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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
四章 知るモンスターテイマー
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87話 前兆のない異変

2018/06/25 Cランクへの昇級条件を修正しました。

 シロナの誕生日パーティの翌日、俺達は宿を確保した後、アラクネの情報集めにクロトガの町を歩いていた。今日はシルヴィリアは別行動だ。

 住人や冒険者多数に話を聞き、アラクネのおおよその出現場所を掴むことが出来た。

 レベルに関しては、シルヴィリアのパワーレベリングでCランクレベルなら渡り合えるだろう。

 今回はシルヴィリアが付き添いで来ることになっているので、まぁ仮に襲われたとしても何とか命までは取られないはずだ。

 キンの出した条件がアラクネを仲間にすることだったから、シルヴィリアがアラクネに対してやりすぎることもないだろう。


 今日は情報集めで結構時間を使ってしまったし、後は少し買い物と、休憩ということにしよう。

 ということで、レイに出来立てほやほやの料理を格納してもらったり、今はカフェのような店で紅茶を飲んだりしている。

 今更な事だが、クロトガは今までのどこの国よりもシロナやヒサメに寛容だった。

 寛容というか、無関心なのか? 特に珍しいものを見るような視線も感じないし、少しは驚かれても警戒されるまでは行かない。

 クロトガに来た直後は、獣人は自分の身体能力に自身があるからなのかとも思ったが、どうやら対抗できるというよりかは背景の一部というか、居てもおかしくない存在として皆の目に映っているようだった。

 勿論シロナは白いハーピィということで視線を集めることが多いのは間違いないのだが、それでもやっぱり、言葉に出来ない部分でこの国の住人は他の国とは違うのだ。

 俺の目標への近道は、案外クロトガという国の環境なのかもしれない。


 そんな訳で、皆で紅茶を飲んでいた。

 メニューに目を通すと、どうやら簡単な食事も取ることが出来るらしい。

 新鮮な野菜を挟んだサンドイッチに飲み物をつけたモーニングセットのようなものが、結構流行っているようだ。今は午後だが、モーニングセットというものがないこの世界では、他の客たちも普通にこのセットを食べている。

 飲み物も俺が今飲んでいるような紅茶や、普通の水、お茶、はてにはコーヒーまでもが選べるとか。

 ヒサメはコーヒーに興味が湧いたようで注文していた、ブラックのまま一口飲んだ後「へぇ……」と言いながら飲み続けていたので、どうやらお気に召したようだ。

 俺は舌がお子ちゃまなので、コーヒーは砂糖とミルクを入れても飲もうとは思わない。


 シロナにはとりあえずサンドイッチを頼んだので、それをモシャモシャと食べていた。

 相変わらずシロナは美味そうに食う。

 無邪気な子供のような食べっぷりのシロナは、他の席の獣人達も思わずほっこり笑顔になっていた。



「それで、ユウスケは何か策があるの?」


「策というと?」


「アラクネについてよ。仲間にするって言ったって、戦わないで済むならそうしたいんでしょ?」



 リーニャが今言ったように、俺はテイムに置いては無理やり行いたくはない。

 シロナもそうだし、ヒサメもそうだったように、両者の同意の上で行いたいのだ。

 こんな言い回しだと卑猥な何かに聞こえそうなので、そうではないとだけ言っておく。



「策はないけど、とにかく話をしようと思ってる。仲間にする上で重要なのは、アラクネの信用を勝ち取ることだ。何ならアラクネに条件を出させて、それを俺達でクリアするって言う流れになるかも知れないな。」


