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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
三章 助けるモンスターテイマー
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66話 希望

~ 迷宮都市グリル ユウスケ ~


 店と店の間、店と宿の間、民家と民家の間、細い裏路地から大通りと、細かくジグザグとしたルートで『ふぇんりる』へと向かっていた。


 あれから、いたるところで魔族が降ってきては徘徊している。

 他の冒険者が戦っていた所を見た感じだと、一体ずつなら俺でも魔族を倒せない事はなさそうなんだけど、彼らより時間はかかりそうだ。

 それで足止めをくらっている間に囲まれても面白くない、戦うのはリスクはあってもリターンの無い選択だ。と言うわけで、遭遇しないように細心の注意を払いながら、魔族の居ないであろう道を選んで駆けていた。


 そう、居ないであろう道を選んでいたのだが。


「どう見てもこっちに寄ってきてるっぽいよなぁ。」


 建物の影から大通りを覗く。

 数体いる魔族はどれがどこを向いているのかも正直分からないのだが、身体はゆっくりと移動しているのだ。

 それも、周りにいる魔族は全部俺の方に寄ってきているっぽい。


「バレてんのかなぁ……気配感知でも持ってるのか?」


 バレてるならここに留まってはまずい。さっさと移動しないと。

 あいつら足は遅いから、走れば追い付かれることはないだろう。

 勢いよく大通りを飛び出すと、向かいにある路地へと走る。

 魔族は相変わらずジリジリと俺の方へ寄ってきてはいるが、その姿は徐々に遠のいていき、俺は無事に路地へと駆け込む。


「ふぅ、いくら動きが遅いとは言っても、大通りを走り抜けるのは嫌だな。」


 嫌だななんて言ったところで、どんなルート選びをしても『ふぇんりる』まで、まだ何回か大通りを横切らなければならない。

 ため息をつきながら前へ走る。

 そろそろ路地の先が見える所で、道を遮る何かが目に映った。

 ……魔族だ。


「……マジかよ、戻るか? いや、あの感じだと戻ったところで魔族に囲まれそうだし、殺って前に進んだ方が良さそうだな。」


 俺は鞄からレイをひょこりと覗かせた。


「レイ、あいつに向かって酸弾!」


 魔族を指差して、レイに指示する。

 レイの酸弾をくらえば、ひとたまりもないだろ。

 そう思っての指示だったのだが、レイは反応しなかった。


「あれ……? レイ? あいつに酸弾撃ってくれない?」


 二度目の指示。しかし、レイは反応しない。

 何で? 反抗期? しっかりご飯も食べさせてるし触れ合ってるし、仲良いと思ってたんだけど……


 ステータス画面を開いても、特にレイに異常はない。

 意思疏通も、何かいつもよりぼんやりしている。いや、しっかりとぼんやりしている。

 何言ってるのか分からないと思うが、しっかりとぼんやりしているのだ。言い換えると、リラックスしているとも言えるし、何も考えてないとも言える。


 ……寝てるのか?


