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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
二章 旅立ち、悩むモンスターテイマー
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33話 関係性

 ユウスケはハーピィを~匹ではなく~人と数えていますが、それは彼女らを魔物と言いながら人間と対等に見ている証拠だと思っていてください。他の人達は基本的に~匹と数えます。

前回のあらすじ


 ヒロツグから指摘された、傷つける覚悟があるかという言葉に動揺したユウスケ。

 ハーピィと遭遇した時、やはり自分は傷つけることが出来そうにないと分かる。

 テイムを断念しようと思った時、ヒロツグからある提案をされた。



---------------------------------------



「覚えているかな……? ユウスケ君が初めて僕の家に来た時、いや、来る途中の道中だったかな。ユウスケくんにある質問をしたよね。」


 その言葉に、あの時聞き返そうと思っていた事を思い出す。


「テイムの条件が、本当にそれだけなのか。」


「そうだね、君が挙げた四つの条件。それはどれも相手に対して傷つける行為だ。それが一般的だし、それ以外無いと信じられている。」


 手負いであること、状態異常であること、油断していること、降伏していること。

 魔力でテイムに抵抗してくる為、その抵抗力を弱める為に行う行為だ。


「でも、魔力での抵抗は、言い換えればその魔物の意思でもあるんだよ。」


 魔力の抵抗をさせないのではなく、受け入れてもらう。

 嫌々ではなく、両者が納得する形で。


「それが僕の試してみたいこと。研究の題材だ。」


 ヒロツグさんの語った内容に、俺は目から鱗だった。

 先入観に邪魔をされていたが、テイムするのに傷つける必要がないならそれに越したことはない。


 俺の目的はモン娘とイチャイチャすることだ。

 確かに戦力は要る。けど、それは目的ではなくて手段だ。

 目的を疎かにしたテイムは、今後に支障が出るのは明らかだった。


 俺はハーピィに向き直す。

 ハーピィは痺れがまだ取れていないようで、動けないまま俺達を警戒をしている。


 そりゃそうだ。殺されるかもしれない相手に向かって警戒するなって言うのが無理な話だ。

 これは、会話すら無理かもね。


 ハーピィに近づいていく。武器は持たずに。


「なぁ、さっきは……」


 俺が攻撃を仕掛けた謝罪をしようとした時、急に周囲の木々の葉が揺れる。


「ユウスケ君、気を付けて。何かが近づいてきてる。」


 ヒロツグさんの警告に、すぐさまヒロツグさんの近くまで下がる。

 近づいてきている者の正体はすぐ分かった。

 ハーピィだ。

 三人のハーピィが、こちらに向かってきていた。


 逃げた時は二人だったので、仲間を連れて反撃に来たのか。

 その内の一人が、何か赤い液体にまみれた白い大きな何かを足に抱えていた。


 頭上付近まで近づいてきてすぐ、こちらに赤い液体を纏わせた白い何かを投げつけてくる。


 距離的に俺達には届かず、少し離れたところに落ちた。

 それを見て、俺達は驚愕する。


「……ヒロツグさん。」


「これは……」


 ハーピィ達はそれを投げつけた後、俺達が固まっている間に、麻痺して倒れていたハーピィを足で抱えて飛び去っていった。


 あのハーピィが俺達の近くに投げつけたのは、血まみれの白いハーピィだった。

 痩せこけ、傷まみれで息をするのもやっとの状態だ。


「……ユウスケ君、テイムするんだ。」


「でも……」


「現状それが最適解だ。君は元々ハーピィをテイムする気であったし、この傷は落ち着いた場所で治療した方がいい。そうなると、従魔ではないハーピィを町まで連れていくことになる。」


