51話 ダンジョンに向かいます
投稿遅れました、すみません……
~ 迷宮都市グリル ユウスケ ~
ギルマスに呼び出された翌日。俺達は冒険者ギルドへと向かっていた。
物資、体調共に問題無し。アステニアを出る前に休養は取っていた為、精神的にも穏やか。まさにベストコンディションの今、ダンジョンに潜らずしてどうしようと言うのか。
てなわけで、ダンジョン関連の依頼を受けるべく、冒険者ギルドへと向かっているわけだ。
昨日エールの連行のせいで嫌に目立ったり、青年に絡まれたりしたせいで多少気が進まないが、依頼を受けるには必ず通らなければいけない道なので仕方ない。
昨日の騒ぎのせいで、嫌な意味で注目の的になっていたらどうしよう、とか重い気持ちを押しのけながら、冒険者ギルドの扉を開けようとした。
扉に手をかけた時、耳に入ってくるギルド内部の喧騒。何を言い合いしているのか分からないが、声の高さからして、どうやら男女の言い争いのようだ。
どうも、こう面倒くさいイベントが多いのが冒険者と言う奴らしい。リーニャと顔を見合わせ、俺はため息をつきつつギルドの扉を開ける。
「あんったほんっとうに学習能力がないのね!」
「なんだよ! 別に問題ある行動じゃないだろ!」
「問題しか無いわよ!」
ギルドの扉を開けると、言い争いがより鮮明に聞こえてきた。そこで分かったことがある。一つは男女の喧嘩は男が何かマズいことをしたらしいという事。もう一つは、その二人の声に聞き覚えがあるということだった。
扉が開いたのに気付いた男女はこちらを向く。俺達に気付いて、片方はバツが悪そうに顔をそらし、もう片方は何故か笑顔で俺に駆け寄ってきた。
「おぉ! 昨日ぶりだな! 待ってたんだよ!」
俺に近寄ってきたのは、昨日俺に絡んできた青年だった。えーと、確か名前はディトだったかな。
「ディト……だっけ? 待ってたって、俺に何か用でも?」
特に待ち合わせもしておらず、絡まれる要素も見当たらなかった俺は彼に質問した。
ディトは俺の質問を聞いて、何故か自慢げに俺に説明を始める。
「いやー、実はお前やそのハーピィちゃんの話を俺の友人にしたんだけど、ぜひ見てみたいって言っててさ! なら一緒に見ようぜってことで連れてきたんだよ!」
俺とリーニャは顔を見合わせた。顔を見合わせるのは本日二回目である。
確かに白いハーピィが珍しいのは分かるし、俺がエールに連行されていたのが話のネタになるのも分かる。分かるけども。
「普通そういうこと本人に言わないと思うんだけど!」
せめて隠れて見るとか、遠巻きに見るとか、そう言う小細工をしてくれないと!
なんか正面からどうどうと「珍しいから見ます!」って言われると何とも言えない気持ちになる。
俺のその必死の叫びは、どうやらディトにはピンとこなかったらしく、連れてきた友人を俺に紹介し始めた。ディトの後ろでは、ディトと言い合いしていた女性が頭を抱えている。
「お前のこと見たいって言ってた友人なんだけど、この二人だよ。こっちがサイルスで、こっちがベル。」
二人と軽く挨拶をし、俺が自己紹介をする。何でこんなことになっているのだろう。
サイルスは男性、ベルは女性。二人共ディトと同い年くらいだった。
取り敢えず何故俺達に興味が湧いたのか聞いてみるか。
「それで、何故俺達を一目見たいと思ったの?」
二人共声を揃えて、エルフとハーピィを一目見たかったと。自分に正直でよろしいです。
それに加えて、サイルスの方はもう一つ特別な理由があったようだ。
「実は僕、モンスターテイマーなんです。」
「…………? マジ?」
そう、この世界に来て初の、俺以外のモンスターテイマーを発見したのだ。
このモンスターテイマーであるサイルスは、純粋なエルフとハーピィに対しての興味に加え、ハーピィをテイムしたという俺に最も興味を持って来たということらしい。
「ディトから聞いたのですが、なんでも特別なスキルを持っているとか。」
「うん、テイムの限界を無くすスキルなんだけどね……」
「テ、テイムの限界を無くす!? それって使い切りとか、膨大な魔力が必要とか、そういう制約が有りますよね?」
「いや、特には……」
「え? 何もないんですか!? それめちゃくちゃ凄いじゃないですか!」
アステニアでやったことあるようなやり取りだな……なんだか懐かしいぞ。
そんな感じで、シロナをテイムするに至るまでのあれこれを話すと、サイルスは熱心に聞いていた。
「そうなんですか……説得してテイムを……」
話を一通り聞き終えたサイルスは、ぶつぶつとなにか考え込み始めた。リーニャの方に視線を向ければ、向こうは向こうでそれなりに楽しく談笑してるみたいだ。
「あの……僕にも、そのスキルって手に入るでしょうか……?」
サイルスがそんなことを聞いてくる。まぁユニークスキルに詳しい訳じゃないけど、ヒロツグさんが後天的に取得することもあるっていってたよね。取得方法なんて知らないけど、それらしい事言っておこう。
「えーっと、多分心の底から望むこと……かな?」
「心の底から……なるほど。とても有意義な話をありがとうございました!」
サイルスは深々と頭を下げた。リーニャの方も、どうやら会話を終えたらしく、サイルスとベルはディトの元へ戻る。ディトは何故か自慢げに「どうだったよ?」とか聞いている。サイルスとベルからは好意的な返答があり、ディトは頭を抱えた女性にしてやったりのような表情で視線を向けた。
