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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
三章 助けるモンスターテイマー
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55話 鋼鉄剣

 シロナが腹八分目になるまで食事を終えた後、俺達はより深くに向かって進んでいた。

 途中でマダラヘビに遭遇したので、主にレイとリーニャとシロナがサクッと狩り、レイがぺろりと格納し、そのままかなり深くまで潜ってきた。


 予め聞いていた情報から考えると、そろそろ最深部に到着しても良さそうな頃合いだ。未だに『鋼鉄剣』のメンバーであるディト達にはあっていない。

 分かれ道がいくつも存在する為、そこで入れ違いになってダンジョンから帰還している可能性もある。


 ここのダンジョンもコボルトの洞窟と同じく、分かれ道には冒険者が目印を残していた。

 行き止まりへの道は、魔物の気配がした時だけそちらに寄り道していたので、殆ど正解の道を直進してきたわけだけど、最深部まで潜ってそれでもディト達が見つからなかった場合は、俺達は大人しく帰る。

 捜索していた俺達が帰還できないなんてパターンが一番最悪だ。


 ちなみに、ダンジョンの最深部だからといってボスモンスターが待ち構えているのかと言えばそうではなく、あくまで強いモンスターが濃い魔素の所に引き寄せられているだけで、実際の所上位種でも何でもない唯のモンスターがポツリと居たり、一つの群れがのんびりしてたりという感じらしい。

 だから基本的に冒険者達は、ダンジョンの機能を停止させる時以外では、めったに最深部まで潜ることはない。

 まぁ、最深部には、そのダンジョンの中で一番質の良い魔鉱石が眠っている可能性がある。

 それを狙って最深部まで行く冒険者も、居ないわけではない。


 しばらく歩いていると、周囲の雰囲気が変わってきた。

 それは俺だけが感じたことではないらしく、リーニャも気を引き締めているようだ。


「ん。」


「シロナ? 何か居るのか?」


 シロナに至っては、気配感知で何かを感知したらしい。

 シロナは何かを言いかけたが、それはすぐ止まった。

 丁度俺達が曲がり角を曲がった先に、人が居たからだ。

 その人達は、冒険者ギルドでクライムが心配し、俺達が探していた人達。

 『鋼鉄剣』のメンバーだった。


「あ、ユウスケ……か?」


 座って壁にもたれ掛かっていたディトが、俺を見るなり、そう口にした。その顔には疲れが見える。


「ディト、大丈夫か? 何かあったのか?」


「いや、大したことじゃない。 張り切りすぎて深くまで潜ったお陰で、ヘビたちと連続して戦闘になってな。それで皆消耗が激しかったもんだから、ここで休憩していたんだ。」


