9話 コツコツ育つ
前回のあらすじ
ダートフロッグの討伐を無事終了したユウスケは、冒険者ギルドへと戻り依頼の完了をすることにした。
必要部位の提出にギルドの持つ解体小屋へと向かい、デモランという解体責任者と会う。
解体小屋の机の上にレイに保管してもらっていた必要部位を出してもらったら、リーニャとデモランに驚かれたが、依頼完了の手続きは無事に終わった。
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「はい、これで依頼完了です。では完了報酬の銅貨15枚です。」
そう言ってリーニャは俺に銅貨を15枚渡す。
そこで、俺は今更ながらあることに気がついた。
「……銅貨、増えてきたら財布みたいなのいるよな。」
今現在は26枚。既にポケットは俺にこれ以上はやめてくれと訴えかけている。
「財布? 財布というのがどういうものか分かりませんが、銅貨ならポーチ等にいれる方が多いみたいですよ。」
そういってリーニャはカウンターにポーチを取り出した。
「銅貨3枚ですが、どうしますか?」
俺は銅貨3枚をリーニャに渡しながら会話を続ける
「こういうの、ギルドでも売ってるんですね。」
「はい、冒険者に必要な物はある程度揃ってますよ。例えば、剥ぎ取り用のナイフや砥石等も……ね。」
リーニャは俺の剣を見ながらそう言った。
剣で剥ぎ取りしたのめっちゃバレてないですかこれ。
「……もしかして、分かります?」
リーニャはクスッと笑いながら、
「デモランさんが言ってました。デモランさんはすぐわかったみたいですよ。」
そう言った。
剥ぎ取り用のナイフは銅貨1枚、砥石は銅貨4枚だった。
ポーチとナイフと砥石を買ったあの後、俺は何をやるでもなく町をぶらぶら歩いていた。
正確な時刻は分からないが、もう夕暮れ時だ。
狩りに行くには少し遅い時間だし、どこに何があるかをちょっとでも把握しておいた方が後々便利だと思ったからだった。
しかし
「腹、減ったなぁ。」
脳内ではそんなことを思っていたのだが、身体はもう休む気満々みたいで、今さっきからぐーぐーと抗議をしてくる。
宿、行くか……
そう思った時には、既に宿の前にいた。
どうやら、気付かない内に脳まで休息に支配されていたらしい。
よし、休もう。それがいい、うん、それでいい。
無理して怪我してもアレだしね。
そう決めて俺は宿に入った。
「……よぉ。」
宿に入った俺に声をかけたのは、受付らしきところにいる30代の男だった。
茶髪のボサボサ頭でメガネらしきものをかけていて、タバコらしきものをふかしながら頬杖をついていた。
あるのか、メガネやタバコが、この世界にも。
「あの、宿をお借りしたいんですけども……」
「……あぁ、こっち来な。」
見た目が無愛想というか、ポーカーフェイスというか、とにかく表情が常にムッとしているような印象を受ける男に、俺の言葉も尻すぼみ的な感じになる。
「……この紙に名前と年齢を書いてくれ。後料金は前払いだ。泊まりなら銅貨10枚、夕飯込みで14枚だ。」
「えぇっ! 結構するんですね…」
飯込み銅貨14枚とは……今日の稼ぎが殆ど残らないぞ……ツラすぎる……
でも泊まらないわけにはいかないので、名前と年齢を書き込んでいく。
「うぅっ……銅貨4枚になっちゃう…まだポーチいらなかったかも……」
そんなことを呟きながら先に紙を渡す。そして銅貨を取り出していく。
受付の男は紙に目を落として、何やらジーっと見ていた。
「……ほぉ。ユウスケね。」
やっぱ名前で転生者かどうか分かるんだろうか、分かるんだろうなぁ。
だってこっちの世界ユウスケとかいなさそうだし。
1枚1枚別れの言葉を掛けるかのように、別れを惜しみながら銅貨を取り出していたところへ声がかかる。
「……いつ降りてきたんだ?」
「え? あ、あぁ転生のことですか? 今日の昼頃です。」
「へぇ……」
「……?」
今の質問何か意味あったのかな? いや普通に興味があっただけであんまり意味ないのか。
そうして泣く泣く14枚を取り出して受付に出すと、受け付けの男はそこから8枚だけ取り、6枚を返してきた。
「へ?」
「冒険者になったばかりは稼ぎがねぇだろ? 割引だ。Eランクになったら正規の値段で泊まってもらうから安心しな。」
「マジすか! ありがとうございます!」
エマの町いい人多ない? Fランクの間割り引いてくれるなんて優しすぎるだろ。
これは食料になりそうな魔物の肉とか手に入れたらお礼に持ってこよう。
そんなことを考えていたら声をかけられた。
「リビテラ。」
「……?」
「俺の名前だ。お礼ならいくらでも受け取るから、ギルドにでも通してくれや。」
そう言って右手を差し出してきた。
これは、日本での俺の人生ですらあまり縁がなかった握手ですね?
