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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
三章 助けるモンスターテイマー
72/104

65話 絶望と

2017/09/18 誤字修正 フォールハウト→フォーマルハウト

2017/09/19 多少加筆しました。

 黒い渦が上空に出現してしばらく。

 私達は『ふぇんりる』を背にあの土塊人形達と戦っていた。

 私達の他には、数人冒険者がここに残って一緒に戦ってくれている。

 彼らが言うには、あれらは魔族らしい。

 魔族は、魔王のしもべ達の総称だ。

 実物は初めて見たが、私の想像していたものとはかけ離れていた。


 もっとオーガとか、そういう魔物みたいな姿だったり、あるいは醜悪な見た目の人型だったりするのかと思っていた。


 なにより、生物的だと思っていた。


 今目の前に居る魔族達は、まさに命令を遂行するだけの人形のようだ。


「回復薬なら少しある。負傷者は中に入ってきてくれ。」


 『ふぇんりる』のオーナーであるケイラスが、店の扉を開けて私達に伝える。

 腕を負傷した冒険者が申し訳なさそうにケイラスに寄っていく。


「ありがとうございます。」


「いやいや、守ってもらってるんだ。こっちが礼を言わないといけない。ありがとう。」


 ケイラスはそう言うと負傷した冒険者をつれて中に戻った。

 今『ふぇんりる』の中には、ケイラスやスティエちゃんに加え、逃げ遅れた非戦闘員――商人や一般人――が数人避難していた。

 正しい判断だ、非戦闘員が護衛も付かずに中央まで逃げるよりかは、途中で見つけた冒険者達の居る建物へ逃げ込んだ方が安全だ。

 その冒険者達も、私達……主にヒサメとシロナちゃんを見て、自分達だけで中央に向かうより戦力的に安全だと考えたのだろう。


 かく言う私達は、ユウスケがこちらに戻ってくる可能性を考えて、宿を離れる訳にはいかなかった。

 ユウスケが中央に避難してるならそれはそれで良い。事が終わってから合流するだけの話だし。

 それより、こっちに誰も残っていないのにユウスケだけが戻ってきた場合の方が危険だ。


 ケイラスが戻ってすぐ、私は周囲に目を配る。


 状況は、あまり良くない。


 負傷者は一名だし、魔族もそんなに強いわけではない。問題は、その数だ。次々と降ってくる魔族に、私達の魔力やスタミナが持つかどうか……


 ヒサメとシロナちゃんがメインで魔族達を沈めているが、二人ばかりに負担がいくと良くない。

 かと言って、私は何も出来なかった。


 最初は戦闘に参加していたけど、割りと早い段階で気付いてしまった。

 魔族に弓は通用しない。

 頭もなければ心臓もない。心臓どころか魔石もない。

 あいつらはどこに矢が刺さっても、動きが鈍ることすらなかった。


 矢も効かなければ、打撃も効かなかった。

 こちらは衝撃を丸々吸収してしまうみたいだ。

 おまけに、切羽詰まって魔族に殴りかかった冒険者は、触れてすぐに腕の痛みを訴え始め、確認すると皮膚が火傷したみたいになっていた。

 身体が酸のような何かで出来ているのかもしれない。何にせよ、触れてはいけない。


 消滅させる方法は、刃物による切断と魔法のみだ。

 切断した部位は地面に落ちると、すぐに消えてなくなる。

 また、魔法を命中させると、大きなダメージを負わせることができるみたいだった。

 炎の魔法が命中したときは、貫通して当たった部分はごっそり消滅していた。


 と言うわけで、魔法は使えず、刃物も短剣しかない私は接近戦をするにも危険という理由で、後ろから状況の把握と指示をする司令塔のような立ち位置に居た。


「23番道から三体来ます! 後ろをとられないようにしてください!」


「わかった!」


 私の呼び掛けに、23番の立て札付近で戦っていた冒険者パーティの一人が返してきた。


 グリルは中心の冒険者ギルドから、各方向に続く大通りがあり、それぞれに番号が振られていた。

 『ふぇんりる』は都市の大通りに面した宿屋。その大通りは20番。

 その20番のラインの中でも、外に行くにつれて21番、22番、23番……と中へ折れる通りが作られている。


 先ほど新しく魔族が姿を現したのは、23番と書かれた立て札がある通りだ。

 その看板の先では、一組の冒険者パーティが魔族の相手をして居いる。


