47話:失われた記憶
静かで、どこか儚げ。
音楽に対して天才的な才能があり、
学校には行かずに独学で勉強。
お手伝いとして、時々モデルをしている。
それが「ソラ=ブライアン」…らしい。
僕は階段から落ちて、記憶を失くしてしまった。
「記憶」といっても、失くしたものに偏りがある。
「ソラ」が12歳までに積み上げてきたもの、
知識や音楽、モデルの仕方、友人や家族...等
これらについては、覚えていた。
逆に、忘れてしまった記憶は
自分自身について。
自分の気持ちや考えていた事を思い出せない。
「ソラ」は消えてしまった。
じゃぁ、「僕」は誰なのだろう?
まるで、「ソラ=ブライアン」という入れ物を
全く別人の「僕」が借りているようだ。
いや、違う。言うならば、
自分の入れ物を誰かが使っていた後の様な
そういう違和感がある。
僕が思う感情や、行動に、時々胸が痛いのは何故だろう。
僕の前に、この体に入っていたのは
本当に「ソラ=ブライアン」なんだろうか。
消えない違和感。
そして、起きた時から聞こえる優しいメロディ。
今までの「ソラ」の軌跡。
僕は知りたい。
僕は、答えを知りたい。
心では違和感のある「ソラ=ブラウン」部屋のベッドは
体は覚えていて、しっくりと馴染んで心地よい。
退院して、色々聞いたけれど思い出せないまま
数日が経過してしまった。
家族は、自分たちの事を覚えていた事に安堵していたが、
やはりソラの内面が僕であり
所々違うことに、違和感を感じている様だ。
…まだ、やらなければならない事は沢山ある。
目を閉じながら、僕は優しいメロディに耳を傾けていた。




