62話 従魔証明証
投稿遅れました。すみません。
俺達は競争しながら迷宮都市グリルに到着した。もちろん俺はビリだ。遅れながら門に着くと、そこではちょっとした騒ぎになっていた。
ヒサメだろうなぁと思いつつ近寄っていくと、予想通り騒ぎの中心はヒサメだった。
リーニャが門番と揉めている。
「だから、仲間ですって!」
「とは言われてもね、それを確認できないことには……」
ヒサメは仲間だから大丈夫と言い張るリーニャ、仲間だと言う証拠がないと止める門番。
周りにいた冒険者達は、ラミアのいきなりの登場にざわついている。
うーん、これは困った。
そう言えば従魔である証拠の首飾りや腕輪を持ってないな。
シロナに渡したやつはヴェルニーから貰ったやつだから、どこで貰うかも分からないし……
取り敢えず、門番に聞くしかないよなぁ。
「あのー、従魔の首飾りや腕輪ってどこで貰えばいいんですかね?」
門番に近寄っていって声をかける。
門番はこちらに視線を向けると、驚いたような顔をした。
「モンスターテイマーなのに知らないのかい?」
うぐっ、スミマセン……
確かに早いうちに確認しておくべき事でした……
「うーん、どうしようか……」
門番は少し悩むと、仕方ないなと呟いて、裏にあった小屋に向かって大声で呼び掛けた。
すると、中から一人の青年が出てきた。
「はい、呼びましたか?」
「彼に、従魔証明証の購入場所を教えてあげてくれ。」
「従魔証明証……あぁ、分かりました。って、ラミア!?」
後ろで驚いている青年を放って、門番はヒサメに話しかける。
「証明証をつけるまでは、申し訳ないがここで待機して貰うよ。」
「いいわよぉ別に。」
ヒサメはあっさり承諾すると、門の隣にとぐろを巻いて休み始めた。
「じゃあ私達は待っておくわね。」
リーニャはそう言うと、シロナを抱き抱えてヒサメの隣に向かった。レイもぴょこんとカバンから飛び出すとヒサメの隣まで向かっていく。
買いに行くのは俺だけか。
はぁ、ヒサメの為に早く買ってこよう。
「それじゃ、行きますか。」
青年と俺は都市の中へ歩き始めた。
~
「いやぁ、ビックリしましたよ。まさかラミアをテイムされるとは。」
「いやぁ、テイムって言うか、彼女と俺の目的が近かったお陰で仲間になってくれただけですよ。」
青年と世間話をしながら歩く。
彼はダスティンと言うらしい。
ダスティンと世間話をしていると、色々知ることができた。
門番は憲兵団に似た団体から交代で配属されるとか、実力はDランク以上ならなれるだとか、ダスティンは新米だとか。
そしてダスティンの話が終わった後、空気的に俺が話す番が来て、旅の目的や、シロナやヒサメとの出会いとかを話していた。
「それにしても、ラミアもそうですけど、ハーピィも珍しい白色でしたし、ユウスケさんは何か持ってるのかもしれませんね。」
「確かに、凄い奇跡のような出会いだよなぁ。」
「そうですよ。何より、あの美しいエルフのリーニャさん。いいなぁ……」
ダスティンの目は、キラキラしていた。
あぁ、ダスティン。リーニャに一目惚れしたのか。
リーニャは綺麗で性格も良いし、惚れるのも仕方ないな。
でも手を出すのは許さないぞ。
「あんな綺麗な人とお付き合いできるなんて羨ましいですよ。」
「そうだな、付き合えると幸せだろうなぁ。」
今までの冒険を振り返りながらそう呟く。
リーニャは強いし、綺麗だし、仲間思いだし、食べたこと無いけどきっと料理も上手いだろう。
冒険も落ち着いて結婚して家でも買えば、帰った時に料理中だったエプロン姿のリーニャが「おかえりなさい!」って出迎えてくれたりして。ウヘ、ウヘヘ。
そんなことを思っていると、ダスティンは首をかしげた。
「付き合えるとって、付き合ってるんじゃなかったんですか?」
「え? 誰が?」
「ユウスケさんが。」
「……え?」
俺がリーニャと付き合ってる?
「いーやいやいやいや! 付き合ってないよ! パーティ組んでるだけだよ!」
「ええぇーっ!! 完全に恋人の距離感じゃないですか!! 何してるんですか!!」
何してるって言われても!
そりゃリーニャは俺の事嫌ってないだろうけどさ。
「恋人の距離感って……」
「いや、本当にですよ! しかも雰囲気がもう付き合って何年って感じですよ。」
そうなのか……他人から見たらそう見えるのかな……
確かに俺はリーニャの事、好きだけど。
でも、モン娘ハーレム作ろうとしてるし、そんな状態で告白なんてしても、リーニャに対して中途半端で失礼だし。
「……きっと、今の状態が一番良いんだよ。」
「そんな物なんですかねー。」
俺とダスティンの世間話はそこで終わった。
会話のキリがよかったのもあったし、なにより目的地に到着したからだ。
冒険者用の道具屋だ。
店の中に入ると、回復薬や解毒剤、簡素な剥ぎ取りナイフやカバンなど、冒険者にとって必須とも言える道具が満遍なく置いてあった。
高品質の物は、やっぱり専門のところで買った方がいいだろうけど、一式揃えたい時とかはこっちの方が便利だ。
その店の中の、隅の方に目立たず並べてあった。
「おや、従魔の首飾りを買うのかい。」
店員のおばあちゃんが声をかけてくれる。
「そうですね、首飾りか腕輪か迷ってるんですけど。」
「へぇ、どんな魔物だい。」
「えっと……」
ラミアって言ったら驚くかな、ちょっとぼかして言った方がいいか?
