冒険者になろう①
魔法が使える事がバレて7年がたち、10歳になった。
俺は今、レオンと剣術の稽古中だ。
「はっ!!」
鋭い気合とともにレオンが踏み込んで、上段から剣を振りおろしてくる。それを剣を斜めにして衝撃を流しながら受け、脇腹に蹴りを放つ。レオンは左手を剣の柄から外し受け止める。
最初は全くかなわなかったが、今は魔法も使えばレオンと互角に渡り合えるようになってきた。
「ご飯できたわよー」
というマーシャの呼び声で稽古は中断した。
「なぁトモヤお前冒険者ギルドに登録したらどうだ?」
「え?ギルド?ギルドって13歳からじゃないと登録できないよ?」
この世界にもやはり冒険者という職業はある。その冒険者をまとめるのがギルドな訳だが、そのギルドに登録できるのが13歳からなのだ。
「なに、そんなに厳しい検査があるわけじゃないから大丈夫だ。それにお前はもう俺や母さんと互角にやりあえる力を持っている。仕事にもついてきて実戦経験もだいぶついてきたから十分やっていけるさ。」
レオンとマーシャは元SSランク冒険者の肩書きもあって時々国から依頼を受けることがある。
「ついてくるか?」と軽く言われついて行ったら、下級の飛竜の相手をさせられた。下級とは言っても竜は竜だ。Aランクの冒険者がパーティを組んでやっと倒せる程度だ。ぎりぎり倒したが、当時は6歳だったので死にかけた。本人達いわくやばかったら助けたそうだ。あの時はまじで両親を恨んだ。
今ならワイバーン程度余裕だけど。
そんな俺の気もしらないで、マーシャもレオンの言葉に同意する。
「そうよ。魔法も私より使い方上手いし、もっと自分に自信を持ちなさい。あなたは強いわ。」
まぁ冒険者にはのちのちなるつもりだったし、早いぶんには問題ないだろう。
冒険者になったら一気に行動範囲が広くなって、詩織も探しやすくなるだろう。
「じゃあ、ご飯食べたら街に行ってくるよ」
「おう。頑張れよ。最初はゴブリン退治とかだから物足りないと思うけどな。」
「あなたならわたし達より強くなれるわ。頑張ってね。」
なんか旅立ちの時みたいな感じだけど、戻ってくるからな?
そして今、俺はマーシャからもらった紺色のローブを着ている。これは付与魔法がされており、そこらの鎧よりは防御力は高い。腰にはレオンからもらった片手剣がさしてある。この剣はミスリルでできており、魔力が流れやすい。魔力を流すと、切れ味や強度が上がる。どちらもとても高価で、特に剣はミスリルの加工は難しく名のあるドワーフが鍛えた業物らしい
明らかに駆け出しの冒険者の装備ではないが、これらを装備して身体強化の魔法を全開にして森を疾走している。時々魔物や動物とすれ違うが無視する。森を抜けて草原にでる。道があるので、道なりに走っていけば街が見える。
街には何度も来たことがあるが、ギルドには入ったことがない。
関所を身分証明書を見せることで通り、街に入る。
街は多種多様な人種がいる。人間は当たり前だが、獣人、エルフにドワーフ。ざっと見ただけで、こんなに見つけることができる。そんなことを考えながらギルドに急ぐ。
ギルドの前についた。扉を開けて中に入ると、酒と鉄が混ざったようななんとも言えない独特の匂いがした。
中は正面にカウンターがあり、受付嬢が依頼を受けに来る冒険者達をさばいている。その左側には酒場があり、冒険者が昼間から酒を呑んで騒いでいる。その向かいの右側にはクエストボードがあり、たくさんの依頼が貼ってある。
中に入っていくと俺に視線が集まってくるのがわかる。やっぱり子供だからか?絡まれたら面倒だな。とか考えていたら案の定、カウンターにつく前にに声をかけらけた。
振り向くとそこには、巨大な斧を持った半裸に近い筋肉隆々の男がいた。めんどくさい。
「おい!そこのガキ!ここはお前みたいなチビがくる場所じゃないんだよ!家に帰ってママのおっぱいでもすってろ!」
脅すようにドスをきかせて怒鳴ってきたがぶっちゃけ全く怖くない。酔っている様だ。
ガハハハ、と下品な笑い声が周りからでる。
「てんぷれきたー」
と小さい声で呟く。
「なんか言ったかガキ?」
ふむ。こいつはおつむだけじゃなくて耳も悪いみたいだな。よし、無視しよう。
無視してカウンターに向かうと、
「おい!無視するな!!俺が誰がかしらねぇのか!!」
知るかよとか、思いながら一応めんどくさいオーラ丸出しで答える。
「知りませんよ、あなたなんて。うざいんでやめてもらえませんか?」
一応敬語は使ったが余計に馬鹿にした感じになったな。案の定顔を真っ赤にして。
「てめぇ、バカにしてんのか!!?俺はCランク冒険者のガドーだ。二度と忘れないようにその体におしえてやろうか!!?」
と拳を後ろに振りかぶった。隙だらけだなCランクらしいので普段はもっとましなのだろうが酔っているというのがいただけない。
「ちょっと!!やめてください!!」
カウンターから止めの声が掛かるが、聞く耳を持たない。
はぁ。やるしかないか。薄々こんな事になるんじゃないかとは思ってたけど、当たるとは。不幸だ。
「オラァ!!!」
ガドーと名乗った男は拳を叩きつけてきた。力任せの一撃。キレもスピードもない。完璧に舐められてるな。
その攻撃を余裕をもってかわすと、足に身体強化をかけて、一瞬で懐に潜り込む。無防備な鳩尾に強化をかけた掌底を叩き込むと「うっ!?」と呻いて気絶した。
軽くしか強化かけてないんだけどなぁ。これでCランクか。このくらいで沈むのは流石にCランクにしては情けなくないか?レオン達が規格外過ぎるだけか?あの人を基準に考えるのはやめよう。
と、その規格外に育てられた自分も規格外という事に気づいていないトモヤであった。
魔法等の足りない説明はのちのちしてきますので、今後ともよろしくおねがいします。感想を残していってもらえるとありがたいです。