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街を巡る手紙  作者:
PR
13/29

12.心の平安:復

 拝啓。

 君は本当に優しい子だね。私の失態を寛大に受け止め、許してくれる……。それどころか、こんな私をねぎらってすらくれる。

 君とこの手紙さえあれば、私は仕事でもなんでも、きっと熱心に取り組むことができるだろう。


 顔が見えないから、最初から生意気なことを言えた……なかなか、言い得て妙じゃないか。

 とにかく、どんなきっかけであろうと、私たちは互いに心を開くことができてきたようだね。いい傾向だ。私も本当に嬉しいよ。

 オジサンに魅力を、ねぇ……いやはや、思想には自由があるというが、そういう思想の開拓もあるわけだ。なかなか面白いじゃないか。

 いや、だからね。十五歳以下とかそういう年齢の女の子は、私からすればもう自分の子供でもおかしくはないからね。そういう子に親心を感じはしても、性的な目で見ることなど絶対に不可能だよ。まったく……変なイメージを植え付けないでもらえるか。

 おや、意外かね? 確かに関わることはあまりないが……子供は、男の子でも女の子でも可愛いと思っているよ。自分の子供なら、ことさら可愛いんだろうね。私も欲しかったよ。一人でもいたならば、絶対に溺愛していただろうに。その子のためならば、何でもしてやろうと思えただろうに。


 ソウルメイト、か……私も独自に調べてみたけれど、柊教授の見解とよく似ているよ。そういうものが、やはり世の中にはあるようだね。

 見た目や性格、境遇などが似ているということだけでは決してない。魂のレベルで、その二人はつながっている。

 前世からの因縁とか、そういうことが実際にあるのかはわからないけれど……そういうのももしかしたら、運命と言うのかもしれないね。信じるか信じないかは、本人たちしだいなのだろうけれど。

 柊教授と君も、もしかしたらソウルメイトなんじゃないか?

 普段人見知りの君が、そんなにも落ち着いて話すことができているということは、心に安らぎを得られるということは、やはり彼と君にも似たところがあるからなんだよ。

 これを機に、柊教授と仲良くしてみてはどうだろう。気の置けない、いい関係性を築くことができるかもしれないよ。

 そしていずれ、みんなで会うことができればいいね。


 結婚を機に、それまで抱いていたのとは別の感情を抱いた……なるほど、そうかもしれない。

 結婚して以来、燃え上がる感情を失ったのは確かだ。だが、決して彼女に対する感情を失ったわけじゃない。その気持ちが、何なのか分からなかっただけなんだ。だからなおさら、彼女にどう接していいのかわからなかった。

 だけど君に諭された今なら、ちゃんとわかるよ。それもきっと、恋の一種だったんだね。

 確かに私は彼女を守りたかった。それも、不器用な愛の伝え方だったのかもしれない。

 だけど私は、同時に怖かったんだ。

 先ほども書いたが、結婚してから彼女に対してどういう風に接したらいいのかわからなくなってしまって……仕事は愛情表現でもあったけれど、同時に口実でもあった。彼女に極力会わないようにするための、関わらないようにするための、口実でもあったんだ。

 それが、彼女には耐え難かったんだろう。

 君の言うとおり、彼女は寂しかったんだと思う。私がちゃんとした愛を注がなかったから……彼女を、一人ぼっちにしてしまっていたから。だから次第に心が離れていった。私が家に帰らない日々が続くごとに、夫婦関係には確かな亀裂が入っていったんだろう。

 それがどれだけ愚かな行為であったかに、私は終ぞ気づかなかった。彼女がある日突然、置手紙を残していなくなってしまうまで。

 確かその手紙には、こんな風に書いてあったよ。

『こんな仕打ちをするために、わたしと結婚したのですか』

 最初は、この言葉の意味が分からなかった。しばらく悩んだよ。

 だけど長い年月が経って、ようやく分かったんだ。私はなんて、ひどいことをしていたんだろう、と。

 同じ女である君にならば、分かるだろう。私が、どれだけ彼女にむごい仕打ちをしてきたか。どれだけ、私が最低な男だったか。

 軽蔑するならば、いくらでもしてくれて構わない。それだけのことを、私はしたのだ。

 私が言う資格はないのだろうけれど……彼女には、幸せになってもらいたいと心から思う。今度は私のような男ではなく、大切にしてくれる優しい男を婿にして、幸せな家庭を築いてほしい。


