一章 魔王さまによる迷宮《ダンジョン》ぶっちゃけ解説 - 01 - 配信開始
一章 魔王さまによる迷宮ぶっちゃけ解説 - 01 - 配信開始
「んっ? 始まってる? 始まってんの? こっちの画面映ってないけど大丈夫?」
いつものように机の前に座った魔王バランが、カメラの前で運営スタッフとやり取りしている様子が映し出されていた。
すぐにカメラを避けて腰を屈めた運営スタッフがやってきて、魔王バランの前においてあるノートPCを操作する。
「おっ、映った。放送始まってたな、これは」
魔王バランは若干困ったような顔になったが、すぐにいつものように強面の顔を作る。
トラブルはネット配信の実況生放送では通常の光景で、実際『魔王の実況チャンネル』においても過去何度も見られた光景である。
なので、立て直すのはもう馴れたものだった。
「いやー、もうしわけない。今日は急遽配信が決まったんで、スタッフがテンパっててなんかおかしな感じになっちゃったけど、ここからはちゃんとやるんで我慢して」
魔王バランはまるで友達に話しかけるような、ざっくばらんな感じでカメラに向かってトークを始める。
ちなみに、バランとざっくばらんがかぶったのはたまたま偶然である。
「とりあえず君たち、今日なんでいきなり放送が始まったのか知りたいよね? もちろん俺も話したいけど、実はもうイベントが始まっちゃってるんだ。まずは、その映像映すね」
魔王バランがそう言ったが、画面はしばらくそのままだった。
「えっ? でないの? トラブル?」
とまどったようにスタッフに問いかける魔王バラン。
だが、スタッフが答える前に、画面が切り替わった。
魔王の姿は右上の隅の方にワイプで表示され、画面中央から二分割されたダンジョンの光景が画面の左右それぞれに分かれて映し出されている。
「おっ、映ったね。それじゃ、解説するね。画面右側が深淵の森にある迷宮からの映像で、画面の左側が太古の廃墟にある迷宮からの映像なんだ」
それだけ言うと、魔王バランはスタッフに合図を送る。
すると、若干ラグが入った後画面が切り替わって、別の場所が画面に映った。
左の画面には人間とドワーフの戦士が二人、それにエルフの魔術師と人間の僧侶の計四人からなるパーティ。
一方右の画面には人間の戦士と魔術師の二人だけのパーティ。
それぞれ、まったく異なったパーティが別のダンジョン攻略を行っている映像であった。