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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
二章 旅立ち、悩むモンスターテイマー
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30話 身を守る術

前回のあらすじ


 リアというアサシンにより、『豪腕の唸り』の全てのメンバーが首を落とされた。

 助けに来てくれたのかと思えば、いきなり短剣を突きつけられて「お前が嫌いだ」と言われる始末。

 何もかもがわからないまま、憲兵団に救出されて一命を取り留めたユウスケは、憲兵団のリーダーらしき男、ヴェルニーに事情を説明されることとなる。



---------------------------------------



「まず、あの倉庫に倒れていた三人の死体だが、『豪腕の唸り』というパーティを組んでいた冒険者だということが分かっている……が、これは君達も恐らく知っていることだろう。」


 憲兵団のリーダーらしき男のヴェルニーは、手元に資料らしき紙を用意して、ゆっくりと確認をしながら俺達へ説明を始めた。

 ヴェルニーの周りには、部下らしき人が二人。


「冒険者ギルドの職員や周囲の冒険者からも、数日前に君達がギルド内で彼らに絡まれているという情報を聞いている。今回の君達への襲撃は、恐らく私怨で間違いない。」


 俺は頷いた。俺も私怨で間違いないと思う。

 最近ここらで噂になっていた人攫いとは完全に別の話だろう。

 もし人攫いなら、初めに俺達にコンタクトしてくるメリットがない。

 姿を現さず、初めからリーニャだけを攫う方がリスクも少ない。


「そして彼らを殺したのは、ここ最近商人殺しの事件が多発しているんだが、それの犯人と同一だと思われる。」


「えっ、商人殺しの……? 何故ですか?」


 その結論には少し疑問を覚えた。

 商人殺しと言われるくらいなら、商人を狙った殺人のはずだ。

 しかし、ヴェルニーもあまり腑に落ちないような表情で詳細を教えてくれた。


「正直、私もこれについては少々情報を整理したい気持ちがあるのだが……決め手は彼らの殺され方、というか傷だな。」


 写真のような物がない為、脳内に記憶した物を思い出しつつ話してくれているのだろう。

 少し斜め上を向きながら、言葉を続けた。


「今までの商人、もとい商人の関係者は全て首を鋭い斬撃で落とされている。今回の件も同じだ。それに、今までの事件通り傷口が黒く変色するという特徴も見られる。恐らく特殊な武器かスキルを使った犯行だと推測できる。」


 傷口が黒く変色する……というと、あの禍々しい漆黒の短剣のことが頭に浮かぶ。

 アレは、見るからにおぞましい何かを感じた。見た目だけの気持ちの問題かもしれないけど……


「これまでの商人殺しの関連性を考えると、共通点と呼ばれる物はほぼ何も無いと思うが……」


 そう言葉を切ると、資料を何回か捲って確認を繰り返し、何かを思いついたように口を開いた。


「もしかすると、人攫い……か?」


「人攫い、ですか?」


 ヴェルニーは資料を見て考え込みながら俺に返事をする。


「いや、まだ憶測だ。全て裏付けが取れているわけではないが、襲われていた商人は殆どが奴隷商だったという話を聞いている。また、殺された商人の関係者の中には盗賊や悪名高い冒険者等が多いのだ。」


 そういうと資料を片付けた。


「つまり、盗賊やそういう荒くれ者の冒険者を雇って人攫いを行っていた可能性がある。だが、証拠がない。今まで殺されていた商人の中には、奴隷商だったという証拠すら無い者も居る。」


まぁその話は置いといてだ、と話を区切り、新しい資料のような紙を取り出す。


「君達は恐らく、その犯人を目撃していると思うのだが。何か覚えていることはないか? もし教えてもらえれば、この町はより平和に近づく。」


 犯人の特徴。

 というとつまり、リアの特徴を教えろということだ。

 しかし、これを教えるのに俺はちょっと迷いがあった。


 何故かと言うと、あのレベルの強さを持つリアをこの憲兵団でどうにか出来るとも思えないし、情報を渡したことで、俺達が殺される可能性も無いとはいえないからだ。


 リアは言った。何故私が見える? と。

 言葉の意味を正確に理解したわけじゃないけど、あの言い方だったら恐らく、通常時は俺以外には基本的に、そのままの意味で見えない(・・・・)

 つまり、感知されないという意味になる。


 それが本当なら、いつでも誰にも見られることなく犯行を行う事は不可能ではないし、何故か姿を初めから感知できていた俺は、感知できている時点で命を狙われてもおかしくないのだ。

 それに加えて情報を渡してしまえば、更に命を狙われる理由ができる。


 だが言い渋っている俺を横目に、リーニャが話し始めた。


「私達を襲っていた『豪腕の唸り』のメンバー以外、最初は誰も居ませんでした。でも、大男がユウスケの足を折ろうとした時、急に現れたんです。大男の背後に。」


 リーニャの言葉に、ヴェルニーは真剣にメモを取る。

 リーニャが話し始めたので、俺ももう狙われる云々の心配をする事を止めた。

 どっちみち狙われる理由はあるのだ。一つ二つ増えたところで変わらない。


「彼女は、彼ら三人の首を落としていきました。手に持っていたのは、漆黒の短剣。最後の一人、ローブの男は、死ぬ前に彼女の事を知っていると言っていました。」


「ほう、何と?」


「銀狼のアサシン、リア……と。」


 その言葉を聞いて、ヴェルニーは顔をしかめた。


「銀狼……やはりあの情報は間違っていなかったのか。しかし、リアと言ったか。名前が判明したのは大きな前進だ。それに漆黒の短剣……か。」


「はい、彼女は恐らく、高度な気配遮断系のスキルを持っていると思います。しかし、それは何故かユウスケには効きませんでした。彼女は、ユウスケに対して、初めから見えていた事を不審がっていました。」


