11話 ホーンラビットの討伐と
前回のあらすじ
リーニャに勝手にパーティを組まれたユウスケは、リーニャと一緒にホーンラビットの討伐へ向かうこととなった。
しかしイルダさんからポイズンビーが居る可能性があるとの情報を聞く。
ビビりまくってちびりそうになったユウスケは依頼変更を提案するのだが、結局ホーンラビットの討伐へと向かうことになったのであった。
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鋭く射られた矢は、ホーンラビットの左足の付け根あたりへと突き刺さる。
いきなりの痛みに驚き飛び起きるホーンラビット。
いくら標的が止まっているとはいえども、30m程は離れているであろう距離で命中させるS+なウデマエには素直に賞賛を贈りたい。
「すご……」
リーニャの方を見ると、もう既に2発目を放つ直前だった。
いや、2発目が放たれた直後だったかもしれない。
ヒュンという風切り音がした後、こちらへ向かってこようとしていたホーンラビットの頭に突き刺さり、その場へ倒れる。
最初の矢を射てから、5秒以内の出来事だった。
「ふぅ……最初に動いてない相手の頭を外すなんて、少し腕が鈍ってるわね……」
「いやいや2発目で頭当ててるから。十分凄いから。」
「2発目は偶然よ。動いている相手の頭に当てる程の技術はまだ持ってないわ。」
いや狙って当たった矢は偶然とは言わないですから。
「ていうか5秒で倒す? 強くない?」
「ホーンラビットは素早いだけよ、攻撃さえ当たればちょちょいのちょいよ。」
ちょちょいのちょいですか。さいですか。
リーニャさんレベルおいくつなんですかあなた。
いや間違いなく俺より上だ。
もしかしたら俺の出番は無いかもしれない。
「さて、取り敢えず剥ぎ取りをしましょうか。」
そう言ってホーンラビットへと近づいていくリーニャ。
それを俺は引き止める。
「ちょっと待って!」
「なに? どうしたの?」
「剥ぎ取りは全部俺にやらせてくれないかな。経験積んでおきたいし。」
リーニャがギルドで言っていたように、この町を出たら基本ソロ活動になるかもしれない。
そうなると、その時に剥ぎ取りで手間取るより、今経験を積んで少しでも手際よく出来るようになっておきたい。
まぁホーンラビットが剥ぎ取れたからって他の魔物が剥ぎ取れるとは限らないけど。
「……分かったわ。じゃあユウスケは剥ぎ取りに専念して。私は周囲を警戒しておくから。」
そう言うとリーニャは木にもたれかかった。
それ、警戒してるの?
まぁそれは良いとして剥ぎ取りだ。
ホーンラビットは角が討伐証明部位になるので、まずは角を根本から折る。
角は戦闘中は硬いのだが、それは魔力で強化しているからで、ホーンラビットが死んでしまった後は魔力が魔石へと変わってしまう為に、角の強度も落ちて強い衝撃を与えると折ることが出来る。
と、図鑑に書いてあった。
俺はホーンラビットの角に向けてチョップを繰り出す。
「おらぁぁぁ!」
ゴッ
鈍い音を立てて、俺の手はダメージを受けた。
「痛いんですけどぉ!」
涙目になりつつ手を擦っていると、リーニャは何してんの? とでも言いたげな視線を俺に向けていた。
だって……強い衝撃で折れるって書いてあったから……
そんな目で見ないでよハニー……
気を取り直して、剣を使って角を折ろうと構えたところで、リーニャがこちらに近づいてきた。
「ねぇ、もしかして剣で折るつもり?」
「そ、そうだけど……」
「はぁ……」
リーニャはため息をつくと、バッグを漁って何かを取り出した。
「これ、使いなさい。」
そう言って差し出されたのは、小振りのハンマーだった。
「用意周到女神かよ……」
「角を折ることを知ってて持ってないのがおかしいの。ましてや手刀で折ろうとする人は初めて見たわ……」
ぐうの音しか出ない。
渡されたハンマーを使い、角に向けて振り下ろす。
いとも簡単に折れた。
「俺の手の痛みをどうしてくれるんだ……」
「擦っときなさいよ。」
言われた通り、1分程擦っといた。
角を折った後、皮を剥いでいく。
ナイフを使って剥ぎ取っていくのだが、これがまた難しい。