いや、どうせ町を歩けば皆見るし、ラミアって言っておこう。
「ラミア、なんですけど。」
「へぇ、ラミアかい。そりゃ大物だねぇ。」
「あれ、驚かないんですか?」
意外にも、おばあちゃんは驚かなかった。
「いやいや、驚いているよ。でも今まで生きてきて、もっと驚くことなんて沢山あったからねぇ。」
なるほど、人生経験が豊富なんですな。
しかしラミアをテイムする事って、俺が言うのもなんだけど結構凄いことだと思うんだけど、それより凄い事ってなんだろう。
ドラゴン見たとかかな、それなら確かにラミアは霞んで見えるかもしれない。
「ラミアねぇ。綺麗な子なのかい?」
「そうですね、綺麗だと思います。」
さらさらでライトグレーのロングヘアは、光の反射で銀色に見える。上半身はモデルのようなスタイルで、肌に纏った鱗は宝石で装飾されたフリル付きの服みたいだ。
蛇の下半身は白と黒のまだら模様で、それもまた芸術のような美しさがある。
「じゃあ、アクセサリーのように付けられるこの腕輪が良さそうだねぇ。」
おばあさんに渡された腕輪は、人間がつけても違和感がないような立派なものだった。
モンスターテイマーの中には、やはり見た目が可愛いものやかっこいいものが良いと思う人も居るようで、そういう品が作られるんだとか。
しかし、モンスターテイマーって数が少ないって聞いたけど、そういう所はしっかり気にして貰えるんだなぁ。
「モンスターテイマーって、よく来られるんですか?」
気になったので聞いてみる。
まぁ、よく来ることはないだろう。
「よく来ることはないけど、たまに見るねぇ。他の職業と違って数が少ないとは言っても、冒険者自体が沢山居るからねぇ。」
確かに、数えるほどしか居ないって訳でもないか。
それにここは迷宮都市。ダンジョン目当てに冒険者が沢山集まる場所だ。人の出入りも多いし、エマやアステニアと比べて出会いやすいだろう。
おばあさんに腕輪の代金を渡し、ダスティンと一緒に帰ろうとした時、ふともうひとつの首飾りに目がいく。
こちらも装飾がしっかりしていて可愛い。
シロナの首飾りはヴェルニーに貰ったもので、ただの首飾りだ。
見方によっては奴隷にも見える。
俺は腕輪と首飾りを購入し、ダスティンと一緒に門へ向かった。
門の近くまで戻ってくると、何やら騒がしい。
また何か問題が起こったのか?
ダスティンと一緒に駆け寄ると、そこに広がっていた光景は。
円のように取り囲む冒険者達、中央に居るのはヒサメとシロナ、それにレイだ。
冒険者達がやれだのいけだのヤジを飛ばすと、ヒサメは氷魔法を空中に発現する。
これはまずい、こんなところで暴れたら取り返しがつかない。
「おい! ヒサメ!」
ヒサメに向かって叫ぶが、冒険者のヤジに掻き消される。
ヒサメの真上に発現した幾つもの氷は、それぞれが円の形になる。
今、ヒサメの頭上には直径80cm程の氷のリングがいくつも浮かんでいた。
何を始めるつもりなんだ、ヒサメ。
ヒサメがシロナに合図を送る。シロナは空中へ飛び上がった。
風爆は使っていないが、それを抜いて出せる最高速度に近い速度で飛び回る。
そして、シロナはおもむろに、
リングを潜った。
シロナが立て続けにリングを潜ると、ヒサメはシロナが潜り終えたリングを移動させる。
そして移動したリングをシロナがまた潜る。
「「「「おおおおおぉぉ!!!」」」」
冒険者達から歓声が上がる。
俺は脱力してその場に座り込んだ。
心臓に悪いから、本当に。
「あっ、ユウスケ。帰ってきたのね。」
門の脇でそれを眺めていたリーニャが俺に近づいてくる。
「ねぇ、何でこんな大道芸をしてるの……」
「ユウスケが買いに行ってすぐにね、ヒサメが暇だって言い始めて。最初は氷魔法で色んな物作って遊んでたんだけど。」
リーニャの視線の先には、俺達の氷の彫像や、魔物の彫像、それとリングがいくつかあった。そっちにも何人か人が集まって観賞している。
「それで、わっかを作ったらシロナちゃんが高速で潜ったの。そこからリングを空中に作ってはシロナちゃんが潜ってを繰り返して、いつのまにかこんなレベルの芸に……」
リーニャもちょっと苦笑いしながらヒサメ達に視線を向ける。
ヒサメ達はフィナーレを迎えたのか、氷で派手な演出をしながら決めポーズを取っていた。
ヒサメ達は盛大に拍手に包まれる。
「あぁー、平和でよかったよ。本当に。」
やりきった表情のヒサメとシロナは、冒険者の拍手が終わった後もしばらく余韻に浸っていた。




