19話 命からがら依頼完了
前回のあらすじ
目が覚めたユウスケ。
ゴブリンリーダーの一撃で気絶するほど大きなダメージを受けていたことを思い出す。
アルダンの家に運ばれ、治療されて無事に生き延びたのだが、ユウスケを治療してくれたロゼッタという女性は、無差別にダメージを振り撒く暴走プリーストだった。
助かって良かったね……本当に良かったね……
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ロゼッタの教育の難易度に肩を落としたフリナは、ロゼッタを連れて帰っていった。
後でイルダさんに聞いた話だが、近々行われるポイズンビー討伐に向けて冒険者を募っている間に、ポイズンビーの戦力を分析する為の先行部隊が来ていたらしく、それが偵察役のシーフと治療役のプリーストで構成されており、そのうちの二人がロゼッタとフリナだということだった。
ちなみにこれまた初めて知った話なんだけど、俺が今まで盗賊と言っていた罠を解除したりする職業は、商人等を殺して物品を奪い取る盗賊と紛らわしいのでシーフと呼ばれているらしい。
まぁ、そりゃそうだよね。パーティに盗賊募集して罠解除する奴じゃなくて商人殺す奴が来たら困るもんね。
さて、ゴブリン討伐の話だけど。
アルダンは俺がゴブリンリーダーに気絶させられた時、俺はゴブリンリーダーに止めをさしていたらしく、ゴブリンやゴブリンリーダーの死体を取り敢えずレイに格納してもらったらしい。
そして町に帰って俺を治療した後、俺が寝ている間にレイにゴブリンリーダー御一行の死体を出してもらって、律儀に討伐部位を剥ぎ取ってくれたということだった。
討伐証明の右耳は15個、それに加えてリーダーの耳がひとつ。
ゴブリンリーダーの耳は、どちらか片方だけに二つの突起があるので、その突起がある方の耳を持っていかないといけない。
今回は他のゴブリンと同じく右耳らしかった。
その右耳達は全て小袋に分けてくれていた。
つまり、俺はもう何もすることなく依頼完了に向かえるのだ。
アルダン、責任感強いよね。
レイがアルダンの言うことを聞いてるのにも若干驚きなんだけど。
もう俺がマスターでもなんでもないのでは?
まぁそれはないか。ないね。
そういうことで、無事回復した俺は依頼完了をすべく、冒険者ギルドへと向かっているのだが……
町の人に、とても心配されます。
優しすぎるよ、この町の人達は……
どうやらアルダンがグロッキー状態の俺を担いで走って家に帰ったところとか、アルダンがプリーストに頭を下げてるところとか、色々が皆に見られていたらしく、俺がかなり重症な状態だっていう口コミが広がっていたらしい。
レイが大好きな子供達からも「スライム兄ちゃん、大丈夫なの?」と心配された。
スライムをテイムしているからスライム兄ちゃんなんだろうけど、スライムがメインにしか聞こえないよね。お兄ちゃんちょっと悲しいよ。
でも足元をよいしょよいしょと進んでいるレイを見ると、それも仕方ないように思えるね。
だって可愛いもん。
そんなこんなで冒険者ギルドへと到着した。
早速カウンターへと向かうのだが、そこには見たことの無い男性が居た。
60代か? シルバーというか白髪というか、まぁそんな色で、若干長めの毛先が跳ねてる感じの髪の毛で、体つきは別にがっしりもしてなく、ひょろひょろでもなく、それで何か豪華なローブみたいなのを着ていた。
自分の語彙力が悔やまれます。
さて、この町で今まで一度も見たことの無い人なんだけど、誰なんだろう。
「おや、依頼の完了ですかな……?」
ちょっとしゃがれた声で話しかけてきたので、俺も返事をする。
「はい、ゴブリンの討伐なんですけど……」
その人は、足元のレイに視線を落とした後、ゴブリンの討伐依頼と聞いて何か納得したような顔をした。
「なるほど、君がユウスケ君なのだね。」
「はい、そうですけど……すみませんが、あなたは?」
「私は、このギルドのマスターをやっているマグラと言う者だ。」
……え ?ギルドマスター?
えぇっ? ギルドマスターウケツケ? ナンデ?
