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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
三章 助けるモンスターテイマー
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47話 旅立つにあたって

~ アステニア ユウスケ視点 ~



 あの影の騒動からおよそ半年程、アステニアで地道に依頼を受けていた俺達は、漸くDランクへと昇級することが出来た。

 毎日2つ程の依頼をこなし、週休二日を心がけたホワイトな冒険者パーティの俺達は、Dランクの昇級祝いとしてまたもや『不屈の魂』にお祝いパーティを開いてもらった訳だ。


 2度もパーティを開いてもらうなんて申し訳ないと思ったんだけど、『不屈の魂』のメンバーはどうやらそういうのが好きらしく、その時の楽しみを共有できればパーティ程度の奢りなんて安いもんだとか言っていた。

 こういうパーティよりも、武器や防具を揃えるほうが金が掛かるだとかもポロリと零していた。


 ガウンとウィリスが飲み比べ勝負をしてたり、ヒューマがそれを眺めていたり、ロロップやその他女性冒険者がシロナに集っていたり、酒を飲んだリーニャに絡まれたり色々あったが、楽しいパーティだった。


 それが5日前のことだ。


 俺、リーニャ、シロナの3人からなるパーティ『救命の志(ライフセイバー)』は、アステニアのギルドマスターであるレイフさんの元へと向かっていた。


 理由の一つは、そろそろここを旅立つ予定で、今まで良くしてくれたお礼を一言伝える為だ。

 本来はそんな用事じゃ会うことは出来ないんだろうけど、どうやらレイフさんは俺の事を気にかけてくれているみたいで、快く面会の許可をもらった。


 獅子の宿の女将さんであるエイラさんにも旅立つことを伝えてあるし、大食い大会やらなんやらで色々迷惑をかけたことも合わせてお礼を伝えた。


 エイラさんは笑いながら「迷惑だなんてとんでもない」と言ってくれた。シロナの大食い大会やらなんやらで有名になってしまった獅子の宿は、冒険者の出入りもそれなりに増えたらしい。