「次は21番と22番の間から二体! ヒサメ! お願い!」


「はぁい。」


 出現した魔族の近くに居たヒサメに声をかけると、ヒサメは氷のつぶてを作り出し、豪快にばらまいた。

 全身に穴をいくつも開けた二体の魔族はその場に崩れ、エネルギーが漏れ出すかのように消えていく。


「はぁ、数が多いわねぇ。こんなんじゃ魔力がいくらあっても足りないわぁ。」


「ヒサメ、無理なら退いていいのよ。」


 私はヒサメの身を案じてそう声をかけるが、ヒサメは片手を挙げて答えた。まだ余裕があるみたいだ。

 シロナちゃんも一方的に風魔法で魔族を切り刻んでいく。魔力がどれだけ持つかだけが心配だ。


「また23番から二体!」


 でも、無理じゃない。

 周りの冒険者もそれなりに心得があるらしく、魔族の攻撃は全て回避できている。

 シロナちゃんとヒサメが魔力切れで抜けたら、私が短剣で参加すれば少しは補える。


 少しずつ、でも着実に魔族を倒していく。


「22番から三体来ます!」


 魔族の数より、処理する早さの方が少し早い。

 このペースでいけば、途中からは休憩組を作って交代で魔族を迎え撃つことが出来るかもしれない。

 そうなれば、更に対応に余裕が出来る。


 しかし、思い通りにはさせてくれなかった。


 漆黒の渦が大きく歪んだかと思うと、それまでより大きい塊が現れた。

 それは、ゴシャッという音と共に私達の前に落下する。少しの間があった後、軋む音が聞こえてきそうな動きで立ち上がった。


 私達全員の動きが止まる。


「……マジかよ。」


 近くの冒険者が思わず声を漏らした、それくらいとてつもなく大きい。


 今までの魔族は私達と同じくらいの大きさだった。今回の魔族は、軽く見積もって二倍。3m以上はある。


 3mの魔族が腕を振った。大きいというそれだけで、振られた腕はそれまでの魔族の比じゃないくらいに速く感じる。


「大きいってことは、まとってことよぉ。」


 ヒサメが氷のつぶてを多数作り出し、それを3mの魔族に向かって撃つ。

 氷のつぶては今までと同じく、魔族に多数の穴を開ける。


「……へぇ。」


 しかし、今までと違って、穴がふさがり始めた。


「はあっ!」


 冒険者の一人が斬りかかり、魔族の腕が落ちる。それも、ボコボコと気持ちの悪い音を立てて修復されていった。


「これは……苦戦しそうね。」


「うわっ!」


 23番方向にいた冒険者が、大きい魔族に気を取られて小さい魔族に背後を取られていた。すぐに回避行動を取ったみたいだけど、掠ったのか横腹をおさえていた。

 それで私も大きい魔族からようやく視線が外れる。そして気付いた。周りからぞろぞろと寄ってきている小さい魔族の存在に。


「マズいわね、囲まれてる。」


「雑魚は私とシロナがやるわぁ。あんた達はデカいのをやりなさい。」


 ヒサメがそう言って氷の礫をばらまく。

 シロナも空を縦横無尽に飛び回りながら風魔法で切り刻んでいく。

 二人の魔法により、小さい魔族は瞬く間に消滅していく。


「ありがとう、二人共。」


 あの二人が雑魚を処理してくれるなら、こっちは充分大きい魔族に集中できる。


「前衛は魔族を取り囲んでください。的を絞らせないように各方向から攻撃を。後衛は一箇所にかたまって攻撃の準備を。」


 私が指示を出すと、皆はその通りに配置につく。

 前衛は大きい魔族の周囲で腕を斬り、足を斬り、行動の阻害をしつつターゲットを分散する。

 大きい魔族も思い通りに動けないのか、攻撃が空振ったり、倒れかけたりしている。


 前衛組が時間を稼いでくれたお陰でマジシャン数人が一箇所に集まり、横並びになって攻撃の準備が整った。


「後衛準備出来たわ! 前衛組は巻き込まれないように退避して!」


 私の声に、大きい魔族の周りに居た前衛組は一気に距離を取る。


「良いわよ! 撃って!!」


 マジシャン達の魔法が魔族へ撃たれる。魔法の事はあまり詳しくないけど、やっぱり攻撃力があるのか炎か風の魔法に統一されていた。

 激しい炎が魔族を焼き、鋭い風が切り刻む。


 魔族の身体は、半分ほどまで削れていた。


「前衛組! 後衛の準備が整うまでもう一度お願い!」


「任せろっ!」


 前衛組がまた魔族を取り囲む。魔族の身体は、また再生しようとしていた。でもさっきより速度が遅い。


「再生なんてさせるかよ!」