「受付をやっていたイルダが急に治療に向かうと言うものだから、私が受付に入るしかなかったのだよ。」
マグラさんは笑いながらそう話した。
そうだ、イルダさんリーニャの代わりに受付やってたのに、抜け出して俺の治療に来てたのか。
イルダさんもリーニャも受付飛び出しすぎでしょ……
親子は似るもんだね本当に……
イルダさんに限っては、ギルドマスターを受付に引っ張り出してきてるし、リーニャよりワイルドだ。
というか、俺の治療の後イルダさんは受付に戻ってないのか。
どこにいったんだろう。
「君は、随分と人気者みたいだね。町の皆が心配していたよ。」
「はい、それはもうここに来るまでにめちゃくちゃ感じましたよ……」
「はは、そんな人気者の君と、私も一度話をしたいと思っていたんだよ。想像の通り、好青年だね。」
本当のところは多分俺じゃなくてレイが人気者なんだけど……
まぁいいか。
それよりゴブリン討伐の依頼完了だ。
「それで、依頼完了の手続きの方を……」
そう切り出すと、マグラさんは少しキョトンとして、
「ははは、すまないね。いつもは奥に閉じ籠って書類の処理をしているものだから、人と話し始めるとつい長引かせてしまう。それじゃあ、討伐証明の右耳を出してくれないか。」
早速右耳の入った小袋を渡す。
そうだ、ゴブリンリーダーが居たことも言わないとね。
「あの、ゴブリンの討伐中にゴブリンリーダーを発見したので、それも討伐したんですけど……」
「ん?どれどれ……」
マグラさんは俺の言葉を聞いて、右耳の入った袋を漁り始めた。
そして突起が二つついた耳を取り出す。
「確かに、これはゴブリンリーダーの右耳だね。という事は、ゴブリンの群れと戦う事になったのかい? 個々は弱くても、数が居ると結構厄介なものだろう。」
「そうですね、まぁ今回はアルダンさんがたまたま居たので、ゴブリンリーダーだけが厄介でしたけど。」
「へぇ、アルダン君が? そう言えば彼はその森でポイズンビーの調査をしていたのだったね。」
マグラさんは他のゴブリンの耳を数えながら、少し真剣な口調で俺に話し始めた。
「今回のユウスケ君のように、強い冒険者に手伝ってもらって依頼を完了するという事になる場合も時たまにあるものだが、あまり頼りすぎないほうが良い。Dランクへの昇級からは試験があるからね。自分の実力で依頼をこなせない人は昇級できないよ。まぁ、ユウスケ君ならそこのところは問題無いだろうけどもね。」
マグラさんはそう言うと、耳を数え終わり、銅貨を差し出してきた。
「確かに、ゴブリンの右耳15個確認したよ。報酬の銅貨15枚だ。それと……」
続いて銀貨1枚を手渡してくる。
「これがゴブリンリーダーの討伐報酬だよ。ついでに、一つ教えておこうか。」
「はい、なんでしょう。」
「魔物の討伐依頼というのは、基本的には二通りある。一つは、繁殖力の高い魔物を定期的に駆除したり、汎用素材を集める為の定期依頼だ。」
これはアレだね、ゴブリンやホーンラビットやスモールタートルのことだね。
あまり頭の良くない俺でも分かるぞ。大丈夫だ。
「もう一つは、依頼を出してまで討伐して欲しい魔物が出現した場合だ。これはあまりにも我々に対して大きな被害をもたらす魔物や、特別な素材を入手したい場合になる。これらは殆どの場合高ランクの依頼になるね。」
これは、なんだ? ドラゴンが街の近くに現れたとか、そういう緊急的な依頼のことかな?
特別な素材っていうのも、普通の冒険者が手を出すには強すぎる魔物とかの場合かな。
「そして、今回のようにゴブリンリーダー等の討伐というのは、基本的には依頼にはならないのだよ。」
「それは、なんでですか?」
「まず発生が不定期なので依頼として張り出すタイミングが掴みづらい。報告を受ければ依頼として張り出すこともあるけどね。そして、放っておくと厄介だから、なるべく見つけた時に討伐してもらうようにしているんだよ。」
なるほど、確かに狩れる腕があるならわざわざ報告に戻って来なくてもその場で狩ってくれた方が被害も少なく済むもんね。
「それで、冒険者には事前に被害を抑えてくれたお礼という意味で、報酬には色を付けさせて貰っているのだよ。」
それなら、皆も早めに脅威がなくなって、冒険者の懐も潤ってwin-winの関係ってことですね。
「さて、ゴブリンの魔石等は売らなくても良いかね? 他の冒険者は殆ど武器の手入れ用に持っているようだが。」
「あぁ、俺も一応手入れ用に持っておきたいので。」
「そうかい、それじゃあ、これで手続きは完了だ。お疲れ様。また体調が回復したら、依頼を受けにおいで。」
暖かく優しい笑顔で見送ってくれたマグラさんを背に、俺は冒険者ギルドを後にした。
ここのギルドマスター、めっちゃ良い人だ。
やっぱり、上がこういう人だと、住人も良い人が多くなってくるんだなぁ。
さて、そろそろレイにゴブリンのお肉と魔石を食べてもらわないと。
そうして、都合のいい場所を探しに歩き始めたのだった。