「レイ! 起きてくれよ! 魔族が来ててヤバイんだって!」


 表面をぺちぺち叩いても、レイはぷるんと身体を震わせるだけでいっこうに戦闘体勢になってくれない。

 マジかよ、本格的に戦えないじゃないか。

 でも引くって選択肢も無い。


「くぅ、嫌だけど、俺が斬るしかないか!」


 剣と盾を構え、魔族に近づいていく。

 魔族はぎこちない動きで腕を振り上げると、俺に向かって乱暴に振り下ろす。

 俺は、それを受けずに避けた。

 受けたらどうなるか分かったもんじゃない。


 荒々しく地面に叩きつけられた腕に向かって、俺はすぐさま剣を振った。

 言葉に言い表せない、スライムのようなブヨッとした感触と共に、魔族の腕が落ちる。

 切り落とされた腕は、溶けるようにして消えていった。


 身体を支える骨のようなものは無いらしく、斬った断面からはドロリとした液体のようなものがたれている。


「さっさと斬ってしまった方がいいな。」


 俺は胴体めがけて真横に剣を振った。

 先ほどの攻撃の反動か、動きの鈍くなった魔族の胴体へ簡単に剣が入り、そのまま振り抜かれる。

 上半身がボトリと落ち、そのまま下半身と一緒に溶けて消えていった。


 何だか、とても拍子抜けだった。


「何だ? こんなに簡単に倒せるなら、そんなにビクビクしなくて良いんじゃないか?」


 体感、ゴブリンよりは強いって感じだな。

 あのブロードソードのおっさんはDランクでも無理なら逃げろとか言ってたけど、そんなに警戒しないといけない存在には思えなくなってきた。


 いや、待てよ。ゴブリンより強い奴がゴブリン並みに湧いてきてるのか。

 そう考えるとやっぱりEランクには荷が重いな。

 それに、魔族の攻撃を全パターン見たわけでもないし、受けてもないから弱いと断定するのは早いか。

 魔族って言うくらいだし、呪いとか毒とか浴びせてきそうだ。


 とりあえず道を塞いでいた魔族は処理したことだし、さっさとリーニャ達と合流しよう。


 次の大通りも無事に渡り、細かい路地を進んでいく。

 やはり数が多い。しかもここら辺に居た人達は全員退避が終わっているらしく、討伐されてない分尚更多い。

 さっきの戦闘は一対一での勝ちだ、囲まれたら勝てないと自分に言い聞かせ、今まで通りなるべく出会わないルートで進んでいく。


 そうして次の大通りに差し掛かった時、変化が起こった。


「ん、何だ……? 渦がおかしい。」


 上空の漆黒の渦に、まるで空間そのものをねじっているような激しい歪みが起こった後、今までより大きい塊を落としてきた。

 それはあらゆる場所へと落ちていき、俺の目の前の大通りもその中の一つだった。

 ゴシャッと音の鳴った方向を、路地から少し顔を出して見てみると、3m程のデカイ魔族がそこへ居たのだった。


「あれは流石に相手にしない方がいいな……さっさと横切ってしまおう。」


 見た感じ、今までの魔族と同じく動きが遅そうだったし、さっさとリーニャ達と合流したかったのもあって、路地から一気に飛び出す。

 案の定鈍い動きで俺を追ってこようとするが、追い付かれるわけもなく路地へと入り込む。


「ふぅ。まぁ、あいつは中ボス的なやつだろ。そんなにポコポコ投入してくるわけでもないだろうし、一回逃れればこっちのもの……」


 路地へと入り込んで前に進んでいると、ゴシャゴシャゴシャと続けざまに音が鳴る。

 フラグを立てたことを後悔した。めちゃくちゃ余裕で投入してくるじゃないか……


 とにかく、あの巨体じゃ路地までは入ってこれないだろ。

 大通りを横切るときだけ気を付けていれば良さそうだ。


「よし、さっさと進もう。」


 そう意気込んで走り出すが、俺の足は止まることになる。

 路地の終わり、大通りに面する所に、今までよりも更に大きい魔族が待ち構えていた。全長は6m程になりそうなくらいにデカイ。

 その6mの魔族は俺が見えるなり、乱暴に腕を振るうと、周囲の建物を殴った。

 その一撃で建物は激しく抉られ、倒壊する。


「嘘だろ……」


 その馬鹿げた威力に唖然とした。

 腕を振る速度は見えるし、避けれない速さでもない。

 ただ、そこに乗る威力があまりにもでかすぎる。

 おまけに倒壊した建物の瓦礫で、路地の出口は埋まってしまった。

 これじゃ大通りへは出られない。


 後ろを振り向くと、小さい魔族が押し寄せてきており、その先の大通りには3mの魔族が立っていた。


 最悪だ。


「くそ! せめて小さいのだけでも殺るしかないか!」


 小さい魔族に向き直って武器を構える。

 攻撃は遅いんだ、落ち着けば大丈夫。

 幸い路地の大きさの関係で、数に囲まれる心配はない。

 前だけ見て、一体ずつ倒せば問題ない。


 そう思って一体目に斬りかかる。

 左肩から右脇にかけて斜めに振り下ろす。

 上半身の半分が地面に落ち、溶けて消える。

 これで消えると安心した瞬間、残った左腕を振り回してきた。


「うおっ!!」


 とっさに盾で受ける。

 ゴブリンとは比較にならない衝撃を受けて、身体が飛ばされた。

 倒れて尻餅をつく。


「ぐっ……威力がおかしいだろ……ッ!」


 倒れた俺の目の前に、上半身は左腕だけが残った魔族が近づいてくる。

 ヤバい、体勢を建て直す時間がない。


 近づいてきた魔族が腕を振り上げる。

 俺は、立てないまま盾を構えた。

 空中に衝撃が逃げないこの状態であの衝撃を受けたら、ひとたまりも無いだろう。でも、盾を構えないよりはマシなはずだ。


 魔族が腕を振り下ろす。俺はそれを盾で受ける。

 瞬間、目の前に火花が散るような衝撃が走った。

 身体中は軋み、一瞬で悲鳴をあげる。

 腕が折れたのかと思うくらいの、重い一撃だった。


 魔族は腕を振り上げる。

 ダメだ、これは避けないと。

 しかし、一瞬でとてつもない衝撃を受けた俺の身体は、回避行動をとる事が出来なかった。

 魔族が腕を振り下ろそうとする。

 俺は来る衝撃を予想し、目を瞑りながら盾を構えた。


 ドシャ


 身体に衝撃が走ると思っていた俺の予想を裏切り、聞こえてきた音は何かが地面に落ちる音だった。

 恐る恐る目を開けると、右手には見事な装飾のロングソードを持ち軽鎧を身に付けた黒髪の男性が立っていた。

 その目の前では、今ちょうど魔族が溶けて消えていったところだった。


「大丈夫だったか?」


 男性は優しい声色で俺に声をかける。


「だ、大丈夫……と言いたいところですけど、ちょっとしんどいです……」


 俺の返答に、男性は優しく微笑みかけてくる。


「俺の名前はナオト。君ら(・・)を助けに来た。」


「俺はユウスケです。ナオトってもしかして……」


「おお、同じ日本人だね。」


 こんなところで、また日本人に会えるなんて。

 って、感激してる場合じゃない。


「助けてくれるのはありがたいですけど、その、デカいのも居ますけど大丈夫ですか?」


 俺が訪ねると、ナオトは笑って答えた。


「大丈夫だよ。」


 ナオトは残りの魔族に向き合った。


「見せてあげるよ。勇者の強さってやつを。」


 そう、声高らかに宣言して。

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