ムッとしてる顔してるけど優しい人ってよく分かるね。
「よろしくお願いしま……」
俺が右手を差し出すと、リビテラは握手をしようと差し出した右手をスルーしてスライムのレイをツンツンした。
「今日のところはコレでチャラにしといてやる。」
そう言ってリビテラはケラケラと笑った。
〜
宿を借りるようになって1週間ほどたった。
今では俺もこの村にだいぶ馴染んできてる。
レイを抱きかかえて街を歩いていると、子供が寄ってきたのがきっかけだ。
流石テイム関係なく子どもたちに持ってこられるだけあって、スライムは大人気だった。
そしてその光景を見た大人たちとも、軽く世間話を交わしていく内に仲良くなっていった。
ギルドの方では、そもそも冒険者が少ないエマの町で転生者として目立っており、毎日のように依頼を消化してることもあってそれなりに信頼されてきた、と思う。
毎日依頼を受け、時折依頼を受けずに魔物をまるまるレイに食わせたりして過ごしてきた。
そして分かったことがある。
まず、同じ魔物は食わせれば食わせるほどステータスの伸びが悪くなるってこと。
ダートフロッグもあの後3匹くらい、つまり合計10匹程で極端にステータスが伸びなくなった。食わせれば食わせるほど伸びるわけではないみたい。
だからそれ以降は魔石を全部ギルドに売っている。
新しい魔物、探さなきゃなぁ……
そして次は、レイにまるまる魔物を食わせていると、金欠に陥るということだ。
当たり前だわ。
素材としてギルドに何も売らないんだから、そりゃ収入はない。依頼を受けているわけでもないから、完了報酬もない。
宿に泊まれないかと思った。いや普通に考えれば分かるけどね?アホだったね。
そして最後に……
レイの身体に指を埋めてみたらプツッって感じで指が入っていって、まるでスライムに指が包まれているようだった。
いやスライムに包まれているんだけど、前世界のほら、生物じゃないネバネバしたスライムに包まれてるような。
まぁ、ちょっとひんやりして気持ちよかった。
それは置いといて、1週間も狩りをしていると、当然俺やレイも育ってくるわけだ。
俺も5Lvというキリの良い数値になり、レイも魔物の吸収で強くなった。
冒険者ランクもEランクに上がり、幅の広い依頼を受けることが出来るようになった。
そうなればやることは一つ。
Eランクの魔物を吸収しに行く。
レイには早く強くなってもらって、俺の本来の目的であるモン娘確保に貢献してもらわないといけない。
その為の必要投資だ。
そういうわけで俺は今、依頼ボードの前に立っている。
人生初のEランク依頼を受けるべく。
「Eランクの依頼、受けるの?」
声をかけてきたのは受付嬢のリーニャだ。
もう2日前くらいからカウンター越しでも仕事口調じゃなくなってる。
そう、前の世界では考えられなかった『女の子と仲良くなってる』状態なのだ。多分。
キモいみたいな目線しか向けられなかった俺にとっては、何が好意で何が普通なのか分からないので、
いや、やめようこの話は。
リーニャに先程の返事をする。
「流石にもうEランクの依頼も大丈夫かなと思ってさ。」
「そうね。というか、Eランクに上がってもう2日経つのにまだFランクの依頼やってるのもどうなのって感じだけど。」
「いや〜手厳しいなぁ、命を大事にだよ。いくら剣と盾を持ってるって言ったって、一応テイマーだからね。」
Eランクに上がったばかりでEランクの依頼を受けたらそれこそ死亡フラグだから! 俺はコツコツ進んでいくのさ。
「あ、そういえばユウスケはテイマーだったわね。従魔つれてないから忘れてたわ。」
「一応レイも従魔なんだけど……」
「スライムはマスコットじゃないの?」
「いやいやレイさん強いからね! マジ俺より強いからね!」
確かにレイは子どもたちにも大人たちにも大人気のマスコットだけど!
正直俺が戦うより強いから! 舐めたらアカンでマジ。
「Fランクの魔物とか、もうレイさんが体当たりしてれば勝手に倒してるから……」
酸弾つかってみたら、えげつない感じに溶けたので可哀想だった。
たしかに強いけど、素材も状態が悪くなるから使い所が難しいんだよね。
「ふぅん……」
リーニャはそう相槌を打って、カウンターに頬杖をついた。
さて、依頼を探しますかい。
といっても、もう受ける依頼は決まっていた。
ボードからホーンラビットの依頼を手に取り、カウンターに持っていく。
「よし、これを受けるよ。素早いって聞いてるけど、俺とレイで挑めばどうにかなるだろ多分。」
ていうか多分レイに任せておけばどうにかなるだろ。
何という他力本願。
リーニャは依頼書を受け取り、ボーッと眺めた。
「……あのー、これ受けたいんですけど? リーニャさーん?」
リーニャの顔の前で手を振ってみたりしたけど、何か反応がない。
寝た?リーニャさんちょっと職務怠慢ではないこと??
するといきなり机をバンッと叩いて立ち上がり、
「決めた! ユウスケ! 私も行くわ!」
そう宣言した。
2016/12/07 宿を借りるようになってから5日ほど→1週間ほどへ変更。




