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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
四章 知るモンスターテイマー
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82話 ゴーレムと魔石

~ アステニア 冒険者ギルド 執務室 ~


「レイフさん! あそこまで詳細に計画をバラさなくても良かったのではないですか!」



 レイフが、もう魔力を流すのを止めた指輪を机に置くと、アステニア冒険者ギルドの副ギルドマスターであるルドルフが声を荒げた。

 通話が終わった今、ルドルフはレイフにどうしても理由を聞いておきたかったのだ。



「隠し通すのは無理だよ、彼女は全て分かっていたからね。僕が言わなくても、いつか彼女が彼に伝える。」



 通話越しに伝わった彼女――クロトガの王、キンの持つ情報量。

 言葉選び、声のトーン。それらで、レイフはキンが知っていることを理解した。

 どこからどのように情報を仕入れているのかは分からなかったが、ユウスケに対する監視、クロトガ内部の視察、あわよくばリアの捕獲もしくは殺害。その全ての計画を知られている現状、下手に嘘をつけば状況がどう転ぶかは予測ができなかった。



「なら、自分から言ったほうが良い。理由も含めて彼に伝えれば、他人から伝え聞くより不信感も抑えられる。それに、彼女が面白がって彼に出鱈目な情報を与えないとも限らないからね。」


「しかし、これではもう……」


「そう、計画は丸つぶれ、こんな状態で、指輪をずっと持っているとは考えにくいから、彼の監視もままならないだろう。今後アステニアに戻ってくるかも、怪しい。」



 レイフは、紅茶を口に運ぶ。机の上にあった書類の山は漸く処理できたと言うのに、レイフは鉛のような重たい案件が机に置かれているような心境だった。



「それに、彼女が言ったあの言葉も気になる。」



 キンがユウスケに指輪を返す前、丁度ハルマーとシャルラが向かい合って話をし始めた頃。

 キンはその短い合間に、レイフへと言葉を残していた。



『のぉ、リアへの刑罰を取り下げて、良き隣人となろうではないか? 妾は全てを知っておる。これから起こることも、全てをの。』



「彼女が何を知っているのかは分からないが、あの口ぶり、僕らにとって有益な情報があると言いたいようだった。そして、力で僕らをねじ伏せることが出来る彼女が、僕らに取引を持ちかけた理由も分からない。」


「……」


「とにかく、計画は変更。これからはユウスケ達ではなく、人型に対するアプローチを行っていく。彼らと連絡を取れなくなるであろう今後、僕らが彼にとって有益な存在であるという証明とともに、人型に対する敵対意識の抑制を行うことで、ユウスケと人型をこちらに引き入れる方針にする。」


「……わかりました。」



 ルドルフは一礼すると、自分の仕事を進める為に部屋を出て行った。


 レイフはこれまでの出来事を思い返す。

 国の内情や周囲の国の状況を把握し、国の民を守るのが国王ならば、国の周囲の魔物状況を把握し、また優秀な戦力を引き入れることによって国の民を守るのが冒険者ギルドの仕事だ。

