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第42話 愛の書簡 7

「それに立花には『ゆかりさん』もお勤めでいらっしゃるのよ。真偽を確認するのは容易いことじゃないですか。」


『由香里様』?


何故今は療養中の由香里様が出てくるのだろう?


それにしても『ゆかりさん』は柏木の『由香里様』ではないのかな~?


でも忍様は『ムラサキ』って・・・・


一体全体どういうこと??


そんな疑問を持つ私とは逆に亜紀枝様の今のお言葉に忍様は合点がいったようで・・・


「桃乃ちゃんの縁談の相手に周防院の名前が出ていて、今朝桃乃ちゃんと一緒にいた男が僕であるかどうかをムラサキに確認すればいいということですね。それをしないで、桃乃ちゃんの素行について騒ぎ立てるような教師なら立花には不要だというわけですか。」


「忍さんもお利口になられたのねぇ・・・」


しみじみとおっしゃる亜紀枝様は続けておっしゃった。


「・・・だったら今回も水嶋か誰か周防院うちのものに連絡して桃乃さんを迎えに行くようになさるべきだったのではないかしら?」


そんなことは忍様にできるはずはなかった。何故なら今話している約束自体が存在していないのだから、忍様が悪いように言われるのは辛かったから


「忍様が悪いんじゃありません。私が・・・」


思わず体を乗り出して声に出してしまった。


すると「桃乃ちゃん・・・」と忍様に制されてしまった。


一瞬亜紀枝様から鋭い視線を感じたような気がするが、亜紀枝様の方を見ると目が合って静かに微笑んで下さった。私はソファーに座った。


話しの辻褄が合わなくなるとマズイ。そう思いつつ俯いていると亜紀枝様がお話を続けた。


「二人が外で会うのは構いませんが、桃乃さんに何かあってはいけませんので、忍さん、水嶋の連絡先を桃乃さんに教えてしておいて下さい。桃乃さん。」


「はい!」


急に振られてびっくりした。


「忍さんがお約束の場所に現われなかったら水嶋に連絡して迎えに来てもらってお帰りなさいね。」


なんだか恐縮してしまうが、話しを拗らすのは得策ではないと思い、控え目ながらも「はい」と答えた。


「忍さん、急に迎えに行けなくなった時は水嶋か誰かに桃乃さんを迎えに行くようになさって下さい。」


「承知しました。ご心配をおかけしました。」


そう答える忍様の横顔はりりしくて見惚れてしまった。こんなに立派な「紳士」って感じの人がどうして?ってやっぱり思ってしまう。


ぼんやりと考えていると亜紀枝様の声がした。


「ところで桃乃さん、貴女には貸しが一つできたと思ってよろしいのかしら?」


はい?


「亜紀枝様は、今日のことは僕からのお願いなので彼女には・・・」


今度は忍様の方が私をかばう様におっしゃった。


「忍さんには聴いておりません。桃乃さん。」


「はい」


「いつか、私の方からから頼みごとをしてもよろしいかしら?」


亜紀枝様が私の頼みごとって、いつかって・・・


気安く返事をしてもいいのだろうかと思う反面、この亜紀枝様が無体な頼みごとをしてくるとも思えなかったから、私は亜紀枝様を真っ直ぐ見て答えた。


「もちろんです。私に出来る気ことであれば尽力致します。」


「ありがとう」


亜紀枝様は素敵な笑顔を私に向けて下さった。





「では僕はこれから桃乃ちゃんを家にお送りしてきます。」


ドアのところに立った忍様は私の肩に手を乗せておっしゃった。


「お邪魔しました」


私は亜紀枝様に向かってお辞儀をした。


扉が閉まる一瞬亜紀枝様を見たらいつも見せて下さる笑顔ではなくて、どことなく複雑そうな表情だった。


やっぱり、忍様のお部屋に泊ったことはあまりいい印象を持たれてないのだろうか?










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