「……」


「従魔ではない魔物が町の中にいるとどうなるか、分からない訳じゃないだろう? それに、今の状態なら抵抗力もない。テイムの時にダメージは殆ど生じないはずだよ。」


 テイムしていれば、従魔なら町の中に入っても問題ない。

 従魔でなければ、憲兵団に殺されるかもしれないし、素材目当てに冒険者が狙うかもしれない。

 多分、そういうことだ。


 それでも。


「すみません、出来ません。目覚めるまでは。」


「ユウスケ君……」


「分かっています。ヒロツグさんの言った通りにした方が確実って事は。でも、それじゃ、やってることは傷つけるのと変わらないじゃないですか。」


 それは、違う。

 俺の目的の為のわがままだとしても、ここで曲げるともう戻らない気がするから。


「お願いします。ヒロツグさんの力で、どうにか出来ませんか。」


 ヒロツグさんは少し目を閉じて、考える素振りを見せた。

 そして口を開く。


「町に戻ったらギルドマスターに一度、話をしてみよう。一旦回復薬を傷に振りかけてから、戻ろうか。ここから取り敢えず山を下りて、その後に馬車に向かってきて貰おう。」


「ありがとうございます! あの、馬車に向かってきて貰うって、どうやって……」


「信号弾みたいな物を使ってね。魔力を流すと爆発する特性を持つ石を使ったマジックアイテムだよ。さぁ、行こう。」


 そう言うとヒロツグさんは先導して山を降り始める。

 俺は取り敢えず回復薬を白いハーピィに振りかけてから背負って後を追った。


 一晩過ごしたお陰で随分山の中を歩いた気分だったが、一直線に下りるとそれ程かからずに下山することが出来た。


 山から充分に離れた位置で、信号弾を打ち上げる。

 筒状のマジックアイテムを地面に置いて魔力を流すと、中から何かが上空に飛び上がり、高い位置で破裂した。

 打ち上げた軌跡ごと、赤い煙のような物が上空に残っている。コレを目印に馬車が向かってくるという事らしい。


 俺はハーピィを背から下ろす。


 相変わらずハーピィの傷は酷い。回復薬を振りかけてから少し出血は治まった様に見えるが、傷が治っているかと言われれば完全にノーだった。


「ヒロツグさん……」


「安心して、馬車の中に護衛の冒険者用に買っておいた、少し効果の高い回復薬が積んである。安全マージンを取って買っておいた分だから、本来は使う予定は無かったんだけどね。」


 そう言って、ヒロツグさんは馬車が来るであろう方向をずっと眺める。

 俺は、ハーピィをずっと見ていた。


 回復薬は、効果が重複しない。違う効果なら効果の高いものが適用されるし、同じ効果なら効果時間のみが上書きされる様な感じだ。だから効果が切れる前に回復薬を服用するのは意味がない。


 また回復と言っても、即時回復ではない。自然治癒効果を高めるだけの持続回復のようなものだ。

 その自然治癒力というのも、魔力が多い時程効果が高いのだ。

 つまり、魔力が枯渇している状態では、思ったような効果を得られない。


 そういう理由もあって、無理に回復薬を服用しながら戦闘を続けることは出来ないし、出来たとしても現実的ではない。

 だから冒険者は引き際がとても大事だし、殆ど即時回復するヒールを扱えるヒーラーの存在はとても重宝する。


 そのヒーラーが居ない今、自然に回復するのを見ているだけの状態は非常に心臓に悪いものだった。


 ふと、リーニャが近くに寄ってきた。

 見ると、手に布を持っている。


「取り敢えず、酷い傷のところはこれを巻いておきましょう。あるのとないのじゃ、全然違うと思うわ。」


「リーニャ、この布って一体どこから……」


 そう言ってすぐ気がついた。リーニャの軽鎧の下。服の袖や裾等が無くなっている。


「バレちゃった? ちょっと露出が多くなっちゃったけど、興奮しないでよ。」


「リーニャ、ありがとう。本当はこういうの俺がしないといけない事なのに。」


「ユウスケは思い詰めすぎなのよ。休息を取って落ち着かないと、頭の回転も悪くなるわ。」


「そっか、そうだね。町に戻ったら休憩するよ。」


 出会った当初はリーニャの方が色々焦ってたけど、今じゃ俺より冷静で頼もしい。

 最初からそういう何にでも気の回る優しい人だったんだろう。

 問題を前にして吹っ切れないのは、俺の方か。


「リーニャ。」


「なに、どうしたの?」


「その格好、エロいね。」


「バカ。」


 吹っ切ろう。ヒロツグさんが手伝ってくれてる、リーニャが支えてくれてる、その為にも。




 しばらくして、馬車が見えてきた。

 こっちに到着するまであと少しだ。

 そこで、ヒロツグさんが俺に質問をしてきた。


「そういえば、ハーピィをテイムするのは良いけど、皆にはどう説明するつもりなんだい?」


「皆に?」


「だって、人型連れてるテイマーなんてこの世に一人も居ないのに。」


「……あっ。」


 それってつまり、町を歩けば俺のユニークスキルがモロバレって事だ。

 考えなければ分からなかった? いやいや、考えなくても分かるでしょう。

 アホか。いや、アホだ。スーパーアホだ。


「あーーー、どうしよう。これじゃヒロツグさんにユニークスキルの説明をした覚悟とか全く意味ないじゃん。」


「ははは、何か考えがあるのかと思ってたけど、何も考えてなかったんだね。」


「……山奥に住む。」


「ハーピィの治療は?」


「ぐぅ……」


 ぐぅの音しか出ない。

 どうするんだ。このままじゃ町の人全員に俺のユニークスキルがバレてしまう。


「いや、そもそも隠す必要あるのか? バレてもいいんじゃないかこれ。」


「そんなユウスケくんにいい情報をあげよう。」


「なんですか?」


 ヒロツグさんは、アニメや漫画くらいでしか見たことがない、人差し指をピンと立てて説明を始めた。


「ユニークスキルって、転生者限定のスキルじゃないんだよね。」


「えっ、そうなんですか?」


「そう、僕らのユニークスキルは転生時、つまり先天性のスキルだけど、冒険者の中には後天的にユニークスキルを取得する人も居るんだ。つまり、珍しいけどあり得ない存在ではないんだよね。」


