54話 マダラヘビとの遭遇
ユウスケとリーニャシロナとの間にステータス差が生まれてきたお陰で、戦闘中ちょこちょこ三人称視点で説明を入れることにしました。
だって、見えないはずのユウスケが状況を事細かに説明できたらおかしいからね……。
読みづらかったら指摘ください。何か方法を考えます。
もしくは、いい案をコメントで頂ければ……。
~ ダンジョン『マダラ』 ユウスケ ~
マダラヘビの依頼を受けた俺達は、ディト達を捜索しつつマダラヘビを探していた。ヴェノムイーターや、それより下位の個体であるポイズンスネーク等もちょこちょこ出てきていたが、どうやら群れる習性はないらしく、多くても2匹くらいしか同時に遭遇はしなかった。
2匹くらいなら俺達の敵じゃない。いくら俺のステータスが低いと言えど、戦闘経験のある格下の魔物に遅れを取ることはなかった。
「ん。」
そんな中、一番気配感知能力の高いシロナが俺に声をかける。
どうやら、またもやヘビのお出ましのようだ。次もヴェノムイーターかと注意しながら先へ進んでいくと、そこにはお目当てのマダラヘビが居た。
「シャァァァ!」
ヴェノムイーターよりも気配感知能力が鋭いのか、早くに俺達に気付く。その図体は180cm程。成体の中ではほぼ中間の大きさって所だ。
マダラヘビは俺達を視認するやいなや、見た目に似合わない素早さで、でかい図体を揺らしながらこちらへ迫ってきた。
「リーニャ! シロナ!」
「もういけるわ!」
「ん。」
俺より打たれ強いレイが俺の前に出る、俺はその後ろで構えつつ、リーニャとシロナへ配置につくように指示。
しかし後ろから聞こえてきたのは既に準備万端との返事。そりゃそうか。先に気配感知で気付いている二人が、何の準備もせずに前進するわけがないな。
今回は相手がデカい。デカいということは、レイの液化で足止めをすることはほぼ不可能だ。
それなら最前線でレイが攻撃を行いつつヘイトを稼ぎ、レイに負担が大きくなってくれば、俺が横からちょっかいを出す事で上手く俺とレイにヘイトを分散させる。
ステータスの面で俺の方が打たれ弱い為、あまりでしゃばる訳にはいかない。
ガランドさんから貰った剣は腰に下げ、背負っていた麻痺剣を手に持ち直す。
今回は俺は削りをするより、完全に状態異常狙いで攻撃を当てていった方が良いと思ったからだ。元々STRの値が低い俺にとっては、どれだけいい武器を使っていようと攻撃が通らなくなる相手が出てくる筈。
Dランクにもなってくれば、そろそろステータス差を嫌という程感じる頃合いだ。コボルトの殲滅の時、俺やリーニャが一匹ずつ倒す間にシロナが二匹倒していたように。
それなら、ステータス以外のところで埋めていくしか無い。幸い、俺には状態異常を与えられる剣がある。盾の扱いさえミスしなければ、まだ役に立てる。
「レイ! 頼んだぞ!」
マダラヘビが迫り来る中、俺がレイに声をかけると、レイも張り切りだしたらしい。触手を長く伸ばし、大振りでマダラヘビに叩きつける。
マダラヘビはそれを正面から受ける。バシッという音が洞窟内に響き渡り、マダラヘビが一瞬止まる。
マダラヘビの方は思ったより衝撃があったのか、首をレイに向ける。まずはレイをターゲットに定めたようだ。
マダラヘビがレイに首を向ける。その隙を見逃すはずもなく、リーニャとシロナが攻撃を仕掛ける。
リーニャは最近獲得したらしいスキル《マルチプルショット》を行う。マルチプルショットは複数の矢を同時に射るスキルだ。リーニャの集中力によって、射て命中させる事のできる本数は変わる。焦っていれば二本でも当たるかどうか怪しいが、こういう風に安全な後衛で集中できる時は三本くらいは命中させられるらしい。
ヒュッという風切り音と共にマダラヘビの胴体に矢が突き刺さる。今回放たれた矢は、三本。どうやら絶好調みたいだ。
シロナもそれと同時に風魔法を使う。鋭さを持った風の刃が、マダラヘビへと命中する。
