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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
三章 助けるモンスターテイマー
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48話 隣の鍛冶屋

ちょっと短めです。

~ アステニア ユウスケ視点 ~



 レイフさんへの挨拶も終わり、レイフさんからマジックアイテムを貰った後、宿に戻って最後の支度をしようとしていた。

 エマの町と比べて滞在期間も長かった為か、もう自分の故郷のように慣れ親しんだいつもの道を歩きながら、この景色ともそろそろお別れなんだなと思うと少し寂しくなってくる。


 ……こともなかった。


 正直、今の俺の脳内には今ここを去る寂しさより、新しい世界への期待の方が大きかった。

 新しい世界というか、何というか。


 とにかく、Dランクになった実感が今更込み上げてきたというのもあり、俺の夢だったモン娘ハーレムにまた一つ近づいたんだと思うと、そりゃもうテンションも上がるわけで。


 あ、誤解のないように一つ言っておくけど、俺はハーレムを諦めた訳ではない。

 モン娘達を助けて回りたいのは事実だし、そこから俺達に付いてきてくれる娘だけを誘うというのも間違ってない。

 そういう娘達が周りに集まれば、いずれはハーレムになるだろうという算段なだけだ。


 最近シリアスなイベントばかり起こっていたので中々大変だったが、やっとほのぼのとした生活に戻れると思うと安心するな。


 そんな事を思いつつ宿に向かっている途中、宿の隣、武器屋の前に厳ついオッサンが立っていた。

 厳つさレベルで言えば、アルダンを大きく上回るかも知れない。パッと見て、あぁ典型的な頑固おやじだなと思う程だ。

 そう言えば俺はあんまり気にしてなかったけど、この獅子の宿が不人気だった理由って、隣の鍛冶屋が早朝から煩いから……だったよな。

 つまり、このオッサンが早朝からカンカン鉄を叩いているってことか。まぁ、やりそう。

 でも見た目怖いし絡まれたらめんどそうだから、スルーして宿に戻ろう。


 リーニャとシロナ相手に他愛のない話を振り、オッサンに目を合わせないように通り過ぎようとする。しかし、その目論見は失敗に終わるのだった。


「おい。」


 オッサンの丁度目の前に差し掛かった時、オッサンが誰かを呼んだ。

 いや、誰を呼んだのかくらい分かってますよ。ここに居るのって俺とリーニャとシロナしか居ないわけで……


 いや、しかし俺達が何かしたか? なんで声をかけられるんだ? そろそろ町を出るというのに、こんなところでまた問題が起きるのか? ……それは嫌だな。穏便に済ませたい。


「はい、何ですか?」


 なるべく棘の無いように、目を付けられないように、穏便に、穏便に。


「お前がユウスケと言うヤツか?」


「そうです。」


 恐る恐る答えると、オッサンはギロリとこちらを睨み。


「ちょっと、付いてきてくれるか?」


俺達を店の中に招き入れた。



「うわぁ……凄いな。」


 鍛冶屋の中は素人目に見ても品質の良い武具が並んでおり、それに似つかわしくない家庭用品――というよりは調理器具の様なもの――も幾つか並んでいた。

 頑固で気に入った人にしか物を作らないって聞いてたけど、逆に気に入れば家庭用品なんかも作るんだろうか。


「……」


 やばい、キョロキョロしてたからかおっさんがこっち見てる。リーニャもシロナもちょっと緊張しているようだ。

 どうしようか考えていると、オッサンがとんでもないことを言い始めた。


「おい、武器を構えろ。」


「……え?」


 オッサンは、俺の方を見ながら立っている。


「武器を構えろ。」


 有無を言わさぬ迫力に、俺は武器を構えてしまった。

 戦うつもりはないのに、どうすればいいんだ。

 そもそも、このオッサンは何故俺にそんなことを言うんだ? どこで恨みを買った? 身体がガチガチに緊張して固まる。


 頭の中でぐるぐる思考が巡っていると、オッサンは続けて俺に言った。


「ちょっと振ってみろ。」


 ……振ってみろ? 素振りをしろってことか?

