僕が殺人鬼になるまで
僕は、蟻を殺す。
小さな、小さな蟻を見つけると、潰さずにはいられない。
僕は、蝶を殺す。
綺麗な羽をズタズタにして、暫く観察してみる。
懸命に羽を動かしているけど、ボロボロの羽じゃ、飛べやしない。
もがく、もがく。
思ったより、つまらない。
ぐちゃ。
僕は、靴でソレを踏んだ。
なんか靴の底が汚くなっちゃった。やだな。
僕は、蛙を殺す。
ピンで、手足を刺して固定する。僕は、出頭医さながら腹を割く。
青蛙だと、小さすぎて腹を割いたら、内臓まで切れた。
死んでしまったから、割く楽しみがなくなった。
イボ蛙は、醜い。
醜いから、気に入らない。
だから、殺さない。
僕は、ハムスターを殺す。
僕は、猫を殺す。
僕は、犬を殺す。
どれも、初めは興奮したし楽しかったけど、飽きた。
なんか、物足りない。
僕は、三軒隣の沙紀ちゃんに恋をした。
見るだけで、とてもドキドキした。
沙紀ちゃんの可愛い顔を切り裂きたくて。
沙紀ちゃんが、痛みでどうなるのか、恐怖でどうなるのか、内臓はさぞかし綺麗なんじゃないかとか想像すると、興奮して夜も眠れない。
僕は、これが初恋だと思った。
そのせいで、睡眠不足だ。
だから、確かめる事にした。
放課後に人気のない所へ、こっそりと呼び出した。
沙紀ちゃんは、仲良しのみっちゃんにも親にも言わないで、こっそりやって来た。
僕が秘密だよ。って、言ったから。素直なんだね。
とにかく、やって来た沙紀ちゃんの喉を切ってみた。
沙紀ちゃんは、何が起こったのか判らないって、顔してた。
言いたい事が、あったみたいだけど、穴の空いた喉からは、プシュープシューって、空気が漏れる音しかしない。
その内に、ゴボッて血が溢れて沙紀ちゃんは、膝から崩れて落ちた。
ピクピクッてしたと思ったら、動かなくなっちゃった。
以外に呆気ないんだね。
失敗した。深く切りすぎた。
今度は、注意しなくちゃ。
だって、色々、観察したかったのに、あっさり死んじゃうんだもの。
沙紀ちゃんには、失望したよ。
もう、沙紀ちゃんには興味なくなっちゃった。
しかも、次の日は大騒ぎになったし、本当にやんなっちゃう。
学校には、まだまだ人がいるんだから、1人くらい居なくなったっていいじゃないか。
僕は、また恋をした。
今度は、コンビニの店員さんのお姉さん。
田川って名札に書いてある。
どうやって、近付こうかな。って、考えていたら、コンビニの裏側で言い争ってる声がした。
面白そうだから覗いて見たら、田川さんと男の人だった。
田川さんは、泣いていた。
男の人は、怒っていて、その辺のゴミ箱とか蹴飛ばして何処かへ行っちゃった。
痴情の縺れって、やつかな?
田川さんは、男の人を「かつ」って、呼んでた。
だから、僕は「かつ」の名前をちょっと借りる事にした。
僕は、数日間、田川さんの様子をずっと観察した。
勿論、起きてから寝るまで、ずっと。
「かつ」の気配は、まったく無かった。
僕は、そろそろ殺す事にした。
田川さんのアパートに入る事に成功した。
「かつ」から伝言を頼まれたふりを装ったんだ。
室内に入って、直ぐに持参したスタンガンを当てた。
バチッて、結構、凄い音だね。
威力強くし過ぎたかな?
でも、これくらいじゃ死なないよね?
ああ、大丈夫だった。息してる。
まずは、気がついても暴れないように、手足を縛る。
勿論、口もしっかり塞ぐ。
嗚呼。
ドキドキしてきた。
胸が高鳴るって、こういう事かな。
僕は、切り刻んだ。死なない程度を心掛けて。
想像よりも、ずっと、ずっと素晴らしいよ。
その恐怖と痛みに歪む表情。
僕の目に狂いはなかったよ。
僕は、満足するまで切り刻んだ。
ぐちゃぐちゃになった田川さんだった、ソレ。
今は、見る影もない。
単なる、肉塊に見えた。
僕は、満足したから、家に帰るね。
次に恋した時には、切らないで窒息させた。
これは、あんまり僕の好みじゃなかった。
その次は、火を着けてみた。
危うく、山火事になるところだったよ。
次に、気絶させて線路上に横たえといた。
その後は、知らない。
だって、夜中だったから、眠くなって、寝たら忘れちゃってた。
次に・・・。
次に・・・。
次に・・・。
僕は、まだ満ち足りない。
僕は、愛に飢えていた。




