迷宮攻略⑤
「とりあえずギルドカード取りに行くか。」
「そうだね。カードがないとダンジョンに入れないんだよね?」
「みたいだな。」
ということで、俺たち一行はギルドに向かう途中だ。
朝ということもあって、仕事に向かう冒険者や労働者などで人は多い。
昨日は夕方にようやく町に着いたというのもあって、あまり町並みをゆっくり見る余裕はなかったが、改めて眺めると町の大きさの割に人も多く、大通りには屋台なども立ち並んでおり、賑わっている印象を受ける。
通行人はやはり迷宮がある町ということで鎧と大剣を持った戦士やローブと杖を持った魔法使い、軽装でナイフを腰につけた盗賊、身の丈ほどあるリュックを背負ったポーターなど冒険者を数が多数を占める。
屋台も冒険者をターゲットにしたスタミナのつきそうなボリュームのある物が多いように見える。
町を眺めながら、時々屋台で買い食いしたりしていると、目的の冒険者ギルドに着いた。
中に入ると、やはり昨日のように様々な視線が突き刺さる。
しかし、昨日のように絡んでくる奴はいなかった。やっぱりシオリの回し蹴りが効いたか。
何事もなくカウンターに着くと、何人かいた受付嬢の中に昨日対応してくれた人がいたのでその人のところに向かう。
「おはようございます! カード取りに来ました」
シオリがニコニコと愛想よく受付嬢に話しかける。
「おはようございます。ギルドカード出来てますよ。….…こちらです。」
受付嬢は俺たちの顔を覚えていたのかにこやかな営業スマイルで対応してくれた。
若干顔が引きつっていたのは気づかなかったことにしとこう。
まずシオリが受け取って、その後イグニスとシュバインが順番に受け取った。
「ギルドについての説明はいりますか?」
「いや、俺が教えるんで大丈夫ですよ。」
「分かりました。それでは良い冒険者ライフを」
相変わらずの営業スマイルだ。しかし頬が引きつっいる。
まぁ、大男吹き飛ばす女の子なんか昔の俺でもビビる。
それから、ギルドの売店でダンジョンの攻略済みの階層までのマップを買った。結構高かったが懐には余裕がある。
そしてギルドを出て、ダンジョンに向かう前にやることがある。
「まずは、イグニスとシュバインの装備を買いに行こう。」
「別にそんなものいらんぞ? わしらのこの服は魔力で編んだ物じゃから、その辺の装備よりよっぽど硬いからの。」
「そうですよ。逆に邪魔になると思うんでいりませんよ。」
イグニスの言葉にシュバインが同調する。
今、イグニスは赤、といっても白いドレスを血で染めたような深紅のドレスを着ており、俺たちがギルドで浮いていた理由の一端はこれにある。
シュバインは青いポロシャツにズボンといった一般的な格好だが、こいつらの服は炎龍王とフェンリルという伝説級の魔物の魔力で編まれた物でイグニスやシュバインの元々の姿の鱗や毛皮に匹敵する防御力を持つ。それに加えて汚れが自然に落ちて、状態異常完全無効とやりたい放題の国宝級の装備なのだが……。
「お前らの格好だと多分中に入れてもらえないぞ? 登録だけなら装備を持ってきてないと思われてただろうけど、流石に迷宮に挑むのにその格好はとめられるだろ。だからせめて外套とそれっぽい武器だけは買っていこう。中に入ったら外していいからさ。」
「それもそうじゃのぅ。中で脱いでいいならわしも別に構わんぞ。」
「イグニスたんがいいなら、俺も問題ないです。」
ということで商業区の武器や防具が売っている店に来た。
中に入ると、ずんぐりむっくりのひげを生やした親父が奥から出てきた。
「なんじゃ、客と思ったら子供じゃないか。冷やかしなら帰れ。」
なんとも無愛想なドワーフなことで。頑固そうでイメージぴったりだな。
しかし、親父を見るなりシオリが
「ねえねえトモヤくん。あと人ドワーフだよね? 初めて見たよ!」
シオリの国にはドワーフはいなかったから珍しいのだろう。目を輝かせている。
「なんじゃ。ドワーフを見るのは初めてか。」
「はい!初めて見ました。イメージ通りでびっくりしましたけど」