 そのお目当ては大体シロナだったのだが、エイラさんがその冒険者達にここで食べていくかと声を掛けたことをキッカケに、ここしばらくで飲食店のような状態になっていた。

 料理の美味さもあり、シロナのこともあり、クチコミは瞬く間に広がっていき、俺達……というかシロナが食事をとる朝と夕方頃に人が集まりだしたのだ。


 暇だった宿の経営に賑わいが見え始め、エイラさんも従業員さんもそこそこ黒字になっているらしい。

 泊まりの冒険者こそ少ないが、飲食代だけでも稼ぎが増えたのは俺達のお陰だと。そんなつもりは全くなかったんだけど、感謝されるっていうのは悪くない気分だ。


 しかし今までどうやって経営していたのか疑問だな……


 それで、俺がリーニャとシロナにこれから俺がやっていきたいことを伝えた数日後。俺達は一度レイフさんの元へ出向いていた。

 人型の手助けをして、好意による仲間の募集を行うと言う俺の旅の目的を、一度レイフさんへと伝えに行く為だ。


 藪をつついて蛇を出すような俺の行動は、ハイリスクであってもハイリターンとは言えないような内容だ。

 俺一人が人型の手伝いをしたところでどうにもならないし、怒りを買う可能性だってある。

 それでも俺がそう決めた以上、やり遂げたいのが正直な思いだ。


その前に、この世界をよく知る人物に相談したかった。

 やってはいけないのか、やるとして、どう立ち回ればいいのか。

 もし可能なら、ある程度の支援も……とか。まぁ、可能ならだ。


 恐らくそんなハイリスクな事はやるなと言われるとばかり思っていた俺は、レイフさんから出てきた言葉に少し驚いた。

 説明を受けている間は少し眉をひそめていたが、説明が終わって考え込むような動作の後、条件有りでならと言ってもらえたのだ。


 一つは、その人型と対峙できるレベルまでランクを上げること。

 ピンキリとは言え、基本的にはCランク以上、目撃情報を頼りにBかAかを判断し、それ程の力をつける。

 もしくは助っ人を雇って戦力的に同等かそれ以上をキープしておかないと、もしもの時に不利だし、なめられて会話すら出来ない可能性があるという事らしい。


 一つは、しっかりした武装をして行くこと。

 話が通じるとは限らないので、自分の身を守る術がない状態で対峙するのは非常に危険だという事だ。


 一つは、話が通じないと判断した時はためらわずに剣を振るうこと。

 殺せまでは言わないが、無抵抗で死ぬことだけは避けるようにと。


 そして最後の一つは、ギルドマスターのレイフさんから送られるマジックアイテムを、常に身につけておく事。


 今日レイフさんの元へ向かう、もう一つの理由はこのマジックアイテムを受け取りに行く為だ。



 いやしかし、ギルドマスターからマジックアイテムを受け渡されるなんて、かなりレアな事じゃないだろうか。

 そもそも何千何万と存在する冒険者の一人を気にすることなんて早々ないだろうし、気にかけてもらえるだけでもほぼ奇跡に等しいというのに。

 まぁ、これも恐らくヒロツグさんのお陰だ。ヒロツグさんのネームバリューのお陰で俺にも恩恵が頂けているのだ。


 そのヒロツグさんにも、今回の件で一つ謝罪をしてある。

 ヒロツグさんの研究を手伝う内容の中で、レイやシロナを研究対象として貸すという話。

 ヒロツグさんには申し訳なかったんだけど、俺達が落ち着いた後で、レイやシロナの同意を取ってからという話にしてもらった。

 それまでは俺だけが強引に話を進めていたが、本来は本人の意思を尊重するべきだ。レイはまだうっすらとしか分からないが、シロナからはハッキリと意思を受け取ることが出来る。

 シロナが嫌だと言えばダメだし、良いと言えば数日ヒロツグさんの元へ泊まってもらう。


 ヒロツグさんとはテイム支援の際に口約束とは言え、貸し出すという約束を交わしているので、それを破ることになる。俺は地面に頭を擦り付けるような土下座をかましながらヒロツグさんに謝った。


 ヒロツグさんは一瞬キョトンとした後、笑いながらその条件をのんでくれた。「ユウスケくんらしいね」だってさ。

 実際にシロナをテイムした時にもある程度調べられたらしく、そのデータを何とかかんとかって言っていた。

 専門的なことは分からないが、研究テーマの一つだと言っていた、説得によるテイムの受け入れについては充分なデータが取れたってことだろうか。


 ヒロツグさんには、今後仲間になった人型達を連れて一度アステニアに戻ってくることは伝えた。ヒロツグさんは、その時に仲良くなれるように努力するよとか笑いながら言ってくれた。底なしのお人好しなんじゃなかろうか。


 あれだけヒロツグさんを警戒していたリーニャも、最近になって解けてきている。リーニャ曰く「あんな格好の人は十中八九危ない人だから警戒していた。」という話だった。ちょっと笑いを堪えきれなくて口から漏れた。




「ギルドマスターにですか……? 少々お待ち下さい。確認してきます。」


 冒険者ギルドに到着し、受付嬢の一人に声をかけると、奥へと消えていき、数分立って戻ってきた。この受付嬢さんが部屋まで案内してくれるみたいだ。

 一度来てるから位置はわかるんだけど、多分そういうことじゃないんだろうな。俺達が堂々と入っていっちゃうのが多分マズい。


 部屋に到着すると、中へと案内された。ここは応接室のような場所だ。恐らくレイフさんは仕事が一段落ついた頃にこっちに来る。それまでは適当に座って時間を潰す事になる。


 先程の受付嬢が飲み物を持ってきてくれた数分後、レイフさんが何かを持って部屋へと入ってきた。その後ろには、現在副ギルドマスターとなったルドルフさんという人も居た。


「ごめんごめん、少し忙しかったものだから。長く待たせてしまったね。」


「いえいえ、こちらこそお忙しいところありがとうございます。」


 レイフさんは向かいのソファに腰掛けて、話し始めた。


「さて、申し訳ないけど早速本題へと入らせてもらうよ。今回渡したいのは、このマジックアイテムだ。」


 そう言って取り出したのは、指輪のようなものだった。どんな効果なのかは聞いていないので、ここで初めて聞くことになる。


「これは、通話用のマジックアイテムだ。とは言っても簡易版だから、そう長く話せるわけじゃないけど。」


「通話用……ですか?」


「うん、君が何か危険な状態になった時や、判断に困った時は、それを使ってこちらに通信してきて欲しい。こちらでは、僕かルドルフが必ず持っているようにする。通話の内容を聞いたら、こちらも動ける範囲で動くし、助言できる範囲で助言するよ。」


