一章 魔王さまによる迷宮《ダンジョン》ぶっちゃけ解説 - 16 - 最後の質問
一章 魔王さまによる迷宮ぶっちゃけ解説 - 16 - 最後の質問
「ありがとう、ギリクくん。それでは最後に一つ聞かせてくれ」
魔王バランはあえてコメントを処理せずそのまま放置して、最後の質問に入る。
「君にとって迷宮とは何か、教えてくれないか?」
それまでとはまったく違って、ひどく抽象的な質問だった。
いわば、生き様を問いかけるような質問である。
「うーん。それはまた、ひどく難しい質問ですね。私の人生の全て……と言いたいところですが、アンデッドとなった今の私が言ったところであまり説得力がなさそうです。人生そのものは、とっくに終わってますから。ただ一つ言えるのは、満足できる仕事が出来た時には最高に嬉しいってことですね。多くの冒険者が私の創った迷宮から巣立って行った時も、私の創った迷宮の周りに人が集まって発展してい光景を見たときも、最高の喜びを感じます。そう考えると、私にとっての迷宮というのは、喜びそのものなのかも知れませんね」
ギリクは話しながら自分なりの結論に達した。
「忙しい所をありがとう。他にも色々聞きたいことあったけど、時間がないから今日はここまでで終わりにしよう。また、機会があったら出てくれるかな?」
配信終了時間が迫る中、魔王バランは型通りのまとめに入る。
「え? ええ、ぜひ機会があれば」
ギリクも型どおりの答えを返してきた。
「それじゃ、また」
魔王バランが簡単な別れを告げたところで、中継が切れた。
少しの間だけ、画面中央の映像がブラックアウトしてワイプだけになった。
ただその時間はそれほど長いこと続かず、すぐにワイプが消えて魔王バランの姿が映る。