数秒の沈黙の後、頭を抱えていた女性も諦めたのか、何かを割り切ったのか、俺達へ向かってきた。
「私はライラ。その、昨日はごめんなさい。失礼な事を言ってしまって。」
「え? あぁ、いやー、別に気にしてないですし、良いですよ。」
話の流れが分からないけど、取り敢えず何かをキッカケに俺に謝罪をすることになったらしい。ディトがツカツカとこちらに歩いてきて、何故か自慢げに説明を始めた。
「俺が絶対良い奴らだって言ってんのに、ライラが余りにもお前らのことをヤバイだなんだって言うからさ、じゃあヤバくないって事を証明してやるよって事で、友人を呼んだのさ! 友人の反応を見て、ヤバイ奴らじゃなかったら謝れよって言ったんだよ! 俺の勝ちだなライラ! うはは!!」
そう言い終わると、かなりのドヤ顔で親指を立てた。うん、いい人はいい人なんだろうけど、ちょっと頭が怪しいような気もしないでもないような感じだな? 見ている分には面白いからいいか。
ライラはそんなディトを見て、今にも脳天をぶち割りそうな怒気を放っている。ディトはそれもいつも通りみたいな顔で話を続ける。
「それに、何か俺の冒険者としての勘が、仲良くしとけって言ってるんだよ。いきなりこんなこと言うのはアレなんだけど、これから仲良くしようぜ。」
そう言って右手を出すディト。その表情や雰囲気を見る限り、本気で俺達に好意的に接してきているみたいだ。リーニャやシロナが嫌な顔をしていないのも悪い奴じゃない証だし。
それに、一人くらいはこんなぶっ飛んだ冒険者の知り合いが居ても良いかもしれない。
「うん、それじゃあ、よろしく。」
俺は右手を出して握手を交わす。ディトと俺の手が重なり、ディトは俺に微笑みかける。
そして、俺の手を思い切り握ってきた。
「おぉぉぉおぉおおぉおぉおお痛い!!!!!!」
「うはは! これぞ友情のスキンシップ! じゃあまたな!」
痛みに耐えきれず手を振り払った俺の肩にポンと手を置き、ディトは冒険者ギルドを去った。
「……イライラするでしょ? アイツ馬鹿なのよ。」
ライラがボソッと俺に零してディトの後を追う、それに続いてサイルスとベルが冒険者ギルドを出て行った。
「……」
リーニャやシロナ、周りの冒険者の視線を受けながら思った。
オレ、アイツ、キライ。
バカみたいな握力に潰されそうになった手がジンジンする中、俺はダンジョンの依頼を探す。
素材収集も有るが、やはりメインは魔物討伐、そして危険なダンジョンの機能停止。
ダンジョンの機能停止については、専用の研究をしている研究者達を連れていき、最奥まで到達しなければならない。カテゴリー的には護衛という事で並の依頼より難易度は高い。
中に生息する魔物がそれ程危険ではないダンジョンは、素材集めや経験を積む場としてそのまま残されてある。中には犬のような二足歩行の魔物であるコボルトや、硬い甲殻を持つサソリ型の魔物であるアイアンスコルピオなど、それほど強くはないが素材として優秀な魔物のダンジョンはしっかり管理され、残されてある。
今回潜るのはコボルトやワーグなど、主に動物がベースになった魔物が多く生息するダンジョンだ。毛皮や牙等の素材が手に入り、また相手の集団戦に対応する練習にも最適な場所らしい。
俺が受けた依頼内容は、コボルトの毛皮収集。報酬は毛皮の状態と量でギルド側が算出する。さじ加減と言えばさじ加減なのだが、ゲームみたいに1枚何円と決められるような単純なものじゃないし、面積や量だけで報酬額を出してしまうと、極端な話、毛皮がボロボロで使いものにならないようなものでも、高級宿に並べていて違和感のないような綺麗な毛皮でも同じ額で取引ということになる。
まぁ、品質や量である程度の基準があるらしいし、めちゃくちゃぼったくられるようなことはないだろう。てか冒険者ギルドがそんなことしてたら信用無くすし流石にしないか。
受付嬢に説明された場所へと向かう、通り道の最中にも、石や鉄で厳重に入り口を塞がれた危険と思われるダンジョンがあったり、冒険者が多数潜っていく姿が見えるダンジョンがあったりしながら、俺達は目的のダンジョンへと到着する。
『コボルトの洞窟』と名付けられたそのダンジョンは、入口付近にギルド職員と思われる女性が立っていた。どうやら女性一人で案内をしても大丈夫なレベルで安全らしい。ダンジョン内は魔素に満ちており、一度入ると二度と出てこないと言っても過言ではないくらいに、コボルトにとっては過ごしやすい環境だ。
案内役のギルド職員に話しかける。
「あの、コボルトの依頼を受けたんですけど。」
「はいー、それならこちらがコボルトの洞窟になりますー。他のダンジョンに比べて比較的安全ですがー、気をつけて下さーい。」
その女性ギルド職員は軽い調子で喋る。ダンジョンが隣にあると言うのに全く怖くないのだろうか。この世界の女性は逞しい。
「ありがとうございます。貴女も気をつけてください。」
俺は何気なくそう言葉をかけてダンジョンに入った。リーニャとシロナがついてくる中、後ろから案内の女性から言葉が返ってくる。
「ありがとー。でも私Cランクだから大丈夫だよー。」
お母さん、この世界の女性はとっても逞しいです。