「それは良いけど、もしその条件が戦うことだったらどうするの?」


「そう言われたら、そうするしか無いかもね。俺との一騎打ちって話にならなきゃ良いけど……」



 今手にしている情報だけでは、アラクネの性格までは掴むことが出来ていない。

 温厚かもしれないし、見境なく人を襲うかもしれない。

 まぁ、目撃情報がここまで上がっていて被害がないところを見るに、好戦的って訳でもなさそうなんだけど。



「もし一騎打ちとかになっても、明らかにユウスケが殺されそうになってたら介入するからね。」


「それは寧ろこっちからお願いするよ……」


「最悪の場合、アラクネのテイムは諦める事になるのは覚悟しとかないといけないわね。」


「そうだな。そうなったら、俺達だけでBランクまで上がらないといけない。」



 魔王についての情報を教える、その為にキンが俺に出した条件は三つ。


 レベルを上げて、冒険者ランクはBランクまで上げること。

 アラクネを仲間にすること。

 そしてエルフの里へ行き、魔王についての情報を手に入れてくること。


 その三つをこなして、俺達はようやく魔王の情報を手に入れることができる。

 レベルはまだCランク級だが、パワーレベリングのお陰で着実に上がっているし、戦闘に関しても問題無い。ランクをCに上げる条件を揃えていく内にスキルの方も充実してくるだろう。


 ランクをCに上げる条件は、Dランク以上の依頼を150件こなし、指定の依頼をクリアしていること。それと座学をすこし。

 Dランクの昇級条件より若干緩和されているようにも見えるが、依頼難易度が高いので無理に依頼件数を増やすこともないんだろう。難易度的には高くなっている。

 もしくは、ギルドマスターか、それに該当する権限を持った実力者からの推薦。

 推薦の場合、個人であればBランク冒険者との模擬戦を行い、パーティであればギルド職員の監視のもとでギルド指定の魔物を狩ることでCランク相当の実力があるかを確認する事になる。

