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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
三章 助けるモンスターテイマー
55/104

49話 迷宮都市グリル

投稿が遅れました、すみません……

次週からは月更新へと戻ります。

 エマの町を出た時程ではないにしても、良くしてくれたヒロツグさんや『不屈の魂』メンバーや獅子の宿のエイラさん達に見送られながら、俺達『救命の志(ライフセイバー)』はアステニアを出発した。


 馬車の中でとりとめのない会話をしながら、次の都市「迷宮都市グリル」へと向かった。

 その名の通り、都市の付近にダンジョンが密集しており、数々の冒険者がダンジョンに潜っては成果を上げ、また夢半ばに散っていく。そういう場所だ。


 元々はダンジョン以外何もないような土地だったのが、冒険者がそこで活発に活動し、商人が出店を開き、軽い休憩所が仮設され、そういうのを繰り返してこの都市が出来上がったと聞いている。グリルと言う名前も、それに大きく関わった重要人物の名前から取られたものらしい。


 どうやら地形的にダンジョンの発生条件が整っているらしく、ダンジョンを潰しては新しいダンジョンが出来てを繰り返しているらしい。

 ダンジョンがあれば周囲の都民に被害が出るのだが、ほぼ無限にダンジョンが出現するお陰で冒険者家業に潤いをもたらし、また都市として成長したという、皮肉のようなサイクルで経済が回っている。


 アステニア程ではないが、それなりに高い外壁に囲まれた迷宮都市グリルは、外壁の要所要所に見張り台のような場所が設けられていた。

 どうやら見張りを立てているらしい、アステニア以上に周囲の魔物に対して警戒体制を取っていることが分かる。


 外壁の内側、見える範囲の建物は、全てがアステニアに比べて、利便性より耐久性を取ったような頑丈な作りをしているように見えた。

 外壁を破られた後の防波堤のような役割も持っているのかもしれない。


 門を通過する時、ギルドカードの提示をした際に門番からこの都市のルールを教わった。

 どうやら、まれにダンジョンから魔物が溢れて都市へと迫ってくることがあるらしい。その時には都市に警報が鳴り、都市内部にいるEランク以上の冒険者は魔物の迎撃に当たらねばならない。


 警告は東西南北にある4つの門付近にある鐘が鳴らされる。それぞれの音の高さが違い、それによって魔物の出現した方向を確認する。

 魔物の多さにより小、中、大と警報レベルが分かれており、小は1回、中は2回、大は3回の鐘が鳴る。警報レベルの段階によって、鐘が鳴った門から都市の中心までの範囲で数えて小は3分の1、中は3分の2、そして大は門から中心までの冒険者全員がその門へと向かう。


 つまり、魔物の迫ってくる方向と警報レベルによって、出動する冒険者の人数が決まるという仕組みだ。それを実現するためか、各門から中心に向かって、まるで鏡写しのように等間隔で宿屋が並べられていた。


 単純に考えれば、門に近ければ近いほど冒険者は魔物の迎撃に行く回数が増える訳だが、その代わりに迎撃に参加した冒険者には報酬が支払われる為、金を取るか安らぎを取るかはそれぞれのスタンスによる様な感じだ。

 元々冒険者をやる人達は腕っ節で金を稼ぎたい人が多いので、割りと外壁付近の宿屋が埋まることが多いらしい。


 俺達は混戦になった際に、シロナが誤って攻撃される可能性を危惧し、都市中心付近の宿を取ることにした。中心には冒険者ギルドもあるから便利だし。この都市の住民がシロナに慣れた頃なら門付近の宿を取っても良いかもしれない。



 さて、ここからはまた新しい都市。アステニアの時のように頼れる人はもう居ない。アステニアのギルドマスターであるレイフさんに連絡を取ることは出来るけど、直接どうこうっていうのは難しいだろう。まぁ、助言を貰えるだけでも大助かりだ。


 休憩を挟みつつと言えど、1日半程馬車に揺られた俺達は、今日は休憩を取ることにした。誰かがリバースするようなことはなかったが、念のためである。

 歩く度に、恒例のごとくシロナやリーニャに色々な視線を投げ掛けられつつ、宿の手続きを済ませた。


「ふぅ、やっと移動も終わったわね。」


 借りた部屋の中へ入ると、ベッドに腰掛けたリーニャがそう呟いた。支出を抑えるため、相も変わらず全員同じ部屋である。いつかは間違いが起こりそうな気がする、君ら不用心だぞ。いい加減ユウスケくんのユウスケくんも我慢の限界来ちゃうよ。


