第六判『生心壱刀』
振り返る 闇夜に動く 殺人鬼
次の日。俺は朝早くから仕事の依頼が入っているため、すぐに仕事服に着替える。
黒いスーツ。つまりは喪服に近い。
俺は自室からリビングに移動する。
リビングのドアを開くと、一気に食欲を増幅させる匂いが押し寄せてきた。
「おはよう」
と、久遠は料理をしながら、こちらを見て言ってきた。
「おはよう」
俺もそう言い、いつも座っている椅子に座る。
「今日はどういった内容の依頼なの?」
と、久遠は言ってくる。
「今日の依頼は、『篠儀 菜季』の護衛というかそんなものだ」
「篠儀菜季?聞いたことのない名前ね」
「ああ、どうやらご令嬢らしいぞ。年収で国が傾くほどらしい」
「へえ~また随分とすごいところから依頼が来たわね」
「ああ、まあこれでもこっちの世界ではやっぱ有名だからな」
「でもなんで行使者何かに依頼したの?そこまですごいところのご令嬢だったら、ボディーガードもかなりすごい人だと思うけれど」
「どうやら、相手が行使者だかららしい。断定はできないがどうやら『鬼流』が殺しに来るらしいしな」
「鬼流・・・あの『第二の類義』の?」
「そうだ。だから用心しなければならない」
そういった時、俺の前に様々な料理が並び始めた。
シャケに、味噌汁。サラダに納豆。そして白いご飯。
「頑張ってね」
そう言いながら、久遠は俺の向かいの席に座る。
「いただきます」
「いただきます」
そう言い、二人とも食事に取り掛かる。
「おいしい?」
と久遠は聞いてきた。
「うん、おいしいよ」
そう言うと、久遠は安堵の表情になる。
「今日、久遠は仕事入っているのかい?」
「うんうん。今日はフリー」
「そうか」
「手伝おうか?その依頼」
「いや、俺ひとりで十分だ。それに、『鬼流』と張り合ってみたい」
そう言うと、久遠はクスクスと笑い始めた。
「ん?なにかおかしなこと言ったか?」
「うんうん」
久遠は首を振った。
「あなたが闘争心溢れる時って、なんていうか・・・かっこよくてね」
「・・・・いきなり何言っているんだ」
なんだか急に恥ずかしくなってしまった。
「いや、結婚してからもそこは変わらないな~って」
「・・・ありがとう」
俺は話題を変えたくて感謝の言葉を言って切り替えることにした。
「ところで、《時間》の情報はなにか手に入ったか?」
そう聞くと、
「ごめん。まだ何も手に入っていない」
「そうか」
《時間》。つまりは千枚時見。
非現実的な存在。世界に逆らう存在なのだ。
それを俺は《目撃》し、殺さなければならない。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい」
俺は、玄関に向かう。