 Cランクまで行くと冒険者としては上級者だ。おいそれとはランクを上げることは出来ないんだろう。


 と、そんな感じでCランクに昇給できるらしい。一応レベルは足りてる筈だから、出来れば推薦でランクを上げたい所だけど、推薦してくれる人のアテがないので困ったものだ。

 依頼をこなすのに時間は掛かるが、そっちで上げるしか無いか。スキルも取得しないといけないし。



 ドクンッ



「ッ!」


「……えっ、ユウスケ?」



 急に心臓の鼓動が大きくなった。

 なんだ、何かが起ころうとしている。

 そんな漠然とした思いが心に沸き起こって、俺の不安を煽った。

 リーニャは俺を見て困惑している。どうやら俺だけが感じている事らしい。



「ヤバい、何かが起こる。」


「何かって?」


「分からないけど、とにかく皆気をつけ……」



 全てを言い終わる前に、ガタンと音が鳴った。

 音が聞こえた方向に視線を向けると、シロナが立ち上がっていた。



「シロナ、何か感じるのか?」


「……」


「あっ、おいシロナ!」



 シロナは、俺に返事をすること無く店を出て行った。

 そのまま空へ飛び去っていく。



「ごめんリーニャ、支払い頼む!」


「わ、わかったわ!」



 俺は金を乱暴に机に置いて追いかけるように店を出た。

 しかし、出たところでもうシロナの姿は見えない。



「シロナ、どこ行ったんだ……ん?」



 周りを見渡していると、地面に白い羽根が落ちていた。

 これは、恐らくシロナのだ。

 つまり、こっちの方角へ飛び去ったのか。



「……くそ、手掛かりも少ないし、こっちに向かうしかないか。」



 もしかしたら、他にも白い羽根が落ちているかも知れない。そうなれば、それを辿っていけばシロナの元へ着くはずだ。

 ドクンドクンと高鳴る心臓を抑えつつ、俺は羽根が落ちている方向へ走り始めた。







 走りながらステータス画面を確認する。

 シロナのステータスを隅々まで見るが、別に異常があるわけではなくて安心した。


 シロナの羽根を追いかけて走っていると、徐々に羽根の落ちている頻度が上がってきた。

 どうやらゴールが近づいているようだ。

 俺が今走っている道は、最近通ったことがあるような道だった。

 知っている道なら、少し安心感もある。


 そのまま五分ほど走り、到着した場所は、今日の午前中に確保した宿だった。

 シロナは、この宿の中に入ったようだ。

 玄関口の所に白い羽根が落ちている。


 肩で息をしながら扉を開けると、ここで働いている若い獣人の男性がこちらを向いた。



「あれ、お客さん急いでどうしたんですか?」


「あ、あの、今さっき、白いハーピィが入りませんでしたか?」


「あぁ、お客さんとこの従魔ですよね? 先程借りられた部屋へ向かっていきましたよ。」


「あ、ありがとうございます!」



 俺はお礼を言うと、急いで借りた部屋へと走る。

 後ろで「この白い羽根は貰って良いのかな……」と小さい声で聞こえたが、返事をしている暇はない。

 抜け落ちたやつはもう仕方ないから貰ってくれ、と心の中で許しておいた。


 部屋の前へと到着する。既に走りすぎて心臓が痛い。

 一応シロナが何か見られたくない理由がある可能性があるので、ドアをノックする。



「シロナ、居るんだろ? 入っていいか?」



 中にいるであろうシロナに声を掛けるが、返答はなかった。

 部屋の前までの間にも白い羽根が落ちていたので、恐らくここに居るはずなんだが……



「シロナ? 入るぞ?」



 返事がないので、一応ゆっくりと扉を開けて中へ入る。

 この部屋は全員で入れるように、大きい部屋を借りてある。

 ベッドは三つで、一つは俺、一つはリーニャとシロナ、一つはシルヴィリアだ。

 ヒサメは体の構造上、ベッドで寝るより地面にとぐろを巻くほうが楽らしい。


 その部屋のベッドの一つに、シロナは投げ出されたようにうつ伏せで倒れていた。



「おい、シロナ……うおっ!」



 シロナの所へ近付いていくと、何かを踏んだせいで足元に何かが落ちているのに気がついた。

 下を見ると、そこには大量の羽毛が落ちていた。



「これは……換毛期か? シロナ、大丈夫か?」


「ん……」



 シロナからは、あまり大丈夫でなさそうな返事が帰ってきた。

 近づいてシロナの背中へ手を置くと、手には体温以上の熱が伝わってくる。



「シロナ、熱が出てるじゃないか。」


「ちょっと、つらい。」


「いい、寝とけ。こういう時は無理しない方が良い。」



 シロナを仰向けに寝かせ直し、部屋に常備してあったタオルを手に取る。

 水に濡らして絞ったタオルをシロナのおでこに乗っける。かなりベタな対処方法だが、やらないよりはマシだろう。

 そんな事をしていると、リーニャ達も遅れて到着した。



「はぁっ、はぁっ、シロナちゃんは……?」


「あぁ、熱があるみたいだ。こりゃ明日は休んだほうが良いな。」


「そう……私冷たい飲み水を用意してくるわ。」



 リーニャがそう言って部屋を出ると、入れ替わりにヒサメが入ってきた。

 ヒサメは俺の隣に来て、シロナを見つめる。



「どうやら、熱があるみたいなんだ。ステータス上では異常はないんだけど。」


「ふぅん……」



 ヒサメはシロナの体を触って体温を確かめたりしている。

 同じ人型なら、何かこの症状に心当たりがあるのかもしれない。

 そう思ってヒサメに聞こうと思ったら、それより先にヒサメの口が開く。



「大丈夫よぉ。病気とかそんなのじゃないわぁ。」


「そうなのか?」


「ま、明日になれば分かるわよぉ。今日は早いとこ寝る事ねぇ。」


「ん……」



 ヒサメの言葉に、シロナは頷いて目を瞑る。

 ステータス上では問題ないとは言え、かなりつらそうだ。


 ベッドの周りに落ちていた羽毛の格納をレイに任せ、俺は新しい濡れタオルを用意して、最初に頭にのせたタオルと取り替えた後、椅子を持ってきてベッドの隣へ座った。


 ヒサメの明日になれば分かるという言い回しに少し引っ掛かりを覚えながら。

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