「それにしても、いい宿を借りる事が出来たなー。」


 煩悩を振り払うように話題を変える。

 ここに来てすぐ、アステニアで泊まった獅子の宿に勝るとも劣らぬ充実した宿を見つけた。ふかふかのベッド、豊富な食事メニュー、それに加えて風呂付きだ。最近はしっかり風呂も完備した宿は多いらしい。やはり汚れやすい冒険者からの要望が多いのだろうか。


「ちょっと部屋で休憩したら、ご飯を食べた後に歩かない? ある程度何処に何があるか把握しておきたいわ。」


 ゴトゴト揺れる馬車からおりて間もないと思えないくらいリーニャは元気だ。あれに参っているのは俺だけなのか? 見ればシロナもいつも通りぼーっとしている。

 まぁ、いいか。ゴロゴロしててもやることないし、リーニャについて行って散歩しよう。


「そうしようか。ここの人達にもシロナに早く慣れて欲しいしな。」


 アステニアの時みたいにアイドルのような存在になれとは言わないけど、歩いていても違和感を感じないくらいになっておきたい。歩く度に変な視線を向けられたり絡まれたりするのは懲り懲りだし。

 嫌なイベントは早めに消化するに限る。




 荷物を置いたりゴロゴロしたりした俺達は、この宿『ふぇんりる』で食事を取って行くことにした。


 ……そうなんです、『ふぇんりる』なんて攻めた名前をしたこの宿。僕らが泊まってる宿なんですね。なんかここのオーナーのケイラスさんがめちゃくちゃ負けず嫌いらしく、地上で一番強いのは三大厄災の一つであるフェンリル、つまり、世界で一番の宿になりたいと言う思いからその名前をつけたんだとか。


 そんでそのケイラスさんの娘であるスティエちゃん。歳は見た目12歳位、シロナと同じくらいだな。水色セミロングの髪を後ろで軽く束ねている。オーナーの性格を全く継がなかったようで、恥ずかしがり屋で大人しい子だ。


「……」


 そう、恥ずかしがり屋で大人しいが為に、料理を俺の机まで持ってきてくれないのだ。


「ほら、早く持っていきなさい。」


「……うん。」


 ケイラスさんがスティエちゃんを勇気づけることで、料理を運んできてくれた。


「こ、これ……」


 恐る恐る料理を机の上に置くスティエちゃん。何だか微笑ましい。こういうタイプの子はお礼を言われると、次からの行動に自身がつくのだ。という自論。


「うん、ありがとう。」


 これ以上ないくらいの笑顔でスティエちゃんにお礼の言葉をかける。これでスティエちゃんも笑顔になって、見違えるくらいにテキパキ動けるようになる筈だ。

 そう思っていたんだけど、スティエちゃんは風のように厨房へと逃げ帰ってしまった。


「怖がらせたんじゃない?」


 おいリーニャ、そんなわけ無いだろう。超絶紳士の笑顔だぞ。……え? 違うよね? 俺のせいじゃないよね?

 厨房に視線を向けると、厨房からチラチラとこちらを覗くスティエちゃんの顔があった。


「いや、すまんね。どうも人見知りなもんで。」


 ケイラスさんがこちらに寄ってきて、そう謝った。


「いえいえ、大丈夫です。」


 人見知りの気持ちは痛いほど分かる。前の世界ではリア充と俺達で壁があったから、絶対話なんかできなかったし。初めて会う人とか絶対会話できる気がしない。

 でもこっちの世界では何か知らないけど誰とでも話せるんだよな。


「そこのハーピィちゃんの事が、どうも気になってるみたいなんだよ。」


 歳の近い友達が少ないからな、と頭をかきながらケイラスさんは言う。

 ケイラスさんのその言葉が聞こえたのか、スティエちゃんは顔を引っ込めてしまった。


 ケイラスさんは、俺がシロナを連れて宿に入った時、最初こそは驚いてたみたいだけど、割りと順応が早かった。

 むしろ「人型を泊めた宿はここが初めてだろう。」とか言って喜んでいた。世界一の宿を目指すだけあって、話題作りや実績には貪欲らしい。人型を初めて泊めたのは獅子の宿ですとは言えなかった。