 何ともありがたい申し出だった。ていうか、一端の冒険者にそんなもの渡して大丈夫なのか? 効果を聞く限りではかなり有用なマジックアイテムだし、絶対高価だ。

 それでもそれを俺に授けてくれるということは、俺に期待してくれているのか、それともヒロツグさんのネームバリューか。どちらにしても、いざという時のこういうアイテムは本当に助かる。


「ありがとうございます!」


 レイフさんは笑って頷いた。


 そう言えば、一つ気になることがあったので、それも聞いておこう。


「そう言えば、あの後スクリーマーってどうなったんですか?」


 ニーアとレンノエが、影騒動の後にスクリーマーを討伐してくると言って森の奥へと消えていった後、俺達は何の情報も聞いていなかった。

 少し噂になっていたのは、スクリーマーは居なくなったという話だけだ。まぁ、その噂を聞けばもう討伐されたと言ってるようなもんだけど。


 だけど、俺の予想とは違い、レイフさんは苦い顔をしていた。


「ど、どうしたんですか?」


 俺の問に、レイフさんは苦い表情のまま答えた。


「ニーアとレンノエは戻ってきたよ。ニーアはボロボロになって、レンノエがギリギリの状態で担いで帰ってきたんだ。」


 その言葉を聞いて、俺もリーニャも凍りついた。あんなに強かったあの二人が、そんなにボロボロになって戻ってくるとは想像もつかない。


「でも、勝ったんですよね? スクリーマーはもう居なくなったと噂されていますし。」


「そうだね、居なくなったよ。だけどそれはこの近域からの話だ。つまり、討伐は失敗。スクリーマーは拠点を移し、消息不明だ。」


 スクリーマーは拠点を移して消息不明。つまり、近域から居なくなっただけで、少し足を伸ばせばその危険があるということだ。しかもあの極めし者二人を退ける力を持っているということは、恐らく。


「戦闘力はSランク、ですか……」


「そうだね、間違いない。三大厄災と同じレベルと考えていいだろう。」


 三大厄災。詳しくは知らないけど、聞いたことある。図書室で魔物を調べていた時に目にした、空、陸、海の覇者と呼ばれる、最強最悪の魔物達のことだ。


 空の覇者、ケツァルコアトル。

 陸の覇者、フェンリル。

 海の覇者、リヴァイアサン。


 それぞれは、決まったテリトリーを持っておらず、空、陸、海という広大な範囲を移動しながら生活している。

 気まぐれに殺し、気まぐれに生かし、戦闘力は推定Sランク。まともに戦える人間は居ないと見ていい。遭遇したら、神に祈りながら逃げるしか無いくらいの、まさに天災といえる存在だ。


「拠点を移す、ずば抜けて高い戦闘能力、捕食する為でもないのに冒険者を呼び寄せて殺す。特徴を取って考えて、スクリーマーは新しい厄災の一つと数えていい。」


 そんな戦闘力Sランクの魔物が、突然アステニアの付近に生まれた。

 そんなの、恐怖しか無い。


「だから討伐任務は撤回だ。対処も厄災と同じく、相手をしない、逃げる。早急に各国に情報を回す必要があるね。今は国王の元に情報を伝えているところだよ。」


 そう言うとレイフさんは紅茶を一口飲むと、更に頭を抱えて話しを続けた。


「しかも、今回の厄災は困ったことに人型らしくてね、随分頭も回ると考えていい。つまり、今までの三大厄災より脅威である可能性が高い。」


「人型……ですか?」


「あぁ、ニーアはまだ目覚めていないから話を聞けていないけど、レンノエの話によると、黒く尖った鱗のようなものに覆われた腕、鋭い爪、刺々しい尻尾、それ以外はただの少女にしか見えない外見だったらしい。」


 レイフさんがレンノエから聞いた話は、壮絶なものだった。


 ニーアとレンノエが声のした方向へと向かうと、そこはハスタさんが倒した影の下っ端や元リーダーのグラッドが倒れている場所だった。

 その中の一人、もう首を切られて動かなくなった下っ端の死体を抱きかかえるように、スクリーマーは座っていた。


 スクリーマーは、心地の良いメロディーを、聞いたことのない言語で歌いながら、まるで赤ちゃんをあやすようにしていた。その光景に、言いようのないおぞましさを感じたという。


