第02話:女の子と城の探索
「ねぇ、お母さん。」
「なぁに、コウちゃん?」
「何で皆は僕か事を虹って呼ぶの? 僕の名前は虹なのにどうして?」
まだ幼い少年は母親である女性に疑問を投げる。
少年は学校に行き始めたばかりだった頃の時期で学校で漢字を習ってから少年と同じ年の同級生から虹と呼ばれていた。
それを聞いて母親はにっこりと微笑んで少年の頭を撫でるのであった。
「それはね。私が虹が好きだからよ。だから、あなたに虹と名付けたのよ。」
それが彼の、山中虹の母親からの忘れてはいけない記憶。
「えぇっと……これはどういう状況?」
俺は現在、目の前で倒れている少女を見ながら状況の確認に困っていた。
あのクソ神様妖怪の所為で俺は捕食されてしまったのだ。次に会ったら八つ裂きにしてやるぜ。
まぁ、あの神様妖怪については置いておくとして、だ。俺は状況の確認に戻る。
「廃墟になった城……。魔法陣らしき紋様が足下……。」
これらから察するに、俗に言う異世界召喚なのか……?
しかし、これだけではドッキリになる。なので、もう少し調べて見ると、背後に王様が座っているような椅子が鎮座していた。どうやら玉座の間にいるらしい。
目の前には倒れている女の子がいる。恐らくは俺を召喚した魔法使いだろうが、確証はないのでわからない。もっとも、彼女一人しかいないのでほぼ間違いない。
「大丈夫、かな? この子は……?」
少しだけ心配だが、恐らくは生きている事を願うしかない。
俺は女の子に少しずつ警戒しながら近付いていく。傍から見ていれば倒れている女の子に近付く変態だが、先程の捕食ショーでまた食われるのではないのかと警戒したくなるのが人間なのだ。
女の子を触れる距離まで近付いて肩を叩いてみる。
「お、おい。君、大丈夫か……?」
「うぅん……。」
呼びかけても反応はあるが、気絶しているのがわかる。
「あちゃ……。どうしようか、この子……?」
小説の内容だった時は、異世界に呼ばれた地球人は王様か、召喚した魔法使いに「どうか、この世界を救ってください! 勇者様!」とか「お前は私の従者だ!」とかになる展開のはずが、当の召喚した本人が気絶している。
「俺にこれからどうしろってんだよ……?」
確かに小説の中には一人でいる場合のものもある。
しかし、そう言ってもすぐに仲間ができたり、実は最強の魔法や技能、ハイスペックを持っている場合が多い。俺自身はそんなスキルはないと思うからできないと思う。
それ以前に、俺はあいつらの所為で争いは酷く嫌いだ。
「……考えても、仕方ないか。」
そう思って、俺はうつ伏せの女の子を裏返して両手で持ち上げる。
……へぇ。
「見た目は悪くはないな。むしろ可愛いな……」
女の子の顔は童顔で、身長は俺より少しだけ下に見える。スタイルは変態ではないので測れないが結構良い方である。あいつらのハーレムのメンバーにいそうだな。……何故だか殺意が湧いてくる。
「……あぁ、やめだやめ! あいつらはもう無視だ!」
やっとあいつらから解放されたからこれからは自由に生きていくのだから考えるのはやめよう。
俺は女の子を抱えて、玉座の間を後にする。……出る時のやたらと大きい扉が半壊しているのを見ていて心配でしかたありませんでした。
「しかし、何なんだ? この城は?」
あれから俺は長く、暗い廊下を歩きながら色々と考えていた。
色々な所を見て回ったがどこもが壊れており、まるで戦争で負けて破壊されたのがよくわかる。異世界の題材にされるのは大抵は文明開化以前の貴族政治の時代が多い。だとすれば、本で読んだように戦争や内戦などがしょっちゅうある可能性が高い。
「客室も今の所は壊されている所だけか……。」
俺はもう少しだけ使えそうな場所を探して歩きだした。
それから俺は数十分間探して、使えそうなベットがある客室を見つけた。
俺はそのベットに女の子を寝かして掛け布団を掛けてあげる。
「……しかし、あれだなぁ。この女の子は何者だ?」
召喚したのは間違いなく、この女の子だとは思っているが素性がわからない。
この子が何の目的で俺を召喚したのか、何をさせたいのかわからないが異世界から俺を召喚したのだから余程の非常事態なのか、単に失敗で呼ばれたのかはわからない。知っている当の本人が気絶している以上は俺にはどうしようもない。
「たっく……なんで俺が? まさか、あいつらの呪いか……?」
それは有り得るので恐ろしい。
俺は何だかんだであの知り合い連中を見捨てて逃げてきたのだ。恨まれても仕方はない。だが、俺は死にたくないからあの時逃げ出したのだ。恨まれても仕方がないとは思うが、後悔はない。
それだけ俺はあいつらが嫌いなのだからどうしようもない。
「やっと、あの連中から解放されたのにこれか……。」
考えたら色々な面倒な事に巻き込まれるが、九割があいつらの巻き込まれて酷い目に合う。
その上であいつらはおいしい所だけを持っていく。本当に嫌気がさしてうんざりな連中でいなくなって清々している。……もっとも彼らの家族には罪悪感が目覚めていい気はしないが。
なので、今回も彼らに係わるものだと俺は思うのであった。
「……いや、流石にそれは、ない、と思いたい。」
俺はあいつらが逝ったのを間違いなく見ている。
なので、確実にあの世にいかないとおかしい。本で読んだり、映画で見たようにあの世に召されたのを確認しているので間違いなく逝っている。
「だとすれば、後はこの女の子が目覚めるのを待つだけか……。」
しかし、この様子では直ぐに目覚める可能性は薄い。
「……仕方ない。城の中を確認するか。」
女の子を置いていくのはどうかと思うが、あんなに可愛い子は大抵あいつらのハーレムに入るから俺は離れた方がいい。
……あれ?
あいつらがいる事が前提と考えている上に、何故だかいる気配がするのは気のせいか?
そう考えると、部屋の隅に蹲って頭を抱えたくなってくる。
「マジでやめよう。あいつらの事を考えるのは。」
このまま考えると鬱になる。
そうと決まれば早速城の探索に向かう。もしかすると彼女以外にも誰かいるかもしれないし、何か使える物があるかもしれない。
そうと決まれば探索に出なければ!
俺は女の子を寝かせたままその部屋を後にするのだった。
結論から言うに何もなかった。
何か使える物や、人を探して見てはいるが誰もいない上に使える物は盗まれているからないのか、城の持ち主が持ち逃げしたとしかありえないくらいない。
「なんで厨房の調理器具までないんだよ。」
武器庫らしき所も何もないし、厨房は調理器具もない。
城の飾りに使う道具もなければ、金銀も存在しない。まるで、何も残さないために全てを持っていったような状態である。
「……なんであの子はこんな所で?」
明らかにこんな所で異世界人を召喚したら相手に反感を買うだろうし、人が住んでいるような所ではない。
「まぁ、森に一人でよりはマシか……。」
これはまだ救いはあるだろう。
少なくとも雨風は凌げるし、何もないが異世界ならいるであろう魔物もいないから命の安心ができるのは探索でわかった。
「後は、あの子が目覚めるのを待つだけか……。」
部屋から出て数時間くらいは経っているはずだから彼女も目覚めるはずだ。
俺は女の子を寝かした部屋に向かう事にした。
……途中で広い城の中を迷ってしまい部屋まで数十分程かかってしまったのはお約束である。