それは表面を少し傷つけるだけで終わったが、それらの攻撃は結構効いたのか、マダラヘビが鳴き声を上げながらリーニャとシロナへと向いた。
「よそ見してんなよ!」
リーニャとシロナへ攻撃を向かわせる訳にはいかない。レイがマダラヘビの正面へ周り、触手を振って視界妨害と攻撃を行う。
その間に俺が横へ周り、先ほどできた切り傷に向かって剣を振り下ろす。
しかし、マダラヘビの方も大人しく攻撃を受けるわけもなく、身体を暴れさせて尻尾をこちらへ振ってきた。俺は剣を振り下ろしている最中だ。勿論、まともに衝撃を受けた。
「うぐ……。」
「ユウスケ! 大丈夫!?」
思いの外強い衝撃により後ろへ転がる。立ち上がれないことはない。しかししんどい。
「大丈夫……ちょっと下がる。」
パーティプレイで攻撃を受けた際に大事なのは、連続して攻撃を受けない立ち回りだ。
回復手段を持っているならば、盾役が削れたらサブの盾役と交代し回復、万端になればまた交代という風に、盾役は常に体力満タンであることが望ましい。
俺達の場合は回復薬がある。服用してもすぐに効果が出るわけじゃないが、時間が経過すれば痛みも傷も収まってくる。
この物語の主人公である筈なのに、一番攻撃をまともに受けて何度もうぐっとかグハッとか言ってるの本当に辛いな……。
自分で選んだ道ながら、ココロの中で少しぼやきながらも回復薬を飲み干す。うぇ、苦い。
即時回復で無い分、回復薬は早めに服用すべきだ。もしギリギリまで削れたライフで俺が回復している間にレイが沈んでしまえば、盾役が二人いる意味がなくなってしまう。
早めに回復、そしてバランス良くダメージの分散を。
レイの方を見てみると、レイの振り回している触手も、尻尾の一振りで千切れてしまったりしていた。しかし、流石スライムと言うべきか、千切れた身体は回収すれば元に戻るらしい。
触手が千切れる度に、少しずつダメージを負っているようだ。だけど俺が受けたダメージと比べると蚊に刺されたようなものだな。確認の為にステータスを開くと、レイのライフは2や3ずつ削れていっていた。
対して俺は半分近く削れている。打たれ弱すぎるな。筋トレでもするか。多分しないけど。
そんな感じでうまい具合にレイがヘイトを稼ぎ、シロナが風魔法で削っている中、リーニャだけがいつもと少し雰囲気が変わっていた。
~ 三人称視点 ~
「ちょっと、新しいの試してみようかしら。」
リーニャはそう呟くと、一本の矢を手に取り、弓を構え、マダラヘビへと向ける。
瞬き一つしない集中、リーニャの周りは、まるで音が遮断されているかのような静寂に包まれる。極度に集中したリーニャには、マダラヘビの動きが見えるだけ。それ以外の障害は、何もかも無くなっていた。
そんなリーニャの手元は、細かく震えている。
いや、違う。マダラヘビの動きに合わせてただ一点を狙っている。
マダラヘビが右へ動けば右へ、激しく左へ動けば左へ。
何回も動きを合わせて、道が見えた瞬間、リーニャは矢を放つ。
放たれた矢は、一直線にマダラヘビの頭部に。
いや、正確には右目に吸い込まれた。
「シャアァァァ!!!!」
顔を隠すように、痛みにのたうち回るマダラヘビ。リーニャは更にもう一本構え、先程の集中力が切れない内に次の矢を放つ。左目を狙ったようだが、狙いは外れて首元へと刺さった。
「っ、だめね。」
一本目の矢が目に刺さった後、二本目の矢を射るのに要した時間はおよそ三秒。その間に、シロナはチャンスを逃さなかった。
視界を奪われたマダラヘビ、ただ痛みから逃れたいが為に暴れているだけの、攻撃とはいえない攻撃。チマチマ風魔法で削る必要はない。速度と爪があれば。
シロナは自分の背後に空気の爆発を起こし急加速。放たれた矢と同速かそれ以上の速度でマダラヘビへと接近。くるりと身体を回転させ、シロナが風魔法で作っていた細かい傷へと目掛けて爪を振るう。
鱗が剥がれ、傷が入った肌。もう爪を阻むものもなく、シロナの斬撃は深く抉った。
