一章 魔王さまによる迷宮《ダンジョン》ぶっちゃけ解説 - 12 - 横道
一章 魔王さまによる迷宮ぶっちゃけ解説 - 12 - 横道
「ちょっと横道にそれるね。もっとも、今した話と関連するんだけど、そもそも魔界と時の政権って裏では色々と繋がってるんだ。魔界の特殊性からくるものなんだけど、政治におけるダーティな面で利用し易いってこともある。
主に、汚職と不正蓄財の隠れ蓑として使ってるんだ。なにしろ、魔界にはまともな法も秩序も存在していないからね。私財を魔界に移してしまえば、どんな不正をしたって証拠が残らない。追求しようがないって話だよね。
もちろん全員が加担しているわけではなく、ごく一部の人間がやってるだけなんだけどね。こんなこと話してたら俺が消されるって心配してくれるのはありがたいけど、俺はこう見えても魔王だからね。迷宮のラスボスのようにはいかないさ。もちろん、勇者を差し向けて来られたらけっこうヤバイかも知れないけどね。
そうそう、さらに脱線するけど。勇者って、利用価値のなくなった魔王を暗殺するための刺客なんだ。すべての秘密を知る魔王に生きていて欲しくないって考える連中は、いくらでもいるからね。
さすがにそこまで話すのは、ガチでヤバイんじゃないかって? そりゃそうだ。俺がいくら強いったって、限界はあるからね。それでもこの話し、限界ギリギリまで挑戦するつもりだよ。ただ今日はテーマと違うからこの辺でやめとくよ。いくらなんでも、脱線しすぎだからね」
さらに爆弾を連続投下した魔王バランであったが、横道にそれ過ぎたと判断して話しを元にもどす。
「迷宮の話しに戻すね。結局無料で話したあの話し、冒険者を育てるための施設だってこと。創設の目的がなんであれ、そこの部分だけは変わらないんだ。魔王である俺が言っちゃうことにはかなり支障があるけど、ここまでぶっちゃけてるから言っちゃうね。
それは、魔界と人間界との暗黙の了解ってやつなんだよね。迷宮で鍛えられた冒険者が次に目指すのが、魔界なんだ。魔界って法秩序がまったくない野放図な、いわゆる力の論理で成り立っている世界だから、俺のような魔王が魔物たちを押さえつけることでどうにか成立してる世界なんだ。
でも、圧倒的な強者の存在っていうのは孤独と同義語だと言っていい。つまり、配下の連中は目を盗んで好き放題できるって話だよね。自分がよければ他の連中のことなんてどうでもいいって奴らしか存在しないから、放置しておけばそれこそ獣と変わらない水準にまで落ち込むのに時間はかからないだろうしさ。
もちろん、そうなれば結局自分の利益が失われるんだけど、それが分からないのが魔界の連中なんだ。さすがに俺のような魔王は理解してるから、手をうつんだけど、目が届かない所はどうしようもない。
それに、自分の部下を派手に処分していったら、それこそ自分の足元を掘り返すような結果になる。もちろん、倫理的な問題解決に魔界の連中なんて危なくて使えない。
そこで、冒険者の出番なんだ。魔王が関与しているということが分からないように、冒険者ギルドなりへ魔物退治の依頼を出して魔界の秩序を乱すような連中を始末してもらってるんだ。冒険者ギルドに出されている依頼中には結構な割合で、魔王からのものが混じっているんだよね。
おやっ? さすがにみんな知らなかったようだね。でもこれで、迷宮によって効率的に冒険者の成長が促されていることの理由の説明が理解できたんじゃないのかな? 要するに、魔界と人間界っていうのは相互依存の関係にあるってことだよね。
えっ? この放送の理由も話してくれって? それを聞くの? 聞いちゃうの? さすがに、それは言えないなぁ。だってそれ言っちゃうと、チャンネル終わっちゃうからね。逆に言えば、チャンネルが終わる時にはちゃんと話せるってことなんだけどね。だったら話さなくていいって? まぁ、永遠に続くことなんてないから、いずれ話す日が来るってことだけは覚悟しといてくれ」




