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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
二章 旅立ち、悩むモンスターテイマー
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38話 昇級条件その1

前回のあらすじ


 シロナが加わった『救命の志』は、とてもバランスの良いパーティとなった。

 ゴブリンやレッサーリザードなら問題なく狩れることに安堵したユウスケは、ついにDランク昇級の条件の一つである、ウグバゴという魔物の狩りへと向かう決意をする。



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 Dランク昇級の条件は幾つかあって、一つは200件? くらいの依頼を達成すること。

 カウントはギルド側でやってくれて、残り10件程になったら教えてくれるそうなので、覚えなくても良いかとか思ってたら本当に忘れた……。

 まぁ、別に聞いたら教えてくれるだろうし気にしなくても良いのだ。


 そして一つはウグバゴの討伐。

 Eランクの魔物の中では飛び抜けて強い方だ。


 ウグバゴは全長2mの毛玉に蜘蛛の足を三本くっつけたような見た目をしていて、戦闘になると無茶苦茶素早い上に胴体についている大きな口から毒の液体を吐き出してくる。


 しかし、戦闘以外の時は基本的に三脚で立てたカメラのようにずっと突っ立っているらしい。


 こいつも群れを作らず、また子孫の残し方も独特で、年に一度くらい大きい口からボトボトと10数匹くらい落とすとか……想像したらだいぶグロい。


 どうやって子供を作っているのかわからないが、雌雄同体とか、単細胞生物みたいに口の中で自分の分体みたいなのを作っているのかもしれないな……尚更グロい。


 生まれた幼体のウグバゴは、大体全長30cm~50cmくらいで、成体になるまでは木の上に登って木の葉や木の実などを食べて過ごすらしい。

 その時に毒のある木の実を多く摂取して、体内に毒を作る器官を構築してるから、地域別でウグバゴの毒は種類が違って厄介だ。


 でも、その周辺にある毒のある木の実の情報さえ抑えておけば解毒は難しくない。


 まぁ、そんなこともあってこいつはDランクへの登竜門として条件の一つになっている。

 要するに、Dランクでは必ず必要な冒険者の判断力、情報収集能力、事前準備、そして戦闘力全てを試すことが出来るうってつけの魔物ってわけだ。


 それなりにデカい図体だからインパクトもあるし、そういうのへ立ち向かう勇気とかも試されているかもしれない。



 さて、そんな奴に俺達が勝てるのか。

 正直、今までは無理だったと思う。

 でも、シロナが仲間に加わったことで状況が変わった。

 まずスピードは、いくらレベルが低いと言ってもCランク級のシロナが追いつくはずだ。

 シロナが風魔法なり近接攻撃で相手の足止めを行っている間に、レイと俺で足を重点的に叩いて移動能力を奪う。

 そして動けないウグバゴを全員でボコボコにするのだ。


 単純、ザ単純な戦法である。シロナに頼り切りである。


 それに、リーニャならぶっちゃけ移動中のウグバゴ相手にも矢を当てそうな気がする。


 つまるところ、俺とレイとシロナがウグバゴをリーニャにさえ寄せ付けなければ成功するだろう。


 他のEランクパーティは、絶対的に足りてないはずの速度で討伐を成功させているわけだし、速度が追いついている仲間が一人居る俺達のパーティが成功しないわけがない。


 後は、毒の抵抗力を上げるタイプのと、毒を受けた後に中和させるタイプの二種類の解毒薬を用意してから狩りに行くだけだ。



 朝、目が覚めてそんな事を考える。

 シロナの体調が良くなってきているので、俺達はシロナを連れて『獅子の宿』で寝泊まりすることにした。


 『獅子の宿』と言うのは、俺達が初めて取ることが出来たあの宿の名前だ。

 戻ってきた時に初めて知ったのは内緒だ。


 シロナを連れて帰ってきた時、宿の女将さんであるエイラさんからは、特に決まりはないからシロナちゃんも部屋で寝泊まりしていいよと言っていた。


 エイラさんはアレだ、最初に俺達と会話した受付の女性だ。

 宿の女将さんということも合わせて、戻ってきた時に初めて知ったのはこれまた内緒だ。


 てなわけで、ベッドが二つしか無い部屋で俺、リーニャ、シロナが寝ることになった訳なんだけど。


 良く分からないうちにシロナはリーニャのベッドで寝ることになっていた。

 一緒に風呂入ったり一緒に寝たり、何か凄く仲良さそうで良いんだけど何か悔しいというか……


 まぁ、仕方ない。リーニャ様から今はまだイチャイチャすべきではないとの思し召しなのだ。


 と、脳内が雑念だらけになってしまった。

 リーニャとシロナはもう起きていたらしく部屋には居なかったので、恐らくエイラさんと会話してるかシロナがお腹をすかせて食事の待機をしているかだな。


 俺も向かうか……



 ささっと着替えて部屋を出た俺の耳に、いつも聞こえるカンカンという音以外の騒音が入ってきた。

 人の声だ。ざわざわしている。もしかして何か事件?


