ちょこっとだけだぉ
あるとき、ほにゅは小さな鳥の群れに載せてもらって、遠くの町へ行くことにしました。まだ交通機関が発達していない地域にいたことと、人間と比べて小さすぎて道路の端で待っていてもヒッチハイクができるわけではないからです。乗鳥すらなかなか通りかからない、人の行き来が少ない町でした。
交代でそれぞれの背中に乗せてもらって、ほにゅは移動していました。乗せてもらう代わりに、大きな鳥や、悪い人間が近づくと魔法で追い払うのがほにゅの役目です。
予定の半分くらいのところで、一度森の木に集まって休憩です。
「この先には、悪い人間が町から隠れて暮らしている家が混じっているよ」
「大きな鳥でも、鉄砲や矢で落とされて、食べられちゃうんだ」
「森の中に珍しくて羽根が綺麗な鳥がいるらしいよ。だからこういう、高くて葉が茂った枝にとまっていないと、ぼくたちも見つかって食べられちゃうかもしれないんだ」
鳥たちは、ほにゅに、悪い人間たちを追い払ってほしいと頼みました。ほにゅは、それはできないんだよ、と謝りました。
「人間のことは、人間がやらなきゃいけないぉ。ほにゅたちは、人間と仲よくする代わりに、人間の約束事に従うよ、って決めてるんだぉ。
人間だけじゃなくて、ほにゅたちは、いろんな生き物と約束して、暮らしているんだもの。そのうちの誰かとだけ約束を破るわけにはいかないぉ」
鳥たちはがっかりしましたが、ちゃんと納得し、あきらめました。
「でも、ちょぴっとだけ、約束破らない程度のことならできるぉ」
ほにゅが小さなおててで指す木の枝に、森の鳥の巣がありました。その木の下のほうから、人間の男が一人、登ってきます。餌をとりに行ってるのか、母鳥の姿はありません。
鳥たちは、男の周りを飛んで、うるさくピーピー騒いだ後、何事もないかのように去っていきました。男は卵をとろうとしていましたが、耳が痛くて、降りて耳をふさいでいるのでした。
鳥たちが笑いながら飛んでいったあと、男が諦めるのか、また卵を取りに行くのかは本人にしかわかりません。
(・ω・)カクヨムのSSコンテストに作品を出したり、そのまま書くのに慣れるために作品を投下していました。やっとこっちくらい投稿に慣れてきたかな。




