22話 旅の目的
多少舗装されているとはいえ、ほぼ砂利道のような悪路をゴトゴトと進んでいる中、御者の声が聞こえる。
「見えてきましたよ。」
その声を聞いて、俺とリーニャは馬車の横から顔を出して前を見る。
「おぉー! でっけぇー!」
そこには、石の城壁に囲まれた想像以上に大きい町……というか、奥には城のようなものも見えるし、もしかしてこれって……
「あれが、アステニア王国の主要都市、アステニアです。」
やっぱり王国だった!!!
でも今見ているのが主要都市ってことは……
俺が考えていた事を感じ取ったのか、御者さんは補足を入れてくる。
「一応エマもアステニア王国の管轄地域なんですよ。繋がりは薄いですけどね。」
へぇー……いやしかし、何かアレだ、田舎から都会に出ると言うか、上京するような気持ちだ。
都会の荒波に揉まれてエマに帰ることにならないだろうか、都会の人は冷たか~! とか言って。
リーニャも初めてアステニアを見たからだろう、あまりの大きさに驚いていたようだった。
ここから、俺たちの新しい冒険が始まるんだなぁ……
「魔王討伐に向けての、第一歩ね……」
リーニャも感慨深いらしく、しみじみとそう呟く。
そうだねリーニャ。新しい冒険への第一歩……
「え? なんて?」
「え? だから、魔王討伐に向けての第一歩ねって。」
魔王討伐? ほわい?
「俺、魔王の討伐はしないよ……?」
「……えっ?」
リーニャは俺の旅の目的を盛大に勘違いしていた。
何故だ? どこで?
思い返せば、それは今から約30分以上前の、馬車の中での会話に答えがあった。
~ 約30分前 ~
「まず次の町についたら、リビテラさんが言ってたテイマーの研究をしている人に会ってみようと思う。」
「へぇ、そんな人がいるのね。」
「うん、会うのは簡単じゃないだろうけど、もし会えたらかなり有益な情報が貰えそうだし。」
テイマーの研究をしているなら、テイムの成功確率を上げたりとかそういう情報を持ってそうだし、会わない理由がない。
「そしてその次に、次の町付近の魔物の情報を見る。」
「そうね、依頼をするにもテイムするにも、前情報は持っておくべきだわ。」
「俺がテイムしたい魔物は、かなり高ランクになるだろうから、長い旅路になりそうだなぁ……」
モン娘の情報は無くてはならないものだし、次の町に着いたらさっさとギルドの図書館にお邪魔しないと。
「ユウスケって、どんな魔物をテイムする気なの? そんなに高ランクなんて。」
「あー、えーと……」
どうしよう、ここで正直に言っておくべきか……
どうせ後々テイムするにあたって話すことだし、今言っておこう。
イチャイチャしたいまでは言わなくていいかな。
「実は、俺、人型の魔物をテイムしようと思ってるんだ。」
「えっ……人型って、確かテイム出来ないって聞いたことあるけど……」
「そうなんだけど、実は転生の時に良いスキルを貰ってさ、その、ざっくり言うとどんな魔物でもテイムできるんだよね……」
これをリーニャに伝えると、口を開けたまま固まってしまった。
ちょっと! 金髪ポニテエルフがやる顔じゃないよリーニャさん!
「ちょ、ちょ、ちょっとそれ、かなり強力なスキルじゃないの!!」
「え、うん、そうだよね。ヤバイよね。」
「テイマーが不遇なのは中級であるのと同時に、従魔の強さにも限界があるからなのよ! それを無視できるって、下手すれば勇者とかよりも強くなるんじゃ……」
そうだね、仰る通りです。テイムできたらの話だけど。
「そう……そういう狙いが……だからユウスケはテイマーを選んだのね……」
ん? だから? どういう意味だろう。
まぁいいや、話の続きだ。
~
あの納得した奴だ! あれだ! あのときに勇者より強くなって魔王討伐する気だと思われたんだ!
違うんですよリーニャさん。
「ま、魔王を討伐しないなら、何のために人型の魔物をテイムするの……?」
「えーと、それは、ほら。魔物と人間共存の架け橋に……」
「き、共存……?」
嘘は言ってない。規模が違うだけで。
そうだよ!共存するんだよ!
