第01話:恐怖の『それ』!
俺を異世界に喚んだ神様へ。
俺はとてもこの世界に充実していてあなたには感謝しています。
ですから、お願いです。
あなたを殴らせて下さい。マジで。
地球のある日のとある街の住宅街での夕暮れ時の事であった。
一人の少年が学校が終わり、街を遊び歩いて家に帰ろうとしていた。その足取りは気分が良いのか、ステップをするかのようのに歩いていた。
少年の名前は山中虹。一般の高校に通う周りが普通でない一般の学生である。学校から出てから着替えてないので学生服のままである。右手には筆記用具が入ったカバンを持っており、少しだけ膨らんでいた。
彼が機嫌が良いのは数日前に鬱陶しいく、憎い知り合い達がいなくなった為に気分がとても良く、充実した毎日を御暮れていたのが理由だった。
「いやぁ~……。毎日が平和で良いものだなぁ〜。」
虹の知り合い達は俗に言う所の恋愛漫画に出てくるような顔の美形集団であり、裏にはファンクラブがあるくらいの連中だった。周りはそんな知り合いと友達になっている普通の俺を恋愛漫画の脇役として見ていたのが半分と、嫉妬で嫌っているのが半分だった。
それが原因な上に、その知り合い達が起こす問題を虹が止めに行っていたり、巻き込まれたりと大変迷惑していた。
その知り合い達が行方不明なったのだった。
「あいつらがいないのがこんなに充実しているなんでなぁ。最高!」
知り合い達は行方不明になってから数日が立っていた。警察は集団で行方不明になった彼らを今でも探していた。親や友人、近所の人などから聞き込みをしながら情報を得ようとしていたが手掛かりは一切なかった。
捜査上で虹にも聞き込みをされた。行方不明者達の友人から虹の名前が上がった為に聞き込みをされた。虹を嫌っている連中結ファンクラブ)が虹が何かの原因だと決めつけたのだった。結果は「知らない」として捜査上から外されたのだった。
もっとも虹は行方不明の原因を目の前で見ていたから、知っていたが言わずに「知らない」を通したのだった。
「……まぁ、あんな誘拐されたら仕方ないよな。見捨てたが俺は悪くない。」
そう言い聞かせながら虹は家の帰路を歩いていく。
いつもなら知り合い達の所為で騒がしい毎日だったが、もうないのだと思うと寂しくはある上に見捨てた事に対する罪悪感があるが全ては仕方ないと思って忘れるのであった。
「ま! 明日も楽しい学園生活を謳歌しますか! あぁ、楽しみだな……」
そんな風に過去を忘れて明日からの生活を楽しんでいた。これからは普通の学生として、皆に見て貰えると思うと楽しみで仕方がなかった。
その時、普段は感じない視線を背後から感じた。不快に感じる視線で虹は後ろを振り返るが、誰もいなく視線も感じなくなった。
「? なんだ?」
虹は疑問に思いながらも、気のせいだと思い家の帰路に戻った。
暫く歩いていると、またも先程の不快な視線を感じた。もう一度振り返るが、またも誰もいなかったのだった。虹は疑問に思っていると、ある事に気がついて恐怖を感じるのであった。
「(なんで、誰もいないんだ……?)」
現在の時間は六時を回っていた。学生には遅すぎる時間だったが、それでも会社帰りや買い物帰りで人の行き帰りが激しくなってくる時間だった。しかし、虹以外の誰一人としてその道を歩いている人はいなかった。
一瞬だけだったが、虹は恐怖でその場から動けなくなったが直ぐに家に帰ろうと歩き出したのだった。歩いて直ぐにまた不快な視線を感じた上に、くちゃりくちゃりと不快な音まで聞こえてきた。
その音を聞いて、虹は飛び出すかのように走り出したのだった。くちゃりくちゃりとする音もまるで追ってきているかのように音が近づいて来ていた。
「なんなんだよっ!?」
虹は恐怖に駆られながら走って逃げているが、更におかしい事に気が付いて、恐怖が大きくなっていく。
「(おかしい!? さっきから家に着かないし、景色が変わらずに同じままだぞ!?)」
これではまるで無限ループの世界に入り込んだようなものだと、虹は思うのであった。
くちゃりくちゃりとする音は段々に近づいて来て、虹の真後ろにいるようなぐらい音が至近距離に聞こえたと思った瞬間に音が消えた。それに疑問を感じて虹は足を止めて振り返る。
しかし、後ろを振り返っても何もいなかった。
「な、何なんだよぉ……っ」
虹は突然の不快な音がなくなり、ほっと安堵するのと同じく恐怖の正体に疑問を覚えるのであった。
「な、何が…したいんだよ……!」
そんな事を考えていると、ある事を思い出す。
よく怖い話などをテレビで見ているが、これと同じ様な話を見た事があった。それは幽霊に追い掛けられていた男が後ろを振り返ると幽霊がいなくなり、次に振り返ると至近距離に幽霊がいて襲われる怪談だった。それとこれが余りに酷似していて、恐怖が一気に蘇る。
その時、くちゃりと不快な音が耳元で聞こえて頬に何かが当たる。その当たったものの所為で虹は完全に身体が硬直して動けなくなった。蛇に睨まれた蛙のようになるとはこの事である。