20分ほど経ち、めっちゃボロボロになりつつもまぁなんとか使えそうな皮がいくらか残った。
そして腹を裂いて魔石を取り出す。
肉はレイに格納して貰って、内臓はレイにそのまま食べさせた。よくわからないけど、内臓はステータスの上昇とか無いらしい。
どういう基準なんだろうね。
「終わった?」
剥ぎ取った素材と肉をレイに格納してもらったところで、リーニャから声が掛かった。
「うん、なんとか終わったよ。」
「そう、なら次いくわよ。」
へいへい、ついていきますよリーダー。
10分程歩いて、リーニャから合図があった。
どうやら、またホーンラビットを見つけたらしい。
リーニャが指し示す方を見てみると、30mよりちょっと遠い位のところに居るのが見えた。
「よく見つけるよね……」
「周りをしっかり見てたら見つけられるわよ。」
無理です。こちとらインドアなオタクやってたんです。
活発女子とは視力が違うんです視力が。
「いい? 周りを見るっていうのは目だけじゃないわよ。気配とか視線とか、そういうのもしっかりと感じる事。」
訂正。視力以外も違いました。勉強になりますリーニャ姐さん。
「今回のホーンラビットは、ユウスケも戦闘に参加しましょうか。」
「え? マジで?」
「元々アーチャーは一人で獲物を仕留める職業じゃないわよ。前衛といてこそ力を発揮するの。」
「確かに。」
それじゃあ、早速レイに行かせてみようか。
ザ・他力本願。
いつもは体当たりとかで倒してもらってるけど、今回は協力プレイなので足止めメインでやってもらおう。
「レイ、あのホーンラビットを足止めしてくれ。」
レイはぷるるんと震えた後、ホーンラビットへと向かっていった。
「…大丈夫なの?」
リーニャの心配そうな声がする。
なんか俺も心配になってきた。
ダートフロッグは相手が鈍かったからどうにかなっただけで、ホーンラビットには追い付かないかもしれない。
そんな心配をよそにぷるんぷるんと進むレイは、ホーンラビットの近くまで寄っていく。
ホーンラビットがレイに気付いた距離は、双方の距離がおよそ5mくらいのところだった。
ホーンラビットにしたらいきなり現れたように感じたのか、急に警戒を見せるが、レイにとってはもう遅かったらしく、いきなり弾丸のような速さでホーンラビットに体当たりした。
「やっぱレイには足止めとかそういう命令は難しいかなぁ……」
「いや、そうでもないみたいよ。」
俺の呟きにそう返したリーニャは、弓を引いていた。
レイの方を見ると、いつもは相手を突き飛ばす体当たりが、液体状になって相手に絡み付く様な攻撃になっていた。
「マジかよ、有能すぎる。」
「隙を作るにはもってこいの攻撃ね!」
リーニャがレイに絡まれてもがくホーンラビットに向けて矢を射る。
放たれた矢はホーンラビットの頭に刺さり、一撃で命を奪い去った。
「やっぱり命中率良すぎますよリーニャさん。」
「いきなり畏まった言葉使われたら気持ち悪いわ。たまたまよ。」
ホーンラビットの剥ぎ取りをしつつ、俺とリーニャは雑談していた。
リーニャの腕をしこたま誉めた後、レイの話題へと移った。
「しかしまぁ、よくあんなところまで気付かれずに接近したな……」
「ユウスケ、私たちはずっと見てるから分からなかったかもしれないけど、あの子結構気配消すの上手いわよ。」
「えっ、マジで?あんな近寄るまで気付かれないほど?」
スライムさん優秀すぎません?
隣でリーニャは「やっぱり特殊個体なのかしら……」とか呟いている。
レイは近くの雑草? みたいなのを吸収していた。食事か?
しかし、あれだ。
パーティって、何か良いね。
実質俺は何もしてないようなもんだけど、一人で延々と魔物を狩ったり薬草集めするより、誰かと会話できたり、協力できたり。
こんな言葉は不適切かもしれないけど、楽しいって思う。
リーニャのお陰で、一人より魔物の狩りも断然早いし、剥ぎ取り中も警戒してくれるし。
思えばリーニャは今、俺の為にやってくれてるんだよなぁ。
良い子だなぁ。
「リーニャ、俺の為に色々、ありがとうね。」
周囲の警戒をしていたリーニャは、少し小さな声で
「……ううん、気にしないで。」
と言った。




