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異世界転移は糞ゲー人生のはじまり  作者: 夢野天瀬
第2章 本番糞ゲー開始
22/98

17 作戦その1

 街の作りは中世ヨーロッパ風で、レンガ調の建物が多く、高さも三階建てくらいの建物が目立つ。

 その街並みは、この世界の文明から考えると、近代的だと言わざるを得ないだろう。

 そんな建物を隔てる道は思ったより広く、ゴミゴミとした印象と懸け離れていた。

 更に、その道端では沢山の露店が並び、沢山の買い物客が行き来している。


「ところで、如何するの?」


 露店をチラ見しながら歩いていると、俺の左腕に右腕を絡めているミーシャルがカオルを抱っこした状態で尋ねてくる。


「如何するのとは?」


『クエストの件だと思うよ』


 態々ご丁寧にカオルが解説してくれる。

 まあ、知っていて惚けたんだが、全く意味がないよな。


「まさか、嫁にするとか言わないよね?」


「てか、犯るだけやって捨てる訳にはいかないだろう」


『まあ、女の僕としては、そんな男は始末するだろうね。殺さないまでもちょん切るね』


 何をだ! 何をちょん切るんだ! てか、普通なら、そういう事になるよな。


「いいじゃん。サクッと城に忍び込んでやっちゃえば」


 このエルフは悪魔だな。我が身に置き換えて考えることは出来ないのだろうか。


「ミーシャル。もしお前があの豚エルフに無理矢理犯されたら如何する?」


「死ぬわ。絶対に死んでやるわ」


「それと同じなんじゃないか?」


「う~~~~~~」


 流石に、病んでる俺でも、女を無理矢理に犯すのだけは抵抗があるわ。

 男を始末するのなら、何とも思わずサクッとれるがな。


『あっ、ここじゃないかい?』


 カオルの呼び止める声に、視線をそちらに向けると道具屋と書かれた看板があった。

 どうやら、目的地に到着したようだ。

 そう、俺達は馬車を売るために道具屋に来たのだ。

 というのも、宿屋に行ったら恐ろしい程の金額を言われたので、先に馬車を売る事にしたのだ。

 どうも、武闘会があるということで、沢山の人が集まり物価が跳ね上がっているようだった。

 だって、平凡な宿に泊まるのに、一人一晩大銀貨三枚だぞ。日本円にして三万だぞ! 三万!

 一瞬、テント暮らしで事済まそうかと思ったくらいだ。


 そんな理由もあって道具屋へ来たんだが、馬車の金額を聞いて慄いた。


「う~~~ん、少し汚れているが、傷も無いし、手入れもいい。作りもしっかりしてるな。よし、奮発して金貨三百枚だ」


「売った!」


 速攻で売っちまった! てか、抑々要らない物だし、盗んだものだし、この世界も満更悪くないじゃん。


「じゃ、これが代金だ」


 店の中に戻ると、オヤジがカウンターに金貨の袋をどさりと置いた。

 俺はそれを受け取るとアイテムボックスに仕舞おうとしたのだが、カウンターに上がったカオルが俺の手を引っ掻く。


「いてっ!何すんだよ!」


 いや、カオルが悪戯する訳は無い。


『お金を確かめてみないと』


 カオルが言う通り、そうするべきなんだよな。

 未だに日本の習慣が抜けないな。


 俺は丈夫な布袋の口を開き、中に手を突っ込んで掌に金貨を取り出す。

 ん~~~、分からん。見た目は大丈夫そうだが......


『それ、贋金が混ざってるね』


 なぬ~~~~~!


『どれが贋金だ?』


 カオルの言葉を聞いて、俺は台の上に金貨を全て出す。

 すると、カオルが次々と金貨に足を乗せていく。


『偽物、偽物、本物、本物、本物、偽物』


 俺は言われた通りに、金貨を仕分けて行くが、目の前のオヤジの顔がドンドン青くなっていく。


 おいおいおい! 奮発しているのは贋金ばっかじゃね~~か!