 それを聞くと、ヴェルニーはこちらへ顔を向けた。


「初めから見えていた、とは?」


「はい、町に入った直後に、町中で一度見かけています。それと、リーニャは倉庫で急に現れたと言いましたが、俺は歩いて大男に近寄ってくる姿を確認しています。」


「ほう……」


 ヴェルニーは紙へ素早くメモを取り終わると言った。


「もしかすると、君にもこの事件の解決に向けて手伝って貰う日が来るかもしれないな。そのスキルを見破る力を使って。」


 ヴェルニーはその後、なるべくコチラだけで解決するように努力するが、と付け加えた。


「貴重な情報をありがとう。私達はまた見回りに戻るよ。それと、事件解決に向けて情報を整理しなければな。」


 そう言うと椅子から立ち上がり、部屋の扉へと向いた。


「伝説の銀狼が人攫いを殺害。慈善活動のつもりか、なりそこないの俗物め。」


 そう呟くと、部屋を出ていった。




 憲兵団御一行が部屋を出て行った後、一気に体の緊張がほぐれた。


「はぁー、ああいう人達が近くにいると、何か変に緊張するよ。」


 それはリーニャも同じだったようで、やっと落ち着いた様な表情になった。


「でも、よくあの倉庫に来てくれたよね。」


 俺がそう呟くと、リーニャが経緯を教えてくれた。


 ここは憶測になるんだけど、どうやら俺達が大男に倉庫に連れ去られた時、レイがカバンからスルリと抜け出していたらしい。


 それでここからは憲兵団の人に聞いた話、町中にスライムが居るのを見回り中の憲兵が発見。

 スライムは脅威ではないが、町中に魔物が居るというのはあまり良くない。

 結果討伐することに決定したが、思いの外素早く逃げるスライムを追いかけていると、煙が上がる倉庫を発見。

 スライムそっちのけで上司のヴェルニーへ報告、人を集めて消火に向かった。


 という流れらしい。


 つまり、レイが人を呼んでくれたということだ。

 凄すぎる。



 さて、一連の騒動を経験して、俺はある決断をしていた。

 今の俺達には、身を守る力が圧倒的に足りない。

 足りないのに、襲われる要素が沢山ありすぎる。


 今回の件ではリーニャがエルフだと言う理由で絡まれた。

 また、他の奴らにエルフだからという理由で狙われる可能性は高い。

 だからといって、リーニャとのパーティを解散するつもりもない。


 俺はリアに、見える(・・・)という理由で命を狙われるかもしれない。


 今必要なのは、戦力。

 純粋な身を守る為の戦力がいる。


 悠長にレベル上げなんてしてられない。リーニャはともかく、俺がレベル上がったところで戦闘で使い物になるかと言われたら恐らくノーだ。

 それに、ゲームなんかで敵と戦ってレベルを上げるのとは根本的に速度が違う。

 時間を使えば一日に10も20も上がるようなもんじゃない。

 つまり、レベル上げという選択肢はない。


 冒険者ギルド等でパーティメンバーを増やすのもノーだ。誰が信用できて誰が信用出来ないか、今は判断できない。

 一人増やしたが為にパーティ壊滅なんてシャレにならない。


 信用できて、なおかつ強い味方。


 そう考えると、俺にある選択肢なんて一つだった。

 俺は身体を起こし、リーニャを連れて部屋から出る。


「ユウスケ? どこへ向かうの?」


「俺達の戦力を増やしに行くんだよ。今のままじゃ危ないから。」




 俺が居た場所は、憲兵団の寮のような所だったらしい。

 アパートみたいに、何部屋もある大きな建物だ。

 その中には、所謂医療室みたいな場所も作られていたようで、俺はその医療室へ運び込まれていたようだ。


 事件の被害者だということもあり、治療費などは払わなくていいと言われた。


 という訳で、俺はその寮を後にしてある所に向かっていた。

 近づくに連れて、リーニャの表情が強張っていくのが分かる。

 リーニャはあまりこの人の事を信用していない。


 家の前につき、ドアをノックする。

 中から出てきたのは、ヒロツグさんだ。


 そう、ヒロツグさんの家に来た。


 中に上げてもらって、客室のソファに腰掛ける。


「で、どうしたの? もしかして僕にレイを預けてくれるのかな?」


 その言葉に、隣に座ったリーニャが小声で焦って俺に言う。


「ちょっと、もしかして、この人に護衛を頼むつもり?」


 俺は、リーニャにもヒロツグさんにも首を振った。


「いえ、違いますよ。確かにヒロツグさんの研究の手助けでもありますが。」


 俺は一呼吸置いて、要件を伝えた。



「俺の、ユニークスキルについてです。」



 ヒロツグさんの口元が、ニヤリと笑った。

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