 ギルドマスターになってから円滑に進んでいたはずなのに、いつか現れた少年が、ことあるごとに悩みの種をばら撒いていく。



「爆弾のような問題児に加えて、怪物のような生ける伝説と上手く親睦を深めないといけないなんて……国を守る為とは言え、割に合わない仕事だ。」



 レイフは、もう冷めた紅茶と、何らかの魔法によって、いつでもキンに繋がるようになった指輪を見ながら呟いた。




~ 古代遺跡『王宮騎士の寝室』 ユウスケ視点 ~




 俺は、歩きながら指輪を見つめていた。

 レイフさんに言われた言葉が、俺に重くのしかかっていた。



「ユウスケ……」



 リーニャは、そんな俺の心配をしてくれている。


 正直、レイフさんの言うことは理解できる。

 そもそも、最初は人型に対して積極的にコンタクトを取ることを許されるとも思っていなかったし、寧ろ監視が付くくらいで自由に動き回れた事は感謝すらしたい事だ。

 知らないところで、俺達が危険に陥った時は助けてくれていたのかもしれない。


 ただ、もし人間の手によって、俺の仲間になった人型へ手を出されたら。

 その時、俺はどんな対応をするのか。

 憶測である今なら、手を出してきた奴だけにしか憎悪は向かないと言えるけど、それが現実になった時には、どうなるかなんて分からない。

 だから、レイフさんが俺に監視をつけた事は正しかったと思う。


 危険因子として取り扱っていたという事実が浮き彫りになって、目に見える亀裂が入った今、レイフさんは今まで通り俺へと接することは無いだろう。

 そんな状態で、俺はこの指輪を、まだ持ち続けていてもいいのだろうか。

 レイフさんを頼っても、大丈夫なのだろうか。


 考えても分からない今は、ただ指輪を今まで通り付けておくことしか、選択する気にはなれなかった。



 リアに……じゃなかった。シルヴィリアに案内されながら、俺達は古代遺跡に辿り着いた。

 ここは『王宮騎士の寝室』と呼ばれているらしい。


 ハルマーはここには付いてきていない。どうやら、シャルラとの手合わせで何かを掴んだようだった。

 行きたい場所があるとの事だったので、キンの結界である霧を抜けた後にそのまま別れた。

 ニーアは、一度アステニアに戻るとの事だったので、ニーアもここには居ない。


 『王宮騎士の寝室』今までの洞窟だったダンジョンとは違い、まるでそこにあった一つの国がそのまま廃れたような、ノスタルジックな光景だった。 

 進んでいくと、石や土で作られた建物の壁一面には模様が描かれていた、遠い過去にも文明が存在していた証拠だ。

 そんな頃から、この世界には魔法があったんだろうか。

 その疑問に答えるように、シルヴィリアが話し始める。



「この古代遺跡では、ゴーレムが出現する。ゴーレムは古代人が作り出した遺跡防衛用の魔法人形で、魔石を核にして動く。個体によって大きさは違うが、概ね魔族と同じだ。弱いものは人と同じ、そこから強くなるに連れて約3m、約6m、約10m程と段階的に大きくなっていく。」


「あまり強いのとは戦いたくないな、俺達まだランクDだし……」


「安心しろ。実際戦うのは私だ。お前達は見てればいい。」


「え?」


「お前達には、取り敢えずレベルだけ上げてもらう。」



 ここで、まさかのパワーレベリング発言が飛び出してくるとは思わなかった。

 パワーレベリングとは、強い人が弱い人とパーティを組んで、モンスターを狩りまくることによって弱い人に経験値を積ませる行為だ。主にMMORPGとかのネトゲ等で使われる方法なんだけど、まさかこの世界にもあるとは。



「後々戦ってもらうが、まずは死なない程度に強くなってもらわねば、戦いという土俵には立てない。」


「確かに、ステータスが足りなすぎて一撃で死にますなんて事になれば、話にならないもんな……」


「特にお前だ。」


「ですよねー。」



 モンスターテイマーってステータスめちゃくちゃ低いからね。でもレベル上がっても雀の涙のようなもんだとは思うけど……

 いや、やっぱり単純にHPが伸びる事は重要な事だし、レベルを上げて損はないか。


 一度は殺されかけたシルヴィリアと、こうして会話を交わしているのは何とも言えない感覚だったが、まぁ殺意がないってのは本当みたいだし、そもそも何度か助けられてるし、俺の中では特別に忌避感とかは持っていなかったのかもしれない。