 スティエちゃんもその血を引いているのか、シロナを特別避けるような雰囲気はない。ケイラスさんの話を聞く限りでは、むしろ興味があるみたいだし、友達になってくれたら良いんだけどね。


 シロナはそんな話にはあまり興味がないのか、それとも目の前に食べ物がある時はそれしか目に入らないのか、食パンではないパンに野菜を挟んだサンドイッチを頬張っていた。


「ん! おいしい!」


 シロナも食べ始めたことだし、俺もサンドイッチを口に運ぶ。シンプルなサンドイッチにも関わらず瑞々しい野菜は味が濃く、少しトロッとした甘酸っぱいドレッシングがそれを引き立てていた。


「うまいなこれ。」


「うん、美味しいわね。」


 俺に続いてリーニャも舌鼓を打つ。その横ではシロナが一皿目を平らげ、立ち上がってお皿を天高くに突き上げていた。


「んーーー!!」


 口をもきゅもきゅと動かしながら歓喜の声を上げるシロナ。俺とリーニャは見慣れたものだけど、他の人達は何事かとこちらに視線を向ける。

 元々こちらをチラチラ伺っていた冒険者らしき人達も、盗み見る行為を忘れたのかガン見に切り替わっていた。


「ははは、ケイラスさん、シロナにおかわり貰えますか? 随分気に入ったみたいなので。」


 唖然とシロナを見ていたケイラスさんは、俺の声でハッとしたのか、スティエちゃんに声を掛けた。


「おいスティエ。お前の作ったサンドイッチのおかわりが欲しいんだってよ。」


 ケイラスさんのそれを聞いて、スティエちゃんは嬉しそうに厨房の奥へと走っていく。


「スティエちゃんが作ってたんですか? 凄いですね。」


「あぁ、まぁこれは簡単なもんだからな。スティエはこれ以外にも沢山料理が出来るぞ。将来料理人になりたいみたいだからな。」


 ケイラスさんは自慢げにそう話した。娘が夢を持っている事とか、その夢に一直線に努力してる事とか、それを誰かに誉められる事とか、すごく嬉しいんだろう。


 スティエちゃんが新しいサンドイッチを持って厨房から出てくる。先程とは違い、小走りでこちらに駆け寄ってくる。シロナに美味しいって言われたのが嬉しかったんだろう。

 しかし、舞い上がっていたのか、スティエちゃんはつまづいて転けそうになった。


「あっ!」


「危ない!」


 ケイラスさんが咄嗟にスティエちゃんを支える。そのお陰でスティエちゃんは地面との衝突を免れたが、サンドイッチを乗せた皿が手から離れて宙を舞う。

 しかし、皿もサンドイッチも地面に落ちることはなかった。


「危ないところでしたね。」


 20代で黒髪ショートの女性が、宙に舞った皿を手に取り、サンドイッチを受け止めていた。

 その女性は、優雅な仕草でサンドイッチを俺の机へと運ぶ。


「あ、どうも……」


 呆気にとられていた俺は、やっとの事でそう言葉を絞り出した。

 その様子を見てか、その女性はふふっと笑い、俺に話しかけてきた。


「白いハーピィを連れておられると言うことは、貴方がユウスケ様ですか?」


「え、あ、はい。そうです。」


「初めまして、私はエールと申します。」


 エールは礼儀正しく深々と一礼する。つられて俺達も深々と頭を下げた。俺達よりも後に頭を上げたエールは、言葉を続けた。


「このグリルの冒険者ギルドの副ギルドマスターをやっております。ユウスケ様、そしてその御一行様。ギルドマスターがお呼びで御座います。時間は宜しいでしょうか?」



 その言葉を聞いた周りの冒険者も、俺達も、固まった。

 ある人は「あいつは何者だ?」と、ある人は「何をやらかしたんだ?」と。


 そして俺は、また面倒事が起こりそうだと思いながら、早々に食事を終え、エールに案内されるがままに冒険者ギルドへと向かうことになった。

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