 恋は人を魅力的にもするし、逆に醜くもする。その子の場合は、前者だったんだね。

 やはり、彼女も彼女なりに苦しんでいたのだよ。でも、それを君にだけは悟られたくなかったんだね、きっと。

 今はその姿に落ち込んでしまうかもしれないけれど、きっといつか、全ての意味において君は彼女を好きになることができるはずだよ。本当の意味での、かけがえのない友人同士になれるはずだ。

 彼に対しても、同様だ。恋人にはなれなくても、きっと君は彼にとってなくてはならない存在でいられるはずだよ。君が、あきらめなければね。


 ふむ……何を考えているか読めない、ねぇ。

 確かにそういうミステリアスな雰囲気の男の子に、女性は惹かれやすいようだ。その心の奥底に、踏み込んでみたいと思ってしまうから。

 ただしイケメンに限る、とはよく言ったものだが……君はきっと、彼の顔に惹かれたわけではないのだろう? 彼のためにも、私はそう思いたいものだがね。

 そんな彼が君に対して、彼女への感情を隠さなかったのは……彼女への狂おしいほどの思いをあらわにしたのは、やはり君を信頼していたからなのではないか?

 それほど感情を隠すのが上手なはずの彼が、そんなにたやすく他人への恋情をあらわにするはずがない。人づてに、本人がそれを耳にしてしまうかもしれないから。

 確かに彼のその子に対する思いは、君には到底かなわないものだったかもしれない。それでも、彼はきっと君を十分信頼していたはずだ。彼の抱いていたものがそれぞれ違う感情だったとしても、その重さは君に対しても彼女に対しても同等だったのではないか、と私は思う。

 ……あくまで同じ男としての見解にすぎないから、君の参考にはならないかもしれないけれど。


 彼も彼女も、君も優しい人だった。これは、前から何度もこの手紙に書きつづっていることだ。

 二人の君に対する『間違った優しさ』を断ち切ることができるのは、他でもない、君だと思う。

 君からやはり、口にすべきだよ。

 その意気で、ぜひとも二人に伝えてほしい。これ以上の優しさは、無用だと。これまでと同じように接してくれて、構わないと。もう気を遣う必要など、全くないからと。

 これを機に、君たち三人の関係がより良いように続いていくことを、私は陰ながら願っている。

 君の気持ちを風化し、三人で友情を築いていけるように……そのためならば、私はどれだけでも協力を惜しまないだろう。だから君も、君なりの努力を続けてくれたまえよ。


 酒の混ざった私を可愛いと思うなど、君は相当重症だね。単なる酔っ払いオヤジの管巻きにすぎないというのに。

 ちなみに今日は、君のリクエスト通り素面でこの手紙を書いているよ。自分で言うのもなんだが、普段と全く変わらないね。普段から酔っぱらっているような人間なのだろうか、私は。


 私も、君のことをもっと知っていきたいと思うよ。

 ……と、酒の勢いでならば簡単に書くことができるのに、素面で書くとどうしてこんなにも照れてしまうのかな。

 いずれはこんな素直な言葉にも、慣れていきたいものだ。

 敬具。


 七月十日 だらしない独身男・イオリ

 優秀な学生・ミユキ様


 追伸。

 送ってくれた雪の結晶の写真、拝見した。とても綺麗にできているね。思わず惚れ惚れとしてしまったよ。やはり柊教授はやることが違うね。

 彼はレポートの締め切りをすっかり忘れていたということだが……どうすればそんな風な物忘れをなくすことができるか、君から彼にぜひともアドバイスしてあげてほしい。

 柊教授も、君のアドバイスならばきっと受け入れてくれることだろう。

ソウルメイトの本来の意味は、精神的な面で互いに深く思いあう関係…みたいな感じです。直訳すれば『ソウル仲間メイト』ですよ。何か某ルーさんみたいなことになってますが、気にしないように←

だけど…いいですよねぇ、そういうの。憧れちゃいます。


余談ですが、ソウルナンバーという番号を生年月日などの数字によって割り出すことができるそうです。


やり方は、まず生年月日(19○○年○月○日)の数字を一桁ずつばらして足します。んで、割り出された数字が最終的に一桁になるまで、それを繰り返します。

例を挙げますと、1993年5月14日(私の生年月日)の場合『1+9+9+3+5+1+4=32』→『3+2=5』。

この時点で一桁なので、すなわち私のソウルナンバーは5ということになります。


この番号は1から9まであるんですが、番号が同じ人がソウルメイトになるそうです。んで、比較的近い番号の人とは相性がいいとか何とか。

この番号で性格診断なども出来るそうなので、興味を持たれた方はぜひ一度お試しあれ。

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