「人型って知能があるだろ? 会話もできるだろ? ならほら、共存も難しくないと思うなぁ。はは。」
「……」
リーニャさん、ついにジト目を始めました。
視線が訴えかけてきます。貴方、嘘ついてますね?と。
「えーと……リーニャさん……?」
「……はぁ、まぁいいわ。」
ふぅ、折れてくれたか…助かった。
「どうせ人型をテイムした時に分かることだし。今はソレで納得しといてあげるわ。」
…………
ここで問題だ。
今は旅立ってまだ間もない。俺の性的嗜好を暴露するのには遅くないと思う。
この先のリーニャの視線がどうなるかはさておき、あぁそういう目的なんだそうなんだと心の中で思った状態で一緒にいてくれることだろう。多分。
さて、これがテイム直前やテイム後に発覚したとなればどうなるだろう。
今まで隣で魔物と人間共存の架け橋だなんだと言っていた奴が、いきなりモン娘とイチャイチャし始めたら。
失望または驚愕もしくは憤怒、場合によってはパーティ解散の危機である。
あるいはリーニャに隠すことを優先して全くイチャイチャ出来ないかもしれない。
それはマズい。俺のメンタル的に。
まだ、変態だと思われていたほうがマシだ。
いや、それも違うな。
リーニャとパーティを組む為の用紙を受け取ったその時に、俺は信頼したはずだ。
リーニャなら受け入れてくれると。
それなのに、嘘をついて一緒に旅をするのは違う。
なら、話してしかるべきだろう。
俺の性的嗜好について!!!!!
~
「と、言うわけでですね、その~、モンスターっ娘、所謂モン娘ちゃん達とイチャイチャしてみたいと思った所存でございまして……」
長々と説明をすること10分。
前の世界では女の子に恋心を抱いたことがないから始まり、その矛先がゲームに向かったことや、そこでハマったモン娘というジャンル、転生できると聞いて一番最初に浮かんだのが、憧れのそのモン娘と本当にイチャイチャ出来る可能性を感じた事。
今までに使ったこともないような謙った言葉で、俺の性的嗜好について女の子に懇切丁寧に説明しているこの状況。
まるで晒し首。
まさに地獄の極み。
恥ずかしさの天元突破。
いっそ殺して欲しい。
リーニャはソレを横目に聞きながら、これまた女の子がそんな顔をするんですかと問いたくなるような複雑な顔をしていた。
まぁ俺が言えたことではない、リーニャもきっと「こんな顔をさせおってからに若造が」と思っていることだ。
ため息、ただひたすらにため息である。
リーニャ、すまなんだ……君の命の恩人は、こんな人なんです……
「はぁ……ユウスケ……」
「ハイ、スミマセンデス、ハイ。」
「……いや。そうね、そうね……」
リーニャはなんだかブツブツと独り言を呟いて、俺の方を向いた。
「本当のことを話してくれたから、良いわ。」
そう言った時には、もういつものリーニャに戻っていた。
険しい顔もしておらず、ため息もつかず、まるで「うげっ」と声が漏れてそうな顔をしている訳でもない。
いつものリーニャだ。
こんな短時間で、割り切ったというのだろうか。
あの闇に塗れた俺の話を。
流石リーニャだ……
ちょうど良いタイミングで、御者さんから声がかかる。
「そろそろ門を通りますよ。一旦止まって通行証を見せますが、その時にユウスケとリーニャはギルドカードを提示してください。」
馬車の横から顔を出して前を見ると、目の前に門があった。
近くで見ると、一層大きく見えるその門で、兵士のような人が待ち構えている。
「は~い、止まってね~。」
その兵士が、気の抜けた声で俺達の乗っている馬車を止める。
「通行証と~、え~っと中の人達は身分を証明できる物を~、あ~無いなら通行料の銅貨2枚を払ってねぇ~。」
俺とリーニャはギルドカードを見せる。
「あ~、ランクEの冒険者ね~。はいはいどうぞ~。」
適当に見える様な振る舞いで通して貰ったことに若干戸惑いつつも町中へと入っていく馬車。
あ~、と兵士が振り返って俺たちに声をかける。
「もし町の中で問題起こしたら~、最悪殺すから気をつけてね~。」
お母さん、新しい町は、とっても物騒みたいです。
二章に突入ということで、ここから文章の細かい見直しなどを行っています。(三点リーダーは2つ繋げて書く、会話中の!や?の後には空白を入れる等)
細かい変化ではありますが、これで文章が読みやすくなっている……ハズ。




