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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
二章 旅立ち、悩むモンスターテイマー
44/104

40話 昇級条件その1-3

前回のあらすじ


 長時間森を歩き回り、ついにウグバゴに遭遇したユウスケ達。

 ウグバゴの口から吐き出された毒玉は、予想を超えた質量と毒性を持っていた。

 『救命の志(ライフセイバー)』は、これより危険な戦闘へと挑む。



---------------------------------------



~ 冒険者ギルド 執務室 ~


 静寂の中、黙々と書類の山を片付けていたのはアステニアの冒険者ギルドでギルドマスターをしているレイフ。

 ある少年が白いハーピィをテイムしたという信じられない出来事から数日立った今、彼の前に積み重なるのはスクリーマーの情報や誘拐事件の被害状況だった。


「はぁ、スクリーマーは分かるけど、誘拐事件まで僕が処理しないといけないのは何でなんだろうね。」


 自分以外誰もいない部屋にポツリとぼやく。

 実際、誘拐事件の処理は冒険者ギルドの仕事ではないのだが、彼は能力の高さ故に、依頼と言う形で請け負うことになっていた。

 義務ではないので断ることも出来たのだが、人の良さが災いした結果だと言える。


 国王からの口添えがあったと言うのも、断れない要因の一つではあるだろうが。


 そんな溜め息が充満した部屋に、慌ただしい足音が聞こえてくる。

 なんだか覚えのある光景にレイフはまたもや溜め息を吐きつつ、ドアのノックを待つ。


 数秒後、大きめの音で扉がノックされた。


「レイフさん! 報告があります!」


「いいよ、入って。」


 扉を開けた男は、以前ヒロツグの手紙を持ってきた管理者の男だ。

 彼の名はルドルフ。レイフに続き管理能力と判断力の優れた、実質副ギルドマスターだ。

 今はとある理由で副ギルドマスターにはなれないが。


「どうしたの? またヒロツグから何か?」


「いえ、奴等の尻尾を掴めました。」


「……続けて。」


 レイフとルドルフの会話で奴等と言えば、示す内容はただ一つだった。


「連続誘拐の黒幕ですが、『影』と呼ばれている集団で間違いないです。」


 それを聞いて、レイフは驚いたような表情になる。

 影と言えば、護衛を雇っていない商人をたまに襲う程度の盗賊だったとレイフは記憶していた。

 襲われた商人の証言で何回か摘発したことがあったくらいの、どちらかと言えば細々とした集団。

 被害も死人などは絶対に出さず物品だけにとどまり、危険度はそれほどでもないと認識していた。


「影? それって盗賊の?」


「はい、以前はリーダーを勤めていたのが元Dランク冒険者のグラッドでしたが、今はリーダーが代わっているようです。」


「それは誰か分かる?」


「いえ、そこまでは……ただ、今は活動方針が大きく変わり、商人の馬車等を襲うのをやめて、主に若い冒険者や女性を神経毒などで捕らえ、奴隷商人に卸しているようです。」


その報告を聞き、レイフは思案顔になる。

リーダーが代わってから、大胆な活動方針の変更。

だと言うのに今まで何の痕跡も残さず活動を行っていたのだ。

今回リーダーに成り上がった奴は相当立ち回りが上手い。何か痕跡を残したと感づかれたら、すぐにでも撤退や解散などしてまるごと姿をくらます可能性が高いとレイフは踏んだ。


