49話:絶望していた君へ
朝の稽古に、もちろん妹は大反対した。
「ソラ兄さんの、美しい体に傷がついちゃう!!」
と大泣きし、僕と家族を困らせ
また、朝の稽古後に前を通り過ぎると
「ソラ兄さんが、、汗臭いなんて!!!」
と言って、悲痛な叫びをあげていた。
さすがの僕も、汗臭いと言われた時には落ち込んだ。
だから、今日はどうやって家に帰ろうか悩んでいる。
ヒリヒリと痛む膝と頬を水で洗ったのは良いが
まだうっすらと、血が滲んでいる。
朝のランニング中に、思いっきり顔面から転んでしまったのだ。
妹がみたら、大泣き程度では許されない気がする。
いつものように、庭で悩みながら素振りをしている僕を
アルが同情する眼差しでみていた。
「しっかし、何でなにもない所でこけるかなぁ?」
僕よりもずっしりと重い剣を振りながらレオが言う。
その答えは、考え事をしていたからである。
僕のまわりに流れているメロディに歌詞をつようと思ったのだ。
「ちょっと、考え事してて…今度からは気をつけます。」
チラッとレオは僕をみて、ニヤリと笑った。
「綺麗な顔が勿体ないな。まぁ妹さんの反応は明日聞かせてくれ」
それを言われて、僕は深いため息をついてしまった。
アルも苦笑している。
素振りを終えて、深呼吸をした。
アルやレオのようには、まだいかないけれど。
少しずつ、自分の体に変化が表れているのを感じることはできる。
朝目覚めた時に、鈍く感じる筋肉痛も
走っている時に感じる息苦しさや胸の動悸も
全てが自分が頑張っている、生きている証のような気がして。
胸一杯に吸い込んだ息をはきながら、
やっと目覚めてきた空を仰ぐ。
僕はもう一度、息を吸い込み
歌を紡いだ。
この世界の生きる楽しさを
誰かに、伝えなきゃと思った。
誰もよりも世界に絶望していた誰かに。