 カオルに全てを調べさせる訳にもいかないので、自分で偽物と本物を比較してみると、俺の目でも違いが分かった。

 怒り心頭になりつつも、残りは俺の判断で仕分けして...... 結局、半分が偽物だった。


「オヤジ、死にたいならそう言えよ!」


 俺はアイテムボックスから取り出した金属バットをオヤジに突き出し、殺気をバラ撒いて恫喝する。

 どうも俺の殺気はヤバいようだ。オヤジは涙を流しながら平謝りしてくる。


「済みません。二度としません。だから、命、命だけは」


 このオヤジは勘違いしているようだな。


「オヤジ、二度とするな。なんて言ってね~ぞ」


 その言葉にオヤジは驚く。だが、何を驚いているのかさっぱり分からん。


「俺を騙すなと言っているんだ。他の奴等がどうなろうと知ったこちゃね~。だから、やるなら他のバカ共にしな」


 結局、このオヤジとは和解し、金貨三百枚を手に入れた。更に、許す代わりに良い情報があれば俺に寄こすと言う約束になっている。

 こうして金貨を手にして店を出たのだが、暫く歩いたところでカオルが話し掛けてきた。


『あの男は使徒だと思うよ。奴の情報には気を付けた方が良いよ』


『まじか!』


『マジマジだよ。奴からは胡散臭い臭いがプンプンしたもの。あの贋金も態とだと思うよ。君との関係を深める為に態と贋金を掴ませたのさ』


『じゃ、あの店には行かな方が良いかな』


『う~~~ん。嘘の情報を貰って裏を掻く手もあるから、利用する事も出来るけど。颯太って裏を掻ける程に知能がある?』


『ミリです。近寄るのを止めましょう』


 最終的に、頭脳勝負を苦手とする俺は、使徒との関係は持たない方向で進める事にするだった。







 買い物も終わり、現在は無事に宿の部屋にいるのだが、ここに至るまでに結構な時間が掛かった。

 というのも、金が増えた処で、ミーシャルが武器が欲しいと言い出したのだ。

 彼女だけ丸腰というのも不安なので、武器屋に行き彼女の好みの武器を買い与えたのだが、その金額を聞いてぶっ飛んだ。


「弓と矢で金貨百五十枚ってぼり過ぎだろ」


「でも、短剣も付けてくれたわ?」


「それにしても高くないか?馬車の半分だぞ?一千五百万だぞ!」


「なに?その一千五百万って」


「いや、何でもないんだ......」


 弓の金額に愚痴っていると、カオルから慰めの言葉が入った。


『その弓はかなりの良い物だよ。あの武器屋は真面そうだ。それにその短剣もかなりの上物だよ』


 う~~む。まあいいか。泡銭だしな。


 色々と文句を言っているが、抑々が盗んだ馬車だし、タダで購入したようなものなのだ。文句を言う方が間違っているのだろう。


 俺は宿のベッドに転がり、そう己に言い聞かせて目を瞑る。

 別に寝る訳ではない。

 今後の行動について考えているのだ。


 あのクエストだが、王女を犯っちまうのはいいけど、責任を取る必要があるな。

 まあ、本人が好き物で、誰とでもエッチするような人間ならそんなに悩む必要もないのだが、一国の姫君に限ってそんな事は無いだろう。

 オマケに武闘会の大会優勝者と戦う程の戦闘狂ときている。

 犯す処か、俺の方がバッサリと遣られる可能性だってある。

 あれ? そういえば、あの臭いオヤジ達が何か言ってたな。

 そうだ。あの姫様に勝てば嫁に出来るんだ。それなら嫁にしてから犯っちゃえばいいんだよな?

 よし、我ながらナイスな案だ。


「おい!方針が決まったぞ!」


 今後の行動について俺が声をあげると、隣のベットでカオルと遊んでいたミーシャルがズサッと起き上がる。


「えっ、やるの?やるよね?やっとなのね。ぎゃぶ」


 どうやら、この万年発情エルフは何かを勘違いしているようだ。

 俺は一言もそんな事を口にしていないのに、何故、直ぐにエッチな方向に進むのだろうか。


『まあ、盛りの付いたエルフは置いといて、如何するんだい?エルローシャ姫の件だよね?』


 カオルは犯る犯る煩いエルフに猫パンチをクリーンヒットさせてから、俺に向き直って尋ねてくる。


「ああ、武闘会に参加するわ」


『ああ、なるほど、正式に嫁にしてからぶち込むんだね』


「ぶち込むとかいうなよ。一応、女なんだろ?」


『一応とは失礼だね。三本傷が欲しいのかい?』


「いや、すまん。だってさ、女がぶち込むとか言わんだろ」


『まあ、糞ゲーワールドに汚染された所為だ。気にしないでくれよ』


「あの、ぶち込むなら私に~~~!ぐあふっ」


 真っ盛りのエルフは、見事にカオルの猫パンチをぶち込まれたのだった。







 そこには沢山の厳つい男達が集まり、強さよりも臭さを競い合っていた。


「ぐざっ~~~~~!汚臭は朽ちるべし~~~~!」


 どうやら、エルフは鼻も利くらしく、この場に漂う雰囲気はまだしも、臭いの方には辟易としたようで、ミーシャルは鼻を摘まんだ状態で罵り声を上げた。


 悪臭にその綺麗な顔を歪ませて俺の腕に絡まるミーシャルを引き連れて、長い机に沢山の係員が座る受付へと赴いた。


「武闘会の受付はここでいいのか?」


 ぶっきら棒な物言いで、机に着く男に問い掛けると、その男は俺の事を上から下までジロジロと観察する。

 現在の俺はボス牛から貰ったローブを着て、頭からフードを被っているので、如何見ても変態には見えない筈だ。

 しかし、その男は何時までも俺を観察している。


 返事くらいしろや! ぶっ飛ばすぞ!