「ちなみに、その情報源は?」


「はい、影のメンバーの一人を捕らえることに成功しまして。物的証拠や証言、それと本人を尋問した際に。」


「へぇ、そういう連中は口が固いものだと思っていたけど。」


「はい。ヒロツグにも協力して貰ったのですが、ヒロツグが目の前で新しいマジックアイテムの効果を試したいと零した瞬間に。」


「あぁ……なるほど。」


 その言葉を聞き、レイフは納得した。

 世界的に有名と言っても良いヒロツグが、尋問の最中に新しいマジックアイテムの効果を試したいと言う。

 ヒロツグがどんな意図で言ったにしろ、それを聞いた方は尋問の道具だと思うだろう。


 それの試作。


 調整も何もされていない、試作。


「恐ろしい脅し文句だね。」


「全くですね。」


 組織の末端には荷が重すぎる役割だな、と二人は苦笑いした。

 それも一瞬。


 レイフはもう動くつもりで居た。ここで取り逃がすと、ますます捕まえるのが困難になる。

 最早尻尾すら掴めなくなる可能性だって大いにある。


「末端と言えど、組織の一員が捕まったとなれば影もすぐ動くだろう。その前にこっちから攻め込みたい。居場所は分かる?」


 その質問に、ルドルフは間を置きながら答える。


「はい、ねぐらにしている場所は聞き出せました……嘘を言っていなければ、ですが。」


「この際嘘でも構わないさ。どの道手掛かりはそれしかないんだしね。で、どこだって?」




「スワンプウッドです。」




~ スワンプウッド ユウスケ ~



「レイ!」


 俺の叫びと同時に、肩下げカバンから水色半透明の触手が伸びる。

 思いの外速いレイの鞭は、ウグバゴの胴体に当たるも衝撃を受け流される結果となった。


「くそ、あの表面を覆ってる粘液のせいで全く効いてないっぽいな!」


 そう悪態をつきながらも必死に回避行動を取る。

 直後、俺の居たラインをものすごい早さで通りすぎるウグバゴ。

 先程からウグバゴの攻撃対象はランダムだ。俺に突っ込んできたかと思えば、遠くに居るリーニャに向けて突っ込んだり、空中に居るシロナに向けて毒液を吐いたり。


 今回のターゲットは俺みたいだ。動きが一直線な事と、突進の前に一本の足に力を溜める様な動作があるお陰で何とか回避に成功しているが、こちらの攻撃が通らないんじゃ元も子もない。


 最初見た時は気付かなかったけど、ウグバゴは全身に粘液を纏っていた。

 そのお陰で、殆どの攻撃は滑るように見事に受け流されていた。

 それに加えて、攻撃する度に粘液が剣にまとわりつき、重さが増す一方だ。


「ユウスケ! 近距離での物理戦は不利よ! 取り敢えず……きゃっ!」


 俺に何かを伝えようとしたリーニャに、ウグバゴの照準が定まる。

 言葉を全て発する前に、高速とも呼べるウグバゴの突進をすんでのところで回避するリーニャ。


 くそ、仲間ともまともに連携を取らせて貰えないのかよ。


「あの粘液さえどうにかなれば……」


 リーニャの矢は何本か刺さっているようだが、どれも決定打にはなっていない。

 しかし粘液を貫通できる攻撃は、矢の様な点に力が掛かる貫通力の高い攻撃のみだ。

 それを行えるのはリーニャしか居ない。


「弱点とか無いのかよ……」


 そう呟いてみても、誰から答えを聞けるわけではない。


「んんー!」


 シロナも中々攻撃のチャンスを掴めずにイライラしてきてるみたいだ。

 まずいな……


「シロナ! 焦るなよ!」


 大きな声でシロナに声を掛ける。

 その瞬間、リーニャの側に居たウグバゴが急にこっちへ突っ込んでくる。


「やっべぇ!」


 少し反応が遅れたせいで回避が間に合わない。

 横に飛び退いて体を捻るが完全には避けきれず、掠めるようにしてウグバゴが通りすぎる。

 ただそれだけで俺の身体は大きく吹き飛ばされ、地面に転がる。


「ぐっ!」


 まずい、ウグバゴの粘液が身体に付着した。

 すぐ起き上がるが、粘液がついたまま地面を転がったもんだから土や草なんかも身体中に絡まって重い。

 粘液自体に毒性とかはなさそうだけど、それでも厄介だ。

 おまけに吹き飛ばされた拍子に剣も何処かへ投げ出されてしまった。


 しくじったな……せめてウグバゴの攻撃対象さえ絞ることが出来たら……

 いや、それでも結局連携が取れなきゃ意味ない。

 いつも声を出した瞬間に、その声を遮るようにウグバゴの攻撃が飛んでくる。


 声を遮るように……?

 いや、もしかして。


「当たって!」


 離れたところからリーニャの矢がウグバゴへと放たれる。

 その声に振り向いたウグバゴの口の中へ突き刺さる。


「んっ!」


 矢が刺さったとほぼ同時にシロナが風魔法を放つ。

 いくつかの鋭い風の刃は、矢に追従するように口の中へと吸い込まれていった。


「グウゥゥゥルッ!」


 ウグバゴが初めて苦痛の咆哮をあげた。

 どんな生物も口の中は弱点みたいだ。


「ん? あれは……」


 痛みにのたうつウグバゴを見ると、口へのラインから逸れた風魔法が数発ウグバゴの胴体へと当たっていた。

 毛が切り落とされて露になった肌には、粘液が分泌されていない。

 もしかして、粘液は毛がないと分泌できないのか?