 予想が半分以上当たっていた。ディトは思っていた通り、ノリで行っちゃう系男子だったようだ。


「最奥まで行ったのか?」


「いや、潜ろうとは思ってたんだけどな。思ったより体力の消耗が激しいから、止めたよ。」


 そう言ってディトは笑った。

 その言葉を聞いていた後ろの女性、ライラが割って入ってきた。


「だから途中で引き返そうって言ったでしょ。なーにが『俺はいける!』よ。行けてないじゃない。」


「そんときは行ける感じだったんだよ。なんか急に身体がダルくなってきたんだから仕方ないだろ。」


「そりゃあ疲れは一気に来るときだってあるわよ。それを見越して早めに撤退するのが冒険者の心得でしょうが。」


「でも死んでね―だろ? 生きてりゃ勝ちなんだよ。」


「わざわざ死ぬ可能性のある道を選ばないでって言ってるの!!」


「多少危なくても次の一歩進むだけで得るものがあるかもしれないだろ!!」


 どうやら、また痴話喧嘩が始まってしまったみたいだ。

 言い合いをするディトとライラを放っておいて、残りの二人に会話を振る。

 片方は小柄で大人しそうな女性。もう片方は落ち着いた男性だった。

 こちらの二人は、冒険者ギルドでちらりと見たことは有るが、会話をしたことはない。


「えーっと、そっちのお二人は大丈夫ですか?」


 俺の声に、まさか自分に会話が振られるとは思っていなかったのか、女性の方が慌てて返事をする。


「ぅわっ、私ですか? だ、大丈夫です。」


 手を前でパタパタと振りながら必死に大丈夫だということを伝えてくれる。正直言って可愛いです。

 慌てている女性に代わり、隣りにいた落ち着いた男性が続いて話す。


「初めましてユウスケさん。僕の名前はカーシュ、そしてこちらの女性はクルエです。お気遣い感謝します。」


「あぁ、いえいえそれ程でも……。」


 やたらしっかりした人だ。こういうしっかりした人と喋っていると、なんだか恐縮してしまう。


「正直、僕らはそれ程疲れていませんので大丈夫です。一番疲れているのはディトで、その次にライラでしょう。彼らは防御の要で、攻撃の要ですから。」


「ディトは剣を使う戦士……剣士ですか? ライラは見た目からしてマジシャンっぽいですね。」


「当たりです。ですが、ディトはもう中級職『セイバー』になっています。このパーティでの戦闘力は一番でしょうね。」


「マジですか。」


 Dランクになりたてで、もう中級職なのか。どのくらいで中級職になるのが普通なのか分からないけど、恐らくめちゃくちゃ早いんだろうな。


「そして僕はシーフ、クルエがプリーストです。クルエは殆ど戦闘に参加できませんし、僕は盾としては殆ど働けません。その為に、ディトとライラに負担が偏ってしまう。」


 なるほど、彼らのパーティは盾役兼火力のディト、高威力殲滅のライラを軸にしているのか。盾役が攻撃兼任で一人というのは、ディトが中級職のセイバーだからこそ成り立つ構成だと言える。


 逆に言えば、盾役が一人で多数を上手く捌ける場合、各役割も分かりやすい。ライラは安全な場所で遠距離から火力を出し続ける、カーシュが遊撃で削れた奴にとどめを刺していく、ダメージを負うのはほぼディトだけなので、ヒールはディトに集中していればいい。


 この構成で成り立っているということは、それ程の腕があるということだ。話を聞くだけで、各メンバーの立ち回りの上手さが伺えた。


「凄いパーティですね。」


「いえいえ、それ程でも。」


 カーシュは、笑って俺が先程言った台詞を真似た。


「ディトはもう体力的にキツイと言ってましたけど、もうそろそろ帰るんですか?」


「ん、そうですね、恐らく。ディトも流石に先に進むとは言わないでしょう。」


 カーシュのその言い方は、なんかまるでディトがここまで来ることは予測していた様な物言いだった。


「もしかして、ここまで来るのは分かってたんですか?」


「ん? ある程度はね。」


 カーシュに聞いてみると、どうやら本当に分かっていたらしい。


「なんで止めなかったんです?」


「だって、その方が面白いでしょ。」


「……面白い?」


「うん、ディトが勝手に進んで勝手に戦闘始めて勝手に疲れる。それを見てライラが怒る。ディトが言い返す。それを繰り返すんだけど、毎回怒り方とかバリエーションが違ってね。正直喧嘩見るのが楽しみなんだ。」


 落ち着いた男性? 撤回します。変わった男性でした。

 そこらのタイミングで、ディトとライラの喧嘩も終わったらしく、こちらへ歩いてきた。


「ディト。もう引き上げるの?」


「ん? あぁ。流石に……。」


 流石にの後、何か言いかけてディトは何かを考え始めた。

 それは5秒にも満たないくらいの時間だったが、ディトは考えを纏めたらしい、俺に向かってある提案をした。


「なぁ、最深部まで行くんなら、俺達も連れて行ってくれないか?」


「ハァ?」


 その言葉を聞いて、一番最初に反応したのはライラだった。


「ディト、あんた何言ってんの?」


「何だよ、まだユウスケがヤバイ奴だって疑ってんのか?」


「疑ってないわよ、今私の中じゃあんたが一番ヤバイ奴だわ。」


「何だと?」


 またディトとライラの言い合いが始まりそうな雰囲気だったが、どうやら今日はもう言い合いはしないみたいだ。

 ライラは落ち着いてディトに言う。


「私たちはもう、かなり消耗してる。それに食料だってもう少ないのよ。付いて行ったって足手まといになるだけだわ。」


 それに対して、ディトも自分の見解を述べた。


「あぁ、確かに消耗してるな。それで、俺達のパーティだけでこっから帰還するのと、ユウスケ達について行かせてもらって、大人数で一緒に帰還するのは、どっちの方が安全だ? 消耗してるとはいえ、盾役くらいなら俺だっていくらでも務められるし、こっちにはプリーストも居るんだ。大人数でローテーション組んで戦ってた方が双方の体力も温存できる。」


 まぁ、ユウスケ達がいいならだけどな、と一言添えて、ディトの話は終わった。


 ライラも、その説明には納得できる部分があったのか、俺の方に視線を向けてきた。


 要するに、俺の一言で全てが決まるってこと?


 リーニャを見る、リーニャはこっちを見て頷く。

 シロナを見る、シロナは首を傾げる。


 まぁ、良いか。優秀な前衛と後衛が一人ずつ増えるだけでもかなり安定するはずだし、元々最奥まで行く予定じゃなかったけど、ここまで安全マージンを取って最深部まで行けるチャンスがあるのなら、魔鉱石の一つや二つは持って帰りたい。


「じゃあ、最深部まで行きますか。」


 と、その前に。

 俺はレイに頼んで、保存してあったサンドイッチを出してもらった。

 それに、鋼鉄剣のメンバーは目を丸くしている。


「取り敢えず、腹ごしらえしませんか? 腹が減っては戦はできぬ! ってね。」



 急にスライムから出てきたサンドイッチに戸惑いつつも、俺が一口食べるのを見て大丈夫なんだと思ったのか、ディト達はダンジョンでは到底食べられないはずのサンドイッチを頬張るのだった。

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