「まぁ、ドワーフはわしみたいなずんぐりむっくりがおおいからな。」
「いえ、鍛冶とかうまそうでいい仕事しそうだなって思いました!」
「そうかそうか! はっはっはっ! お嬢ちゃんわかっているじゃないか!」
シオリに褒められた親父は気を良くして大笑いしていると、奥から出てきた女の人に思いっきりぶん殴られた。
「お客さん放ってなにやってるんだい!」
この人もドワーフだろう。ヒゲは生えてないが身長は小さく、子供にしか見えない。
「ごめんなさいねうちの人が、腕はいいんだけど無愛想なのとすぐに調子に乗るのがたまに傷でね。
……それで今日なにを買いに来たんだい?」
この人は見た目によらず肝っ玉母さんみたいだ。
親父が涙目で頭を抑えている。
「えっと、子供用の外套とショートソードを2本ずつ貰えますか?」
「はいよ。外套とショートソードだね。外套はサイズが違うのをいくつか持ってくるからショートソードはその辺に置いてあるのを選んでおいて」
と言って奥に引っ込んでいった。
なので、どうせ使わないので安いのを適当に選ぶと、ちょうど外套を何着か持って戻ってきた。
これもサイズが合うのを適当に選んで金を払って店を出ることにする。
外は俺たちが起きるのが遅かったのもあってお昼くらいの時間になっていた。
小腹もすいてきたので出店で美味しそうな物を次々と買って腹を膨らませながらも余分に買ってアイテムボックスの中に閉まっていく。
アイテムボックスの中は時間が止まっているのでダンジョンの中でも暖かくて美味しいご飯が食べられるというわけだ。
ぶらぶらしていたらダンジョンに潜る時間も無くなってきたので、潜るのは明日からにして宿に戻りながらも観光を続けていると、大通りのほうが騒がしくなってきた。
「大通りに人が集まってるね。どうしたんだろ?」
「さぁな。とりあえず俺らも行ってみるか。」
大通りに着くと人集りがやはり凄かった。
「すごい人だね?お祭りでもやるのかな?」
「いや、そんな話は聞いてないけどな。この人数だと町のほとんどの住民が集まってるんじゃないか?」
そのくらい人混みの中で盗賊の女の人が近くにいたので
「あの、これから何かあるんですか?」
「あら、知らないの?勇者様ご一行がこの町に到着したそうよ。」
ああ! そういえば朝宿で商人たちがそんなこと言ってたな。すっかり忘れてた。
勇者を一目見ようとこんなに人が集まっているのか。
しかし、俺たちの身長が低いので大通りの真ん中が全く見えない。
なので、シオリとイグニスの手を握って、何度か迷惑そうな顔をされたが気にせず、人混みをかきわけかきわけ、なんとか人混みの最前列までたどり着いた。シュバインには悪いが自分で頑張ってもらおう。俺の手は2つしかないんだ。
しばらくすると町の門の方からそれらしき馬車が1台周りを衛兵に囲まれてこちらにゆっくりとしたスピードで姿を現した。
「ねぇ、トモヤ君。あ、あれって咲ちゃんと俊哉君だよね? 」
そう、シオリが震えた声で声をかけてきた。シオリの顔は驚愕で目を見開いていた。
シオリの顔から馬車に目をやる。さっきは遠かったが、今は近づいてきてもう俺たちの横を通り過ぎようとしている。
この距離なら見間違えようもない。
確かに俺たちの幼なじみの金沢俊哉と小宮咲だ。俊哉は少し照れくさそうに手を振っている。咲は背筋をピンと伸ばした凛とした佇まいで
「ど、どうしてあいつらが……。勇者として召喚されたのってあいつらなのか?」
俺たちの様子を見てイグニスが
「おい、どうしたんじゃ? あの勇者共になにかあるのか?」
そう声をかけられて、ハット我に返る。そして
「俊哉! 咲!」
声を張り上げて幼馴染達の名前を呼ぶが周りの喧騒にかき消されて聞こえなかったようだ。
俊哉は反応していたように見えなくもなかったが。
そして勇者達を乗せた馬車は俺たちからゆっくりと遠ざかって行った。
勇者サイドの咲と俊哉に幼馴染設定を付けたかったので1話の内容を変えました。良かったら見てみてください