 再生しようとしているところから切り落としていく。

 切り落とせば切り落とすほど、再生の速度が遅くなっていく。


「これは、魔法を使うまでもないかもしれないわね。」


「準備終わりましたけど、どうしますか。」


 マジシャンの一人に聞かれる。多分この人は私より年上なんだけど、何故か敬語で話されて落ち着かない。


「焼き払った方が早そうね。危険なものはさっさと始末するべきだわ。前衛組! 距離をとって!」


 私の声にもう一度前衛組が退避、そのタイミングでマジシャンが魔法を撃つ。


 私が焼き払うって言ったからか、全員が炎魔法を放った。全ての魔法が重なり、激しく燃え盛る巨大な炎の玉になった炎魔法は魔族に直撃。その身を焼き付くしていった。


 炎が消える頃には、そこには何も残っていなかった。


「や、やった! 何だでかいだけじゃねーか!」


 前衛組の中の一人が歓喜の声をあげる。

 その声を始めに、皆に笑顔が浮かび始めて。


 ゴシャッ、ゴシャッ、ゴシャッ


「……嘘でしょ?」


 私達の近くには、先ほどの大きな魔族が三体も降ってきていた。

 皆の顔が青ざめる。


「ひどい顔してるんじゃないわよぉ。」


 ヒサメにバシッと背中を叩かれる。


「ヒ、ヒサメ? 小さい魔族達は?」


「数が減ってるわぁ。雑魚が少なくなってきたから大きいのを投入し始めたんじゃないかしらぁ。それか、雑魚じゃ意味ないと思って投入を止めたのか。」


 周りをよく見ると、確かに小さいのは減っている。

 大きいのに集中すれば良いなら、まだ勝機はあるかもしれない。


「皆一度下がって! フォーメーションは少し変わるけど作戦は変えないわ! 前衛は後衛が魔法を撃つまでの時間を稼いで! 一体ずつ確実に仕留めていくわよ!」


「「「「おう!」」」」

「「「「はい!」」」」


 気合いを入れる掛け声と共に前衛が魔族を取り囲む。

 今回魔族は三体。それぞれを数人ずつでマークしている。その少し後ろではヒサメが、空中ではシロナが前衛に混ざっている。

 ヒサメは氷魔法で動きを止めたり足を斬ったりして動きの阻害を、シロナは周りを飛び回りながら腕や足を狙っている。

 二人とも三体全員をしっかり見ながら、的確に行動を阻害していた。

 後衛組は魔法の準備をする。


「これは、いけるわね。」


 私はしっかりと手応えを感じていた。これなら、勝てる。


「準備、整いました!」


「よし、前衛組! 退避!」


 前衛が退避してすぐ、一番手前にいた魔族に魔法が炸裂する。

 先ほどと同じく、身体の半分ほどを削り取る。


「いけるわ! また準備をおねが……」




 ゴシャッ、ゴシャッ、ゴシャッ、ゴシャッ、ゴシャッ




「……あは、あははは。」


 乾いた笑いが漏れた。

 追加で五体。合計七体と半分。


「最悪……ね。」


 思わず愚痴がこぼれる。

 新しく落ちてきた魔族達は、こちらへプレッシャーを放ちながら歩いてくる。

 流石にもう勝てる見込みはない、早く逃げたい。

 でも、ユウスケが帰ってくる可能性があるから、私がここを離れる訳にはいかない。

 そうなれば、ここで戦うことになる。

 だからといって、関係ない皆を巻き込んでいいの?

 多分私達が動かないと、この冒険者達は逃げない。


 何が正解なのか分からない。

 どれを選べばいいのか分からない。


 どうすればいいのよ!




「伏せなさい。」


 判断ができなくなり、頭を抱えていた私に聞こえたのは、凛とした女性の声だった。

 誰かに縋りたかった私は、その声に従って迷うことなく伏せる。


「フレイムスピア。」


 大きくないのによく通る声が聞こえた後、ゴウッという音と共に炎の塊が突き抜ける。

 その炎の塊は、まるで槍のごとく大きな魔族を貫いて直進する。

 二体、三体と巻き込んで、炎の槍は消えた。

 巻き込まれた魔族は、身体の八割ほどが削られ、もう再生するのも難しそうな状態だった。


 私の隣に、さっきの声の主が現れる。


「私の名前はアリエル・フォーマルハウト。」


 頭に被ったつばの広い三角帽子を上げて、その顔が見える。

 赤い髪に赤い目、私と同い年くらいに見えるアリエルは、着ているローブをなびかせて言った。


「貴方達を助けに来たわ。」

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