「こんな面倒なことをしなければならないのも、ステータスなどという数値化された世界になったからだ。」


「……え、なったから?」


「そうだ。大昔には、ステータスなんて無かった。」


「何でそんなこと知ってるんですか。」


「……キンが言ってたからだ。」



 キンの言ってた事をあたかも自分が見てきたかのように言ってしまったからか、少し頬を赤らめてそっぽを向くシルヴィリアをよそに、俺は少し考え込んでいた。

 キンは千年近く生きていると言っていた。つまり千年程前には、ステータスという概念が存在しない世界だったということなのか。

 ステータスが存在しないということは、当然レベルも存在しないだろう。なら、スキルやそういうたぐいの物も存在していなかった可能性もある。

 魔王の件に続いて、これもキンに確認を取りたい所だ。エルフの里から帰った時にはそれも教えてもらうことにしよう。


 ある程度歩くと、東京ドームのような大きい建物があった。

 デカい紋章のような物が真ん中にドンと描かれた二枚扉を開けると、中へ進んでいく。



「この先に、ゴーレムの出現する場所がある。」


「俺達は見ているだけで良いんですか。」


「ああ。」



 暫く進むと、少し開けた場所に出た。レンガの様な物が散乱しており、ここだけ異常に荒廃しているように見える。

 奥を見るに、どうやらこの先にも通路があるようだ。

 シルヴィリアが俺達に静止の合図を出してから一歩足を踏み入れると、周囲のレンガが集まり、3m級のゴーレムが四体出来上がった。


 シルヴィリアはゴーレムが動き出す前に地面を蹴る。いつも使っていた漆黒の短剣『断罪者』は使わず、クナイのような物を取り出していた。

 胸のあたりのレンガの繋ぎ目にクナイを差し込み、繋ぎ目にそって切る。ゴーレムは漸く腕を振り上げ、シルヴィリアへ殴りかかろうとしたが、シルヴィリアはゴーレムの股下を通って背後に回った。

 背後に回る前に足の繋ぎ目にも刃を入れたらしく、ゴーレムがよろける。ゴーレムの身体を器用に登ったシルヴィリアは最初に刃を入れた胸の辺りへもう一度クナイを突き立てると、今度は抉るように刃を動かした。

 ゴトリ、とレンガが落ちる。

 シルヴィリアはレンガが抜けた所へ腕を突っ込むと、何かを掴んで引き抜いた。

 途端に、ゴーレムは形を保てずに崩れ落ちる。



「あれ、魔石を引き抜いたのか。」


「あんな的確に位置が分かるなんて……」



 俺とリーニャが驚いていると、そんな暇も与えないと言わんばかりに次々と残り三体のゴーレムの魔石も引き抜いていった。

 どうやらゴーレムの魔石の位置は変わらないらしい。


 シルヴィリアは魔石を持ってこちらへ歩いてきた。



「ほら。」



 そして、魔石を差し出してくる。

 差し出された手前、一応受け取りはしたけど、これは俺達へのプレゼント? 売ってお金にして良いのか?

 等と少しばかり思考を巡らせたところで、シルヴィリアからは予想外の言葉が飛び出してきた。



「食え。」




「いーやいやいや、レイじゃないんだから食えませんよ!」



 必死に頭を振って拒否する俺。

 いやリーニャもそんな顔だしヒサメもシロナもそんな感じ……あ、いやシロナは無表情だった。

 あれ、心なしか嬉しそう? 食べ物じゃないぞシロナ。マジで。


 俺の必死さに流石に言葉足らずだったかとシルヴィリアが説明を始める。



「魔石は別に石じゃない、魔素の塊だ。かじれば体内に魔素を吸収できる。魔素を吸収すればレベルが上がる。」



 説明を聞く限りでは、魔素イコール経験値か……? しかし、そんな話は全く聞いたことない。

 いや、そもそも魔石をかじろうとする人間が居ないから分からないのか。



「元々レベルが上がる理由は、倒した魔物の魔素を吸収するからだ。魔物は死んだら体内に巡っていた魔力が魔石へと変質するが、魔石にならずに漏れた魔素が周囲の生物へ吸収される。」



「うっ……」



 魔石を見つめる。シルヴィリアはかじらなければイベントを進めるつもりはないらしい。

 ……仕方ない、かじろう。瓦せんべいより硬そうだけど背に腹は代えられない。

 魔石を口に運び、少し噛むとパキッといい音がして割れた。

 すると、何やら身体の中に流れ込んでくるのが分かる。



「どうだ、別に何とも無いだろう。」



 シルヴィリアは当たり前のことだといった表情で確認してくる。

 うん、確かに何とも無い。


 ステータスを確認すると、レベルが1上がっていた。


 俺を見てから、リーニャ、シロナ、ヒサメも魔石をかじる。

 それぞれが、何かが身体に流れてくる感覚を覚えたようだ。



「しかし、人間でも人型でも魔石でレベルが上がるんだなぁ。」


「元よりそういう物だ。」


「じゃあレイが魔石でステータスが上がっていくのも?」


「どうだろうな。スライムはそもそもレベルが上がらない魔物のはずだが、ステータスは上がるのかもしれないな。」



 またとんでもない情報が出てきた。じゃあレベルが上がってるレイは何なんだ。



「やっぱり、特別なスライムなのかしら……?」



 リーニャが懐かしいいつかの台詞を呟いた。

 レイについてもキンに聞いてやる。多分あの人なら知ってるだろ。


 その日、最初の四体含めて合計五十体のゴーレムから魔石を抜き取り、ひたすら魔素を吸収する作業を行った。

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