表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/60

第48話 眠りから覚める書簡 2

渋沢様に連れて来られたのは近くのコーヒーショップ。


立花は寄り道に関しては校則で禁止されていなし、向かい合わせに座っていて「おいた」なんてことも言われないだろうから、特に問題はないんだけど・・・


渋沢様の「お時間ありますか?」の問いに答える間もなく、連れて来られてしまったからちょっと、いえかなり戸惑ってます。


「あのう、渋沢様・・・・」


「渋沢で結構ですよ。私の方が使われてる身なんですから」

クスリと笑いながら渋沢・・・さんがおっしゃいました。


「津和蕗様以前うちの会長に、会長というのは亜紀枝様のことなんですが、何か頼みごとあれば聞いていただけるとお約束されたこと覚えていらっしゃいますか?」


「はい、覚えています。」


「そうですか。」

渋沢さんはニッコリとおっしゃってからお話を続けられました。

「実はその約束を果たしていただきたいのですが、神奈川県K市に再逢寺さいおうじという寺院がありまして、そこに昔会長が預けた手紙があるんです。それを取りに行って尚且つ記載されている宛名の方にお届け願いないでしょうか?」


そう言いながらアタッシュケースから書類と封筒を取り出してテーブルの上に置きました。


「これが再逢寺までの地図と連絡先です。2枚目は公共機関を利用した時の行き方です。封筒には経費として3万円入っています。ご確認下さい。」


「さ、3万円て電車でしたらそんなにかからないじゃないですか。」


2枚目の用紙はネットで経路検索をした結果を印刷したもので記載されている金額も3万円なんて必要のない金額だ。むしろお金を預からなくてもと思ってしまう。


「これは交通費ではなく経費としてお渡しします。恐らく再逢寺には休日においで下さると思っております。そうなれば昼食を取られるでしょうし、手紙を受け取った後に、今度は届けていただかなくてはならないので、再逢寺の往復だけではありません。それに交通機関で事故か何か起こればタクシーや他の交通機関を利用することになるかと思います。そういった時にお遣い頂くためのお金としてお渡しします。気になる点があればこの用事が済んだ後に会計報告していただければ結構です。」


なるほど、と渋沢さんの独断なのかは分かりませんが、用意の良さに感心してしまいました。


「・・・分かりました。一応お預かり致します。」


「では宜しくお願い致します。」


「ところで届け先ってどこのどなたなんですか?」


「実は会長がそのことに関しては私には何もおっしゃってくれなかったんです。ただ、手紙には住所が記載されているので、それで届け先が分かるかと思います。何か問題があれば先ほどお渡ししました名刺の携帯の方に連絡下さい。」


そして渋沢さんは仕事があるからその後すぐにコーヒーショップを出られてしまった。私は飲みかけのカフェオレを少しゆっくりめに飲んで、気持ちを落ちつけてから家に帰りました。





その夜忍さんの携帯に電話をしてみた。


「もしもし、桃乃です。今、お話しても大丈夫ですか?」


「もう家なんで大丈夫ですよ。どうかしたの?」


「今日、学校の帰りに渋沢さんとおっしゃる方にお会いしました。亜紀枝様の事務所の方だそうですが・・・」


「えぇ渋沢は亜紀枝様の事務所の人間ですよ。彼がどうして桃乃ちゃんのところに?」


「それがこの前亜紀枝様とお約束した亜紀枝様の頼みごとを聞いて欲しいって、亜紀枝様の代理でいらっしゃったようで、その頼みごとというのは再逢寺に亜紀枝様が預けられた手紙を取りに行って宛名の方に届けて欲しいということでした。」


「・・・またなんで、亜紀枝様か渋沢が取りに行けばいいような気もしますが・・・届け先はどこなんですか?」


「それが渋沢さんもご存じないようでその手紙を見ないと分からないんです。」


「亜紀枝様が預けたというのはいつ頃か聞いてますか?」


「いいえ、聞いておいた方が良かったですか?」


「・・・再逢寺は周防院の菩提寺なんで、亜紀枝様も子供の頃から行っているはずです。万が一亜紀枝様がお若い頃に手紙を預けていると宛先の住所が今と違っていると思うので、そうなると届け先を調べるという作業も出てくることになりますよ。」


なんと!届け先の住所を見ただけでは判断できないという可能性もあるんだ。

とすれば、時間にゆとりのある方がいいから・・・


「だったら明日にでも行ってみます。」


「明日ですか?」


忍さんが驚いた声をあげた。

そんなに驚くことだったかしら?


「土曜で学校がお休みなので、記載されている住所が今の住所でどこなのか調べる必要があれば帰りか、明日改めて調べることができますから。」


「―――――出来たら車を出して一緒に行ってあげたいのですが、この土日は教授の学会発表の手伝いに行くことになっているんです。」


「大丈夫です。渋沢さんから地図や経費を預かってますから。何とかなると思います。」


「そうですか・・・何かあれば連絡して下さいね。」


忍さんは私が一人で行くのが心配だというのがありありと分かる様子だった。

そんなに頼りないかしら?

この際だから亜紀枝様のお遣いをきっちりこなして私がしっかりしているところをアピールしておかなくては。


「ありがとうございます。それでは忍さんおやすみなさい。」


「おやすみ・・・」




2010.12.26誤字訂正致しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