「何とか言ったらどうだ?」


 堪忍袋の緒が切れて、無言で俺を観察する男に殺気の篭った声で問い掛けると、流石に己の行動が拙いのだと判断したのか、受付の男は慌てて対応を始めた。


「あ、あ、はい。はい。ここで間違いないです。ですが、参加されるのですか?」


 何故、そこでそんな質問が出て来るのだろうか。

 まあいい。そんな事は如何でも良いのだ。

 俺はこの武闘会に優勝して姫さんさえ頂ければ満足なのだよ。


「勿論だ。そうでなかったら、こんな臭い所にくるか!」


 未だに怒り冷めやらぬ俺は、ついついケンカ腰の台詞になってしまう。


『颯太、堪えて、堪えて』


 そうだ。ここで暴れたら、全てが台無しになるかも知れない。我慢だ。我慢。


「で、では、ここに手を置いて下さい」


 そこにはバレーボールサイズの水晶玉があり、受付の男はそこに手を置けと言う。

 何かは良く分からんが、言われるままに手を置くと、男が驚きの声を上げる。


「じ、じ、十ですか?」


 十と言われるとレベルの事しか思い浮かばないが、その事を言っているのだろうか?

 俺の疑問を余所に、受付の男は続けて話掛けて来た。


「あの~、レベル十で参加するのは無謀だと思うのですが」


 どうやら、レベルの事で合っているらしい。


「気にするな。世の中レベルが全てじゃない」


「ですが、幾らなんでもあんまりだと思うのですが」


 その時だった。俺の肩に手を置く者が現れた。

 その手の持ち主に視線を向けると、二メートル近い身長で筋肉モリモリのボディービルダーが立っていた。


「おい!邪魔だ!ここはお前のようなモヤシが来るところじゃね~んだよ!」


 そのガタイに一瞬だけビビるが、ボス牛に比べれば大したことは無い。

 そう思うと、竦んでいた足がぴしゃりとするのが分かった。

 更に、俺の中でこの男が虫けらのように思えてくる。

 だから、言ってやった。


「何勝手に俺の肩に手を置いてんだよ!殺すぞ!デブ!」


 そんな罵声が轟くと、周囲の者達から驚きや嘲りが飛んできた。


「あいつ、ゴガーズに喧嘩を売ったぞ」


「バカだな。あと三分で挽肉に変わるぞ」


「命知らずだな~。この辺りで奴に喧嘩を売る奴なんて居ないってのに」


「世間知らずは命を落とすとは、よく言ったもんだぜ」


 黒猫耳のお蔭で周囲のコソコソ話が全て聞こえてくる。

 なかなか便利な装備だと言えるだろう。

 なんて考えて居いたら、ゴガーズと呼ばれた男が真っ赤になって唸っている。


「オレを殺すだと!ミンチにしてやる」


 怒り心頭でワナワナと震えるゴガーズがそう言うと、すぐさまそのモリモリの筋肉をピクピクさせながらパンチを繰り出してきた。


 うは~~~、糞おせ~~~~!


 その一撃は俺の目からすると、ナメクジが這うように遅かった。

 だが、俺はその攻撃を避けずに、迫りくる拳の横から右手で打撃を加える。

 俺の一撃は乾いた音を轟かせ、奴のパンチを吹き飛ばす。

 次に起こったのは呻き声だった。


「ぐが~~~お、おれの、オレの手が~~~~」


 そう、奴の手の骨は俺のパンチで粉々に砕けているのだ。

 苦痛に呻く奴に、俺は更に追い打ちを掛ける。


「次は何処を砕いて欲しいんだ?ハッキリ言えよブタ!その筋肉は飾りか?てか、俺をミンチにするんじゃなかったのか?」


 俺の辛辣な台詞で、奴は痛みを忘れたかのように左手で殴り掛かってくる。


「ごろじてやる!いぎのねを止めてやる」


 だが、奴のパンチが俺に届く事は無い。

 そのパンチが届く前に、奴は宙の人となっているのだ。

 俺が奴の腹にパンチを喰らわせて吹き飛ばしたのだ。

 奴が宙を舞う光景に、全ての者が目を向けていた。

 しかし、俺は受付の男に言う。


「ほら、レベルが全てじゃないだろ?」


 俺の声で我に返った受付の男は、何度も頷きながら武闘会参加の手続きをしてくれたのだった。



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