 ……試してみる価値はあるな。


「シロナ! 毛を!」


 そう大きく叫んだ。

 シロナは最初首を傾げたが、粘液がついてない肌を見てすぐに理解した様子で頷いた。


 直後、ウグバゴが突進してくる。

 でも。


「それは予測済みだ!」


 大声を出した直後、俺はもうその位置を離れていた。

 ウグバゴは、大きな声の"した"方向へ突進した。


 全身が毛で覆われているわけだし、最初から気付いても良かったくらいだ。

 あいつ、目が見えてないから音だけを頼りに攻撃を仕掛けてる。

 気配とかは全く探ってないっぽい。


 その証拠に、シロナへ呼びかけた直後に移動しているにも関わらず、移動前の声を発した場所へ突進を行った。

 攻略の糸口が見えてきた。


「リーニャ! シロナ! 俺が大声でこいつを釣るから、その間に!」


 リーニャとシロナは俺の意図を汲んで頷く。


「ほら、かかってこいよ!」


 ウグバゴは俺の大声に反応し、大きな口を開ける。

 毒液を吐いてくるつもりだ。

 でも、一度分かってしまえばそんなものなんてことはない。


 俺は声を出した場所からすぐさま移動する。

 ウグバゴが毒液を吐いたとほぼ同時に、リーニャが矢を放ち、シロナが風魔法を放つ。


 毒液は俺の元いた場所へ飛んでいき、ウグバゴにはリーニャとシロナの攻撃が命中する。

 リーニャの矢はウグバゴの足へ命中し、シロナの風魔法で少しの毛が切り落とされた。


 いくら太い足と言っても、矢が突き刺さってしまえば動きが鈍くなるはずだ。

 狙ってか偶然か分からないけど、リーニャグッジョブ。


 次こっちに向けて毒液を吐こうと口を開けた時には、レイの酸弾を御見舞してやろう。

 消費MPが大きいから温存してきたけど、弱点となる部位になら消費以上に見返りの大きいダメージになるはずだ。


「おら! こっちだ!」


 ウグバゴを大声で挑発する。

 ウグバゴはこちらを向いて、大きな口を開けた。

 やっぱり、足にダメージが入れば突進は無理か。


「レイ、あの口に酸弾……」


 酸弾を撃て、と言おうとした所で、ウグバゴに違和感を感じる。

 なんだ? 何故屈んでいる? それは突進する時の前兆じゃないのか?


「んんーーー!」


「うわっ!」


 急に身体に衝撃が走って視界が回る。

 直後、近くでゴウッという音とガチンという音が聞こえる。


「ユウスケ!」


 何処かからリーニャの声が聞こえた。

 なんだ、何がどうなったんだ。


 倒れた身体を起き上がらせると、隣にはシロナが立っていた。


「あぶない。」


 シロナはそれだけ言ってまた空へ戻る。


 あのゴウッという音、ガチンという音。

 突進してきたのに加えて噛み付きもしてきたって事か。

 それをシロナが助けてくれた、と。


 あぁ、ちょっと気を抜いてたな。

 勝てそうだと思って油断してた。


「シロナ、ありがとう。」


 多分聞こえてないだろうけど、お礼を言う。


 思い込みはダメだ。アイツはまだ攻撃手段を持ってるかもしれない。

 注意深く観察しないと、唯でさえヘイトを稼ぐのは俺の役割なんだ。

 新しい攻撃をしてきたから対応出来ずに大怪我しました、なんて許されない。


 ウグバゴを見ると、他の足にも矢が刺さっている。

 今の流れでリーニャが一発入れたみたいだ。


 突進は、まだあり得る。


「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!」


 俺は思いっきり叫んだ。

 ウグバゴを挑発する為でもあるし、自分に気合を入れ直す為でもある。

 まさか、俺がこんな体育会系なことするとは思わなかったけど、案外悪いもんじゃないかもね。


 ウグバゴはこちらを向いて大きな口を開ける。

 足は、屈んでない。


 突進は、無い。


「レイ! 酸弾!」


 その掛け声と共にレイがカバンから姿を現す。

 酸弾をほぼノータイムでウグバゴに向けて撃ち出した。


 コースは完璧、一直線にウグバゴの口へと向かって飛んでいく。


 対するウグバゴは、毒々しい液体を口に溜めた状態で。



 リーニャに向き直した。

 本当は1話でウグバゴ戦が終わる予定だったんですが、文章を書いていたら長くなってしまいました。

 戦闘の描写はどうも苦手です……

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