プロローグ
配達用に使うバイクにまたがりながら、本日運ぶ郵便物についての確認をし、時間内に再びこの場所へ戻ってくるまでの、一番効率的な進路を組み立てていく。
これが俺の郵便局員としての、仕事前の日課だ。
今日もいつも通り、郵便物を入れる大きな黒い袋が付いた大きなバイクにまたがりながら、郵便物の確認を急いでいた。
今日は、この街からは少し外れた集落のところが多いな……ではあっちの道沿いを渡っていくことにするか。
考えながら次々と手にした郵便物の住所を確認していたのだが……ある一枚の郵便物で、俺はふと手を止めた。
女性と思しき丁寧な字で書かれた、淡い水色の封筒。この時代にこのような典型的な手紙というのも、十分珍しいものではあったのだが……俺がそれに目を留めたのは、それだけが理由ではなかった。
「何だ、これ……」
予想外の事態に、思わずつぶやいてしまう。その声に気付いたのか、隣にいた配達員仲間が、ひょっこりと覗いてきた。
「どうした……って何だ、それ。宛名も差出人の名前も、何一つ書いてないじゃないか」
そう。その手紙に書かれているのは、ただ互いの住所のみ。宛名も差出人の名前も、空白になっていたのだ。
「いいのか、それ……届けられるのか?」
訝しそうに、仲間が聞いてくる。俺はその手紙にくぎ付けになりながらも、あぁ、とうなずいた。
「マンション名と、部屋名が書いてある。だからたぶん……そいつが引越しでもしていない限りは大丈夫、だと思う」
「とりあえず届けてみる、ってことか」
「そういうこった」
そうだ。ともかく、届けてみるしかない。その住人が手紙に見覚えがないというのなら、きっと郵便局宛に送り返してくることだろう。
「とりあえず……行ってくるか」
黒い袋に郵便物の束を放り込みながら言うと、ヘルメットを手にしていた仲間は笑いながらうなずいた。
「あぁ、俺もそろそろ行くわ。気を付けてな」
「お前もな」
「じゃあな」と言い残し一足先に行ってしまった仲間を見送りながら、俺もヘルメットをかぶり、バイクのエンジンをかけた。
これからどうなるかなんて、知らない。この奇妙な手紙が、この先交わされ続けていくのかどうかも分からない。
だけど……どっちにしても、そのきっかけを作るのは、手紙を届ける俺たち郵便局員であることに間違いはないのだ。
ここで途切れさせるわけには、行かない。
「今日は……道沿いから、行こう」
呟きながら、俺は道に出るためバイクを走らせた。
郵便物に宛名が書いてなくても、住所さえ書いてあれば届くことがあるらしいですよ。いや、本当に。
しかし…郵便局員の仕事が本当にこんな感じなのかは、わかりません。少々もとにしたものはありますが、大体は想像で書きました。もし間違っていたら本当にすみません←
もし間違っていたら、その時はこっそりと作者にお教えいただければ幸いです。