 なんだ、フォームを見たいだけか……助かった……

 戦うわけではないとわかった俺は、緊張が解けていつもの調子で素振りを始めた。

 まぁ、いつも素振りをしているわけじゃないけど。


 素振りを十数回したら、オッサンは俺に静止をかけた。俺が振るのを止めると、工房の奥へと入っていき、何か漁る音が聞こえた後、一本の剣を引っさげて戻ってきた。


 俺はそれを渡され、もう一度振ってみろと言われた。振ってみると。


「うわ、振りやすい。」


 アルダンに教わった重心の動かし方、まぁ俺が俺なりの解釈をしてやってるだけだけど、アルダンに渡された麻痺剣より、この剣の方がスッキリ動く。


 「動きは荒いが、まぁ悪くねぇ。やっぱり戦士と比べて力がねぇから、適度な軽さのほうが良さそうだな。」


オッサンはいきなりそう言うと、また工房の奥へと消えていった。


「な、何なんだ?」


 俺はリーニャとシロナへ視線を向けるが、二人とも首を横に振る。俺と同じで何故こうなったか、そしてその目的も分からないようだ。

 少ししてオッサンはまた戻ってきた。今度は最初に俺に渡した剣よりよっぽど重そうな剣だ。どうやらこれもまた俺に振ってくれという事らしい。


 俺はその剣を受け取る。手にした感想は、今さっきの剣とそれ程重さが変わらないという事と、恐らくめちゃくちゃ効果が良いという事だ。

 鑑定眼を持っている訳ではないが、何となく、本当に何となくそう思った。


「やる、選別だ。」


「えっ、これをですか?」


 オッサンは見ず知らずの俺に、突然この剣をくれると言った。気に入られるような覚えも全く無いし、ただで貰うというのも気が引ける。


「あの、何で俺に? それと、この剣ってかなり良い物なんじゃ……」


 俺がそう言った直後、後ろ、店の入口の方から声がした。


「おーいガランド。今仕事中かい? って、おや、ユウスケ?」


 入ってきたのは、獅子の宿の女将であるエイラさんだった。



「そうなんだよ、ガランドはあたしの夫さ。宿が赤字でもやれていたのは、この頑固親父が稼いでるからなんだよ。」


 エイラさんは、厳つい顔のガランドさんの頭をペシペシと叩きながら俺に紹介した。

 ガランドさんはこの工房を使って、武器や防具、それと金物の日用品を作っているらしい。気に入った冒険者にしか武器を作らないと言っていたが、その冒険者達からはその鍛冶の腕を信頼され、高めの値段でも快く購入してくれるんだとか。

 まぁ、高めの値段と言っても、品質が良いから気にならないんだろうね。


 それでそのガランドさんが何故俺に武器をくれるのか、それは獅子の宿に泊まったのもそうだし、何より獅子の宿を賑わせたからなんだと。

 別に俺が賑わせたわけじゃないんだけど、ガランドさんは上機嫌で俺に武器の性能についてあれこれ説明してくれてるし、受け取らない訳にはいかない。


 貰った武器は、アルダンから貰った剣みたいに特別な効果こそついていないが、切れ味、頑丈さ、そして使いやすさ。どれを取っても俺にとっては最高級の武器だ。


「ありがとうございます。」


 俺は深々と頭を下げた。ただで貰うのは気が引けたが、その分は宿で稼いだとまで言われたら断る方が失礼だろう。だから感謝の気持ちを最大限に伝えることにした。


 エイラさんは笑って、ガランドさんは満足そうな笑みで頷いた。



 エイラさんの用事も終わり、俺達は獅子の宿へと戻った。部屋に戻り支度をする。

 次に行く都市はもう決めてある。ここから馬車で1日半って所の都市だ。


 俺達は、まだモン娘たちの力になる程のレベルがない。それなら、早く力を付けなければならない。手っ取り早く力をつける方法なんてないが、それでも普通にやるより期待できる方法があった。

 それは、ダンジョンに潜ることだ。


 俺達は次、周辺にダンジョンが多数存在する、迷宮都市グリルへと向かう。


 ダンジョンと言うのは、星の中心から漏れ出す魔力――ヒロツグさん曰く魔素――が地中の空洞や空間に溜まり、それが何らかの理由で繋がって出来た巨大な道らしい。

 壁一面は魔素を吸収したからか硬質なものへと変化しており、硬質に変化してからは魔素を吸収できなくなるので、吸収されなくなった魔素が自然と地上に流れ出る。

 魔素が地上に流れれば、それを目当てに魔物が中に寄っていき、ダンジョンの中に住み始めるという訳だ。

 

 ダンジョンの中には魔素が充満しており、ヒロツグさんの仮説が正しければ魔物は殆ど食事を行うこと無く生きることが出来る。魔素を摂取して成長した魔物は浅い階じゃ満足できなくなり、深くに潜っていく。

 そうして、段階的に強くなっていくダンジョンが出来上がっている訳だ。山の話と同じだな。

 

 ダンジョンの奥には魔素を多く含んだ鉱石が多い為、それを目当てにダンジョンに潜る冒険者も多い。売っても金になるし、装備の材料にも出来る。魔物も段階的に強くなっていく為、自分の引き際も見定めやすい。


 一つ悪いことがあるとすれば、そういうダンジョンと呼ばれているものはコアを壊せばクリアなんてもんじゃなく、魔素の漏れを絶つ、とか、そういうその手のプロに任せないと出来ないような作業をしなければ、永遠にダンジョンとして動き続けるのだ。最奥まで行っても、品質の良い鉱石が見つかるだけだろう。


 そのダンジョンに関連する依頼を受けつつ、ダンジョンを攻略していく。俺達はより強くなり、ランクを上げる。ランクが上がれば近場の、モン娘達の集落へ足を運んでみるつもりだ。


 待っていろよダンジョン、そして新たなモン娘。



 俺は意気揚々と歩き始めた。

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