そのまま回転しながらマダラヘビの横を通り抜けるシロナ。マダラヘビは新しい痛みに身を捩り、残った左目でその痛みを与えてきた者を探す。しかし、マダラヘビの左目が捉えたのは、もう目前に迫っていた、一本の矢だった。
~ ユウスケ ~
リーニャの雰囲気が変わっていたと思った瞬間、俺の目では追えない何かが起こったらしい。
リーニャが矢を放ち、マダラヘビがのたうち回り、シロナが消え、リーニャが二本目の矢を放ち、マダラヘビの後ろにシロナが現れ、三本目の矢が飛んでいった。
何が起きたかさっぱり見えなかったが、どうやら今の10秒そこらでどえらい攻撃を入れたらしい。マダラヘビの両目には矢が刺さってるし、傷は抉れてるし。
両目を失ったマダラヘビは、口を大きく開けながら甲高い鳴き声を上げる。そこに溜まっていっていたのは、毒だ。
見事に見たことのある光景である。
「レイ、酸弾。」
レイの打ち出した酸弾は、マダラヘビの口へと吸い込まれて行った。毒とともに酸弾を体内に流し込まれたマダラヘビは、一瞬ビクンと身体を跳ねた後、動かなくなった。
「俺、要らなくね?」
目の前に横たわるマダラヘビを見ながら、俺は呟いた。
~
思いっきりレイに酸弾を使わせてしまったが、マダラヘビの毒袋は牙の根本のところにある。酸なんか打ち込んだらそりゃもうダメですよ。なんて思いながら恐る恐る確認したら、酸弾はどうやら喉の当たりに着弾したらしく、牙周りは目立つ損傷がなかった。
これなら、解体すれば毒袋も完璧の状態で回収できそうだ。
さて、もうそろそろお気付きだと思うが、シロナは風属性魔法を使う際、いつも無詠唱だ。
そもそも魔法には確定したスキル名は無く、詠唱というのは言葉で魔法陣を紡ぐ事だ。魔法にスキル名をつけるのは、スキル名を付けることによってその魔法のイメージを固め、すぐに呼び出せるようにする為らしい。
俺達を襲ってきた『豪腕の唸り』のパーティメンバーの一人であるローブ男が使っていた魔法は『フレイムスプレッド』だが、それもそういうスキルが存在するわけではなく、火属性魔法でどういう魔法を使いたいかのイメージ、例えばそれの場合は炎が幾多の方向へ拡散するイメージを言葉で表した物が『フレイムスプレッド』だという事だ。
詠唱に加え、スキル名を言うことで、目当ての魔法をより速く正確に発現できるってことだな。
その点シロナは、直接魔法陣を脳内に作り上げ、そこから魔法を発現させているので、詠唱でわざわざ口に出す必要はない。
魔法のイメージ力も高く、スキル名を付ける必要もなくその魔法を発現することが出来る。これはメリットがとても大きい。
魔法を使う毎にイメージを微細に変化させることも出来る為、状況に応じた適切な魔法を使用できる他、変化によるフェイントや、認識のズレによるミスの誘発等。スキル名を言わないことにより、事前にどの様な魔法が来るのかの予測も難しい。
ヒロツグさんや、元アステニアの副ギルドマスターで影のリーダーだったアレイスター等、高ランクの魔術師は、そのランクに至るまでに幾度と無く魔法を唱える為、自然と魔法陣を脳内に作り出せるようになってくる。
また、魔法に対するイメージも、何回も使う内に自然に固まってくるし、イメージ力も上がる。
だから、高ランクの魔術師は無詠唱が基本だ。
シロナは元々素質があったのか何なのか、初めから魔法は無詠唱だ。
勿論スキル名何かも付けることはない。
だから、初めの方は連携を取るのに苦労したものだ。
そんな懐かしい事を思い出している間に、レイはマダラヘビを格納していた。
あれ、そんな大きいの格納できたっけ。前は俺の身長程の岩が格納できなかったような記憶があるんだけど……。
いや、レベルもステータスも上がってきてるし、どれかが影響してる可能性はあるな。
「まぁいいや、先に進もうか。」
「そうね、もう二匹くらいは持って帰りたいわね。」
そうやって歩き始める俺とリーニャ。
その歩みは、シロナのお腹の音が鳴ることによって一時中断されたのであった。
飯、食うか。




