第4話 夏の夜の贈り物 1
もう一度会いたい。そう思うけど、今となってはどうやって探し出したらいいのか分からない。
それ以前に私なんかが探していいのか分からない。
そんな人がいる。
彼の名前は「シン」。私はそれしか知らない。
多分、似ているのかな?
同じ男の人だし、年齢も近そうだし、背格好も・・・
ただ持っている雰囲気がまるで違う。まぁ別人だからあたりまえだけど。
「人生のターニングポイント」なんて言ったら、まだ16年しか生きてないのに大げさ過ぎるだろって言われそうだけど、
でも私にとっては重要な3日間だった。
小学校5年生のクリスマス前だったかな。ママの妊娠が発覚した。実に12年ぶりに妊婦になった。
実は津和蕗家は女系家族で有名だった。
萩乃様から私まで血の濃い親戚でも「女」しか生まれていない。
萩乃様のお母様もお婆様もそのまた・・・萩乃様曰く「ここ200年直径は女しか生まれていない」とのことだった。
パパも亡くなったお爺様様、曾お爺様もみんな婿養子。立花で古い先生なら知らないわけないっていう要因もそれだったりする。
所謂立花のお得意様なのだから。
でも私が生まれたとき、「何がなんでも立花へ入学」ということにはならなかった。
萩乃様の頃から比べたら、女性が社会で活躍する場も増えている今、然るべき婿取りをするにしても箱入り娘じゃなく、きちんちした社会人である方がいいと大人たちは考えたのだ。
まぁお婿さんが見つからず婚期が遅れてもきちんと自立していれば大丈夫だろうということだと思う。
というわけで私立受験も視野に入れてあったけど、立花一本ではなく過ごしていた。
ママの妊娠はそんな頃だった。
私が6年生になったある日ママが検診から変な顔つきで帰ってきた。
「どうだったんだい?」
「あっ、うん、元気みたい」
萩乃様もママの様子がおかしいのに気づいて聞いてくれているのに反応がよろしくなかった。
「来週あたりもう一回病院に行くの。萩乃様とお母さんにも一緒に行ってもらいたいんだけど・・・・」
「私はいつでもいいけど、菊乃にはもう言ったのかい?」
「後で電話して予定を確認します。」
長野に住んでいるママのお母さん、私にとってはお婆様の菊乃様は絵を描くのがお好きで絵画教室もやっているけど、絵の題材にする草花は家の庭でご自分で育てている。
スケッチ旅行とか行ってなかなかつかまらないことも多い。
それでもママが赤ちゃんを産むときは、萩乃様が病院でママの付き添い、菊乃様が私の面倒を見るって分担を決めてあったらしい。
1週間後、萩乃様、菊乃様、ママの3人が病院へ行ってきた。帰ってきた3人は何故か茫然としていた。
「百合ちゃん、どうだったの?」
ママに甘甘のパパがママ達の様子のおかしさにお腹の赤ちゃんに何かあったのではと心配して聞いてきた。
「こんなこともあるのねぇ」
いつも冷静な菊乃様までが何かにとりつかれたようだった。
「一体どうしたというんですか?」
「あのね勉さん、お腹の赤ちゃんね、男の子なの」
「性別が男だったからって、えぇっ!!!」
そばで聞いたいた私も驚いた。