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おさかなと、森のめぐみと。

 そのとき、ほにゅは内陸の山里にいました。まだ波動生物が珍しい見世物になるくらいの、人の行き来が少ない村です。交通の要所から外れた場所にあるし、特に観光するような場所もありません。木材を取る人は居ますが、外に売ることはなく、村の中で使うだけです。

 ほにゅは、さらに森の奥に山菜を取りに行くところです。いつもの港と少し違う小さな港町で頼まれました。山菜や肉、木の実を取って、お礼に魚を貰うのです。どうやって持ち運ぶのかは秘密です。


 獣道をぽてぽてと進んでいくと、足に怪我をして木陰で休んでいる狩人が居ました。傷口を縛った布にはじんわりと赤いしみが見えます。少し上を、止血のためにきつく縛ってあり、鞄の脇には傷口に塗ったのでしょうか、薬のびんや薬草がいくつか見えます。痛みが少し楽になる効果がある葉っぱを数枚残して、出したびんや薬草をしまいながら、狩人は悔しそうにああだったのに、こうだったのに、と呟いているのがほにゅには聞こえました。


「この先には高く売れる薬草や、薬の材料になるきのこがいっぱいあるのになぁ」

「こんな入り口で、こんなにひどいことになるなんてなぁ」


 確かに、まだそれほど奥に進んでいない場所です。鳥が木に止まっていたりするくらいで、肉を食べるために取るような動物はいません。まして罠を仕掛けるような大型の動物は痕跡すらありません。しかし、狩人の愚痴を聞いていると、彼の足の傷は動物を取るための罠ではさんでしまったもののようです。不思議に思ったほにゅは、奥に進む際に普段より慎重に、周りを探りながら行く事にしました。


 すると、あちこちにウサギなどを取る小さな罠が仕掛けてありました。さらに、進んだ先で薬草を根こそぎ取っている人を見ました。薬草を取った人は、そばにある大きな木の根元に生えている、椎茸に似たきのこを、まだしめじくらいの大きさのものまでごっそりと取っていきました。

 これでは、次に生えるきのこや薬草が極端に減ってしまいます。人が沢山来る村なら、一人当たりの取っていい量を決めたり、ガイドをつけて見張ったりすることも出来ますが、小さな村ではそうもいきません。誰も気付かなければ、どんどん収穫が減って、村の人もまわりに住む動物達も困ってしまいます。


 ほにゅは、まだ手をつけていない薬草を少し取ったあと、そのままそこに居て、乱獲者を待ち構えました。彼はほにゅをちらりと見たものの、気にせず手を伸ばしました。案の定、彼は葉をちぎるのではなく数本まとめて根こそぎ引き抜こうとしています。


「まってーーー!」

「うるさいな、なんだようおまえ」


 突然大声を出された乱獲者はさすがに手を止めました。ほにゅは、根こそぎ取るのではなく、まだ育ちきっていないものは残すことなどを言いました。そうしないと、どんどん取れなくなってしまうよ、と訴えました。そこに、先ほどの怪我をした狩人が杖代わりに木の棒をつきながら歩いてきました。


「そいつのいうとおりだ。君はまず、このあたりの罠を外しなさい」


 乱獲者は、自分が全部取らないと他の人に全部とられてしまうから、先んじて取れるように罠を仕掛けたのだといいました。


「分かっている人は皆、根こそぎ取るような事はしない。小さいものしかなければ、手をつけずに帰る。旅人なら、自分が持ち歩けるぶんしか取らない人もいる。そういう決まりというか、約束なんだよ。」


 乱獲者は初めは不満そうにしていましたが、狩人とほにゅが周りの罠を片付け始めると、しぶしぶ片付けに加わりました。


 二人とほにゅは、もっと奥にある珍しい山菜が、記録されているより沢山生えているのを見つけて、余分を収穫して小川の岸で干して分けました。


「持っていって、おさかな、いっぱいたべるの。」


ほにゅが港町のことを言うと、二人はそれについていく事にしました。そして、できるだけの収穫をして、港町へ向かいました。




「もし全部君がとってしまっていたら、この村の人はもう手にする事が出来なくなっていたかもしれない。そうしたら、こうやって届けて、魚をいただくことは出来ないんだよ。」


 狩人は何匹か魚をさばきながら言いました。乱獲者だった人は、無言で魚を食べ終わると、必要ない分の罠を売りました。


「君が聞き分けのいい奴でよかったよ」


狩人が言うと、


「いえ、教えてくださって、ありがとうございます。その、俺の居たところには、教えてくれる人が居なかったんだ。

 俺に旅の事を教えてくれた人やその周りの人たちは、『旅人や冒険者は早い者勝ち』だといつも言っていたから、始めたばかりの俺はなおさら工夫しなきゃいけないと思っていて……」


 乱獲者だった若者は、狩人に師事したいと申し出ました。街道の町まで出たとき、二人が酒場に消えていくのを見たほにゅは、そのまま街道を行く人にまぎれて去っていくのでした。しゃけはいつもより少ししか食べられませんでしたが、ほにゅはとても嬉しい気持ちでいっぱいでした。

(・ω・)「ほにゅのはなし」でなければ若者は狩人に怒られ何が悪いのか分からないまま旅人をやめるだけになってた。作者の今までの作品の傾向を考えると最悪動物に逆襲されるとかそんな可能性もあるのだ……

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