ゆっくりと頬に当たったもの目だけで見ると、大きな目と目があった。その目は人間の目ではあったが、明らかに巨大で人間の頭一つ分はあった。更にそれは巨大な触手の先端の様であり、自身の後ろから伸びている事がわかるとゆっくりと後ろに向ける。
巨大な何かの塊だった。
それの大きさは推定しても10メートルはある巨体で、何千もの触手と目玉の集合体であり、こんな巨体のものがどうやって背後に回ったのか疑問に感じたが、それ以上に恐怖が虹の頭を支配していた。
「あ……。あぁ……っ。」
身体から嫌な汗が出て、涙を流し始める。
逃げないといけないと感じていたが、足は震えて動きが取れなくなっていた。触手ががゆっくりと自身を取り囲んだ時に虹の恐怖が最高潮に達した。
「ぎゃあああああァァああァァああっ!!?」
「え? ぐぎゃっあぁ!?」
悲鳴を上げながら虹は持っていたカバンで『それ』に殴り付けると、『それ』は悲鳴を上げながら空中を回転しながら吹っ飛んでいき、地面をバウンドしながら転げ回る。
「……え?」
虹はその光景に驚いてしまうのであった。
明らかに恐ろしく、自身を食べようとした巨大な『それ』が明らかにあり得ない吹っ飛んでいくののを見ていて唖然とする。
巨大な『それ』は何度か地面に激突してから塀ににぶつかって停止する。塀は『それ』にぶつかった事により、無残にも粉々になってしまい、倒れている『それ』はゆっくりと起き上がると涙目の目を向けてくる。
「ひ、酷いじゃないか……。クトゥグアにも打たれた事がないのに……」
「し、知るかぁぁぁぁ! この糞妖怪がぁぁぁ!!」
そう叫んで、虹は持っているカバンを『それ』をもう一度殴り付けるのであった。街中に『それ』の悲鳴が木霊するのであった。
数十分後。
虹は散々に『それ』を殴り付けた後に、何度も蹴り込んで正座させていた。人の形をしていないそれの正座はどう見ても犬が寝そべっている時のようなものだったのでふざけているのかと思っていたが、本人はそれが自分の正座なのだと主張するのであった。
「……で? お前はなんだ? 触手妖怪。」
「ひ、酷いなぁ……。私のような神を殴り付ける上に触手妖怪などど呼ぶなんてあんまりではないかね?」
「うるせぇっ! 人を散々驚かしやがって、只ですむと思うなよ!」
「……驚いたと言うよりは怯えていたような。」
「あ”ぁ? なんかいったか?」
完全に怒り狂ってしまった虹は喋り方が漫画の不良のような暴力的になっていたが、それをするだけ虹の目の前の『それ』は虹の恐怖を煽ってしまったのだった。
「君には神の言葉である『隣人を愛せよ』精神はないのか!?」
「てめぇみたいな隣人がいたら退治してるわ!!」
「退治だと!? ……最近はメジャーになっているはずなのだがな。」
「何の話だ。何の。」
『それ』の言っている意味がよくわからない虹は首を傾げるのであった。しかし、自身を神だと言っているような『それ』の存在を見ていて信用ができないので、鵜呑みにする気はなかった。
「……つ〜か、なんで俺を追ってきた? 返答次第だと殺すぞ……。答えなくても、答えても殺すがな。」
「結局は殺害決定っ!? で、では……まずは自己紹介だが。」
「あぁ、お前の名前は聞きたくないから自己紹介はいらん。要件と目的を言えよ。触手妖怪。」
それを聞いて『それ』は涙目になり始めた。
『それ』にもそれなりの誇りがあったのか、ぞんざいな扱いに涙を流すのであった。もっとも虹には関係のない話であるのでどうでもよく感じていたのだった。
「全く、横暴な人間だな……。」
「あれだけ迷惑をかけて何だよ!? 横暴なのはてめぇだろうが! とっとと要件を言わねぇとマジで殺すぞ!」
「わかった、わかった。要件を言おう……。」
その時、『それ』が真面目になったのを感じて虹は息を飲むのであった。
これだけの巨大な『それ』が語る要件が何なのかわからないが余程の大事なのだと感じ取れたのだった。
だが、それがもしあの知り合い達の起こした問題の可能性があるかもしれないと疑念が生まれて来たのだった。彼らなら『それ』を化け物だと言って殺しにかかるのだとして自身に被害が来るのだと既に理解しているから、知り合い達を本気で殺害しようかと思ったのだった。
「では……。言うぞ。」
「勿体振らずに言えよ。」
余りにも勿体振るので虹は『それ』に対して殺意が上がるのであった。
「僕と契約……」
「くたばれぇぇぇっ!!」
それから数十分間の『それ』は虹に袋叩きされる……はずだった。
「かかったな! 馬鹿め!」
「!?」
虹が『それ』を殴る瞬間、『それ』の口が大きく開いて待ち構えていた。
虹は逃げようとしたが『それ』が虹を触手で両足を縛って転がすと、大きく開いた口に引きずり込んでいく。
「いっぎゃああああああ!! 誰かたすけ……!」
彼は再び始まった恐怖に叫ぶが誰にもその声は届く事はなく、虹は『それ』に食われるのであった。




