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出会ったともだち からころさん(1)

(・ω・;)まさかの2000字越え(別連載なみ)です。いつもより時間をゆったりとってお読みください。(2)も2000字近くあります…

 とある町で、ほにゅはオルゴールを持ってちょこちょこ歩くもにゅと出会いました。見ていますと、町の人々が親しげに声をかけていました。


「からころちゃん、こんにちは」


 挨拶されると、そのもにゅ「からころちゃん」はうなづきを返します。持っているオルゴールから流れる曲が止まると、立ち止まって、ねじを巻きなおし、再び歩き始めます。一時間ほど経つと、人間のつくった公園にある、もにゅ用のちいさなベンチで一休み。


「どうして、オルゴールをながしながら、あるいてるの?」


 ほにゅが隣にならんで訊きますと、


「まちのひとが おんがく きくと たのしくなるように。」





 からころさんは、ずうっと昔もうひとまわり小さかった頃、隣の国のはずれにある大きなお屋敷に住んでいました。屋敷には、お父さん、お母さん、お姉さん、お姉ちゃん、妹のシシュリーチャ、お兄ちゃんの六人家族が暮らしていました。お屋敷には別館があって、お父さんの両親と、お父さんやお母さんの親戚が何人か暮らしていて、執事やメイドが合わせて何十人もいました。


 からころさんは、屋敷のそばの森の中で遊んでいたシシュリーチャ(シシュリー)とお兄ちゃんが見つけて、屋敷に持ち帰られたのです。


 お父さんやお母さんは音楽が好きでした。地球でも昔はお金もちや王様などが楽団を呼んで演奏させたり、自分の曲を作ってもらったり、子供に楽器を習わせたりしていました。

 それほど多くはありませんが、数人の演奏家を呼んでバイオリンのような弦楽器を弾かせるのは当時のお金持ちのおうちの流行でしたし、お父さんやお母さんも楽器を習っていたので家族で演奏するのが好きなのでした。

 演奏家が帰ると、通信端末の音楽サービスで曲を流したり(注)、旅行先で買ったとても美しくて精巧なオルゴールを鳴らして皆で聞き入るのが、家族の過ごし方でした。


(注:通信端末は、地球の電話やファックスのような通信機能の端末で、音を流す機能もあります。ラジオのようにチャンネルがあり、そこにかけると色々な番組が流れます。長時間使うと、とても高価です。現代なら、ネットラジオや動画などの高額の有料番組をいくつもかけ続けるような感じでしょうか。)



 お姉さんが結婚して家を去ったり、お父さんやお母さんの親や親戚が年老いて亡くなったり、お兄ちゃんがお嫁さんを連れてきたり、家族が数年のあいだに何度も入れ替わったことがありました。

 お姉ちゃんとシシュリーもお嫁に行くために、花婿となる男性を連れてきたり、男性の家で過ごしたりと、生活が変わっていきました。幸せそうなお兄ちゃんや花嫁さんを見ながら、ふたりは期待と不安で一杯でした。


 そんなある日の夜、シシュリーたちからみて伯父さんにあたる人が尋ねてきました。とても遅い時間ですし、位をもっているのに執事ひとりだけを伴っていました。

 徒歩で来たせいでぐったり座り込んだ伯父さんに何かお話されたお兄ちゃんとお嫁さん、お父さんは、シシュリーとお姉ちゃんを呼んで、荷物を作るように言いました。いつもの旅行の鞄ではなく、上級の学校に行くときのような、背負い鞄ひとつと、あっても手提げひとつまでにすること。一ヶ月くらいの長い旅行だと思うこと。お父さんは怖い顔でふたりに言いました。からころさんは、応接間でシシュリーを待っていましたが、同室にいたお父さんやお母さん、お兄ちゃんとお嫁さんが寝室へ行くので、眠る事にしました。


 翌朝、その屋敷には、見知らぬ者たちがたくさんいました。壁に掛かった代々の肖像画や、美しい置物や家具、皆の衣装などを応接間に集め、わいわいと取り合っていました。

 シシュリーやお姉ちゃんが幼い頃に着た可愛らしいドレス。お母さんやお姉さん、お嫁さんがつくった細かな刺繍の作品の数々。親戚の工房から誰かの誕生日にと送られた細かな器械を使った置時計。代々パーティにだけ使われてきた数百年前につくられた食器のセット。目の前で、どんどん持ち去られていきました。

 怖くなったからころさんは、そばにあったオルゴールひとつと少しのものを、自分のものだと言い張って、持っていかれずに済みました。そのオルゴールは、とくに皆が好きな曲で、親類の多くが入門した工房で、特別に作られたものでしたし、曲も、ご先祖のなかにいる作曲家のものです。


 見知らぬ者どもは、仕舞いには壁紙や、固められたレンガや、扉、窓まで剥がして、持っていってしまいました。美しい芝生も花壇の花も持ち去られました。からころさんは何日か、何週間か、何ヶ月か、しばらく留まっていましたが、冬に寒くて耐えられなくなり、持ち物とともに家を去り南へ行きました。





 からころさんは、行く先々で、オルゴールを鳴らして歩きました。そうすれば、家族がいたら気付いてくれるだろう、と考えたのです。時には踏まれそうになったり、思わず跳ねてしまってオルゴールの外の箱が破損してしまった事もありました。でも、オルゴールの機構が無事で音が鳴る限り、ずっと鳴らし続けていました。そして10年ほど前、この町にたどり着きました。

 町の人ははじめは珍しがって見物するだけでしたが、見慣れてきた頃に誰かが理由を聞いて、新聞に載せてくれたりしました。「からころ」という名前は、オルゴールの音が、


からころ、からころ、からころりん


というように聞こえるからと誰からともなく呼び始めて定着しました。


 何年かすると、たくさんの人がいろいろ調べた結果、その一家らしき人々の領地と、それぞれの人の人生が分かりました。

 からころさんは元居た場所の地名を何も覚えていなかったため確認を取るだけでさらに一年近く掛かってしまいましたが、とにかく一家は屋敷からばらばらに逃げ出して、お父さんとお母さん、お兄ちゃんとお嫁さんは無残に殺され、お姉さんとシシュリー、親類の何人かだけがばらばらに何十年も閉じ込められていたということが分かりました。


 そのまま町で暮らしていたからころさんは、ある日目が覚めていつものように歩き出そうとして、オルゴールが鳴らないことに気付いたのです。

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