕食が困難になったドラゴンが、簡単に捕食することのできる家畜を狙うようになってくるんだよね。
つまり、基本的に人間と敵対関係になるドラゴンっていうのは、ずいぶんと弱ってきたドラゴンだということになるね。ドラゴンさんかわいそう……って書き込んだ君、ホントはそんなこと思ってないでしょ? なんでバレたって……逆になんでバレないって思ったのか知りたいな」




