髪様
あなたが私の元を離れる事をこんなに寂しく感じたことはありません。
鏡の前で私は、床に落ちていく髪をゆっくりと眺めた。
共に喜んだ日、泣いた日、笑った日
いつも髪はそこにいて、ただそこに存在しているだけだった。
家族のような大切な髪が散りばめられていく。
もういままで何度別れを告げただろうか?
何回も生えてくる喜びよりも何度も散っていく悲しみを感じたのは
感受性が強い私だけなのだろうか?
きれいになった髪の毛を撫でながら私はにこっと笑う。
いつもよりも強調して笑ったつもりだが、余計に顔が悲しくなってみえる。
髪をずっと愛し続けてきた私
切った髪の前で追悼を捧げる姿ももう気にならなくなった。
だってそれは私の大切な「髪様」だから。