 ニーアとレンノエが戦闘準備に入ると、スクリーマーも立ち上がった。その時にどの様な会話をしたのか詳細には覚えていないが、スクリーマーは「私は、魔物だから。」とか言って攻撃を仕掛けてきたらしい。


 そこから、圧倒的な力でスクリーマーはニーアをボロボロにし、レンノエは命からがらニーアを担いで帰還したということだった。


「関わらないほうがいい。間違いなく。」


 レイフさんはそう言うと、この話を終えた。


 話を聞く限り、スクリーマーは対話出来るような存在ではない。少なくとも、俺はそう感じた。関わらないのには大賛成だ。


「さて、そろそろ仕事に戻るよ。ユウスケくん、次の町に行っても今のまま、慎重に冒険者を続けてくれ。優秀な冒険者が増えるのは、とても良いことだから。」


 そう言うと、レイフさんとルドルフさんは、執務室へと戻っていった。


「俺達も、一旦獅子の宿に戻ろうか。荷物をまとめて、出る準備をしとこう。」


 そう言うと、俺達は冒険者ギルドを後にした。




~ アステニア冒険者ギルド 第三者視点 ~




 ユウスケが冒険者ギルドを去った後、執務室ではレイフとルドルフが険しい顔をしていた。

 それは、ユウスケ達に対するある懸念のせいだった。


「ルドルフ、君は彼のことどう思う?」


 レイフがルドルフに質問を投げかける。その質問は、冒険者としてではなく、別の意味での質問だった。


「すみませんが、私には何とも……」


 ルドルフはレイフに対し、そう曖昧に答える。あれだけのやり取りで判断するのは難しかったからだった。


「……僕はね、彼は物凄く危険な人物の一人だと思うんだよ。」


 レイフはルドルフに、自分の見解を話し始めた。


「彼の旅の目的、人型の手伝いとその好意による協力体制の構築。表面的には聞こえのいい物だけど、その協力的な感情が人間全体に及ぶとは考えにくい。成功しても、彼との信頼、彼との協力体制を作り上げるだけだ。」


「……それはつまり、旅が成功した場合、彼個人がそれ程の戦力を抱えることになるということですか?」


「そうだね。彼一人が、声をかけるだけで国家レベルの戦力を動かせるようになる可能性も、無いとはいえない。事実彼はハーピィを仲間に引き入れているね、それも説得でのテイムらしいじゃないか。可能性がゼロだとは断言できない。その上で、彼が僕らに対して反旗を翻すような対応をした時、どうなると思う?」


 ルドルフはその言葉を聞いて、その光景を頭に浮かべる。ユウスケが声を上げれば、大勢の人型達がユウスケの周りに集う光景を。人型を引き連れて歩く様子を。想像したルドルフは、冷や汗をかく。


「……まるで、魔王ですね。」


「そうだね、凄く恐ろしいでしょ?」


レイフの言葉に、ルドルフは頷くことしか出来ない。


「しかし、どうするんですか?」


「うん、彼が変な気を起こさないように、早い段階から僕達が彼を仲間に引き入れておくべきだね。恩をなるべく着せて、自分の陣営に入れてしまえば脅威は戦力へと変わる。それと、各国のギルドマスターには、彼をなるべく刺激しないようにと、なるべく便宜べんぎを図って貰うように通信を入れておくつもりだよ。」


「……では、あのマジックアイテムは?」


 ルドルフが、ユウスケに渡したマジックアイテムについてレイフに尋ねる。それは、効果を知らないわけではなく、寧ろ知っているからこその質問だった。

 何故なら、あのマジックアイテムの本当の狙いは、通話をすることではないからだ。


「監視用だよ。あの指輪を伝って、彼の情報をこちらが常に監視しておく必要がある。もちろん彼は説明通りの使用方法で僕らに通話してくるだろうし、それに答えることで彼の信頼も手に入る。彼の行動を監視することで僕らの(・・・)危険をいち早く察知することも出来る。もし変な行動を取ったりすれば……」


 レイフは、一呼吸の間を置いて、言った。


「その時は、殺してしまうしかないね。」


 その言葉を放ったレイフの瞳は、とても冷淡なものだった。



 そんな会話が執務室で行われていることを、ユウスケ達は知らないまま。

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