 駆け足でロビーに向かうと、そこには数十人の人だかりが出来ていた。

 静まったかと思えば急に上がる歓声。いいぞー! やれー! と声が聞こえる。

 喧嘩か!? と一瞬頭に過ぎったけど、それよりもこの状況に心当たりがあった。


「あー、ちょっと済みません、通ります。」


 人混みを無理やり掻き分けながら騒ぎの根源へと向かっていくと、そこに広がっていた光景は。


「うグッ……もうダメだ、食えねぇ。」


「ん! おかわり!」


「おいおい、まだ食うのかよ……化けもんか……」


 知らない男とシロナが机に並んで大食い競争をやっていた。

 何だこれ、予想と何が違うぞ。


「畜生! わかった俺の負けだ! 約束通り飯代は俺の奢りだ!」


 そう言うと知らない男は金貨1枚を机に置いて『獅子の宿』を出て行った。

 その様子をポカーンと見つめる俺に、リーニャが気付く。


「あ、ユウスケ。おはよう。」


「うん、おはよう。いや、おはようじゃなくてナニコレ。」


 リーニャに事の発端を聞くと、リーニャは苦笑いしながら教えてくれた。



 どうも、俺が白いハーピィを連れ回ってる噂ってのは予想以上に反響が大きいらしく、一目見たい、あわよくば欲しい、という人が後を絶たないようだ。

 それでも大半の人は良識がある。流石に人がテイムしたというハーピィに手を出そうなんて思わない。

 そんな中、例の白いハーピィが『獅子の宿』に入っていくのを見たと言う話を聞き、翌日にはこの有様というわけだ。


 先程の男は、勝負で俺が勝ったらシロナを寄越せと言い寄ってきたそうだ。

 『豪腕の唸り』の時同様、リーニャが強気に返そうとした時、シロナがリーニャを遮ってこう返した。


「ごはん。」


 シロナは多分、お腹が空いてるから静かにしてくらいの意味で言ったんだろうけど、相手の男はそれを聞いて大食い勝負だと勘違いし、勝ったらシロナを寄越せ、負けたら金貨一枚を払うと言う条件で勝負を受けたと。


 ほんと、ヒヤヒヤするから止めて欲しい。


 それでも、あの男が平らげたであろう13皿の隣、シロナの前に積み上げられている30枚以上の皿を目にしたら、大食い勝負では負けないなと思わざるを得なかった。


「うん、でも金輪際勝手に勝負しないでねほんとに。」


「ん。」


 いつまた逆恨みで襲われるともわからないんだからさ。


 分かったのか分かってないのか分からない顔で、貰った金貨をエイラさんに差し出してご飯を催促するシロナだった。




 シロナとリーニャと食卓を囲みながら、今朝考えていたウグバゴ討伐についての話をする。

 シロナはあれだけ食べたと言うのにまだ食べられるそうだ。金貨一枚貰えて助かったな……


 一人前が基本銅貨4枚で、金貨1枚で銀貨50枚だから、ここの食事なら金貨1枚で250人前も食べることが出来る。

 その点だけは、勝負を受けたことに感謝だ。


 ただエイラさんも苦笑いで、食材が尽きたからコレで勘弁してくれと食卓に並べてくれたのはパンにスープというシンプルなセットだった。

 大食い勝負中も食材が途中で尽きたから従業員に買いに行かせたらしい。

 従業員一回も見たこと無いけど、居たんだ……


 パンにスープというセットは、普通の食事より価格が安い。

 あまり儲けてない冒険者用のセットみたいなものだ。


 客が居ないと言いながら、凄く配慮のされた宿のシステムに感心しつつウグバゴの特徴や戦略などについてシロナとリーニャに伝える。


 シロナはパンを頬張りながらコクコクと頷いていた。


「でもそうなると、シロナちゃんの負担がかなり大きそうね。」


 そう口にしたのはリーニャだ。


「うん。ただ、他にいい案もないからさ。シロナから許可が出ればコレで行こうと思ったんだけど。」


 そう言ってシロナへと視線を移すが、聞いているのか聞いていないのか上機嫌でスープを飲むシロナが目に映る。


「私も一応速度には自信があるし、シロナちゃんと私で撹乱しながら少しずつ削っていくって言うのでも良いわよ。」


 リーニャが新しい案を出してくれた。しかし、それは俺的にはあまり好ましくない。


「リーニャはアーチャーなんだから、自分から前に出るべきじゃないと思うんだよ。」


「そんなこと言ったら、ユウスケだってモンスターテイマーじゃない。」


「まぁ、そうなんだけどさ。」


 俺は攻撃の要にもなれないし、出来ることと言ったらチクチク攻撃するか誰かの盾になるしか無い。

 それならもっと攻撃力のあるリーニャは守られて然るべきだ。


「シロナ、作戦はこれでいい?」


シロナはスープを飲み干した後、こちらを向いて力強く言った。


「おかわり!」


「シロナ、そろそろやめてあげよう?」


 スープのおかわりはないと伝えると、流石に30皿以上のご飯を平らげて、それに加えてパンとスープも腹に収めた為か、素直に「分かった。満足。」とニコニコしていた。




「……という訳で、今説明した通りの作戦で行こうと思うんだけど、シロナはこれでいい?」


 シロナに作戦を改めて説明する。

 今回最も危険を伴うのはシロナだ。だからシロナが嫌だと言えばこの作戦はお蔵入りにする。


「ん、いい。」


 しかし、帰ってきた言葉はそんな単純な一言だった。


「本当にいい? 結構危ないけど。」


「いい。」


 シロナは真面目にこっちを向いて返事をする。

 それなら、俺も判断を渋る必要はないだろう。

 この作戦で、ウグバゴを討伐しにいく。


 まだ見ぬ魔物を前に、俺達は着々と準備を進めていった。

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