「あっ、そうなんですね。」


「だから、わざわざ自分でユニークスキルを持ってるって公言する人も居るし、その御蔭で冒険者として成功してる人も居るんだよね。だからユウスケくんも公言しちゃえば良いと思うよ。そうすればテイマーの株も上がるし、他のテイマー達もそのユニークスキルを目指して頑張れるんじゃないかな。」


 なるほど、そういう事なら積極的に公言していこう。まずは冒険者ギルドにでも言っておけば良いのかな。

 あと質問されたらその都度説明すればいいか。


「まぁ、でも悪い人も居るから、そういうのには引っかからないようにしないといけないけどね。」


「あーやっぱそういうの居るんですね。」


「居るね。」


 まぁ、それでもテイマーの希望になれるなら悪くないんじゃなかろうか。


「他のテイマーに妬まれて殺されたりしてね。」


「ヒロツグさん俺をどうしたいんですか!」


「はは、冗談だよ。さぁ、馬車も来たし、回復薬を持ってくるよ。」


 護衛の冒険者達が乗った馬車と、俺達が乗る馬車の二台が到着する。

 護衛の冒険者の一人がちらっと顔を出して、大きな声を上げた。


「おぉい! 白いハーピィじゃねーか!」


 その声をキッカケに残りの三人が馬車を降りる。


「うわぁ、本当だ。」


「すげぇ、初めて見た。」


「綺麗……でも何で生け捕りなんですか?」


 この護衛の冒険者達はCランクのパーティ『不屈の魂』だ。

 最初に声を上げたのがリーダーでパラディンのガウン。

 パラディンは騎士の中位職だ。主に防御をメインとした職だって聞いた。


 続いて二人目がハンターのヒューマ。

 ハンターはアーチャーの中位職だ。主に遠距離の攻撃に特化した職だ。


 三人目はウォーロードのウィリス。

 戦士の中位職で、槍を使った攻撃をメインとした職だ。


 四人目がウィザードのロロップ。

 このパーティの中では唯一女性で、魔法使い(マジシャン)の中位職だ。

 ヒロツグさんのアルケミストとは違い、アークウィザードと言う攻撃に特化した上位職に進む。


 この四人には詳しい目的は伝えていない。

 山へ行くからそれの護衛を頼んでいただけだ。

 恐らく、ヒロツグさんが俺の為に目的をぼかして伝えていたんだろうけど、もうぼかす必要はない。


 まずはこの四人に伝えてみよう。


「えっと、まずは護衛を引き受けてくれてありがとうございます。」


「お? おう。報酬も良かったし、逆にこっちが礼を言いたいくらいだ。結局魔物にも襲われなかったしな。」


「それで、この白いハーピィなんですけど。えーと、俺はテイマーなんですけど。ユニークスキルのお陰でテイム出来るので、テイムしようと思ってるんですよ。」


 それを聞いた瞬間、四人の表情が変わった。


「ひ、ひ、ひ、人型をテイムだと! そんなこと出来たらお前! 何でもテイム出来るんじゃねーか!?」


「人型をテイム出来るなんて、凄いスキルです! どこまでテイム出来るんですか!」


「テイマーなのか……今まで辛かったな……でもスキルのお陰で報われるんだな。これからも頑張れよ。」


「そうなんですか。それなら白いハーピィをテイムしたい気持ちも分かりますね。」


 実に騒がしいパーティだ。いや、コレくらいの反応が普通なんだろうね。リーニャも最初聞いた時めっちゃ驚いてたし。

 ただ最後の二人の感想がちょっとズレてる気がしないでもない。


 ガウンが続けて喋る。


「しかし白いハーピィをテイムなんて勿体ねーなぁ、素材めっちゃ高値で売れるんだぞ。」


「ふっ、分かっていませんね。」


 そこに割り込んだのはウィザードのロロップだ。


「なんだと?」


「こんなに美しいハーピィを、近くに置いておかない理由がないじゃないですか。素材として出回って何になるんですか? お金がどうしたんですか? そんなものは、この美しいハーピィのもふもふには敵わないんですよ。すぐそばで生きてる、それだけで、いやそれこそが心を満たしてくれるんです。」


「お、おう……そうなのか……?」


 おい、こいつ本当に女性なのか? 俺と同じ、いやそれ以上の素質を感じるぞ。


「そうです。しかし、酷い傷ですね。魔法や剣での傷には見えません。それに凄く痩せています。食事もまともに取れていなかったのでは無いでしょうか。」



 ヒロツグさんがハーピィを良い回復薬で回復してくれている間、俺は流れでこの白いハーピィを抱えて山を下りた経緯を話すことになった。

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