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第38話 愛の書簡 3

はい?


「子供の頃から医者になりたくて、でも父は周防院を継げと言っていたのでずっとケンカ状態でした。19歳の時に両親ともに亡くなって、20歳の時に正式に相続権を放棄しているんです。丁度、鷹野宮の一人息子、僕のいとこにあたる男でしゅうっていうんですが、彼が18歳になった時だったので、その時彼が後継ぎに決まりました。」


「はぁ・・・・」


ってことはこのお屋敷達とはあまりご縁がないということかな?


それはそれでかなり気が楽でちょっと安心だったりする。


顔を引きつりがほぐれたのが分かった。


「しがない勤務医になるでしょうが、それでもいいですか?」


真顔の忍様が目の前に顔を寄せてきたのでびっくりした。


「は、はい・・・」


反射的に返事をしてしまった。


あれ?今って運転中ではないのでしょうか?と思っていたら車は朱雀院の前に止まっていた。


ん?今のやり取りってプロポーズでそれにOKしたことになっちゃうのかしら?


自分の発言に悩んでいたら、大きな玄関ドアが開いてどこかでタイミングを計っていたかのように上品そうで優しげな老紳士がドアの向こうから現れた。


老紳士は私が座る車の助手席の扉を開けてくれた。


誰かな?


「あ、ありがとうございます」


ぎこちなくお礼を言うと老紳士は優しく微笑んでくれた。


私が車を降りたと同時に忍様もご自身で車を降りられた。


「おかえりなさいませ、忍様」


???


このやり取りからすると・・・・もしかしてこの人は?


「久しぶりです。桃乃ちゃん、彼はこの家の家政を取り仕切っている水嶋です。」


やっぱり~


執事さんだぁ!!!


「は、初めまして津和蕗桃乃です。」


「お話は亜紀枝様より伺っております。」


頬笑みを絶やさず、水嶋さんが私の挨拶に答えて下さった。


「水嶋、亜紀枝様にお会いしたいんだけど、今こちらにいらっしゃる?」


「はい、ですが、ただいま来客中でございますので、中でお待ちいただけますでしょうか?」


「特に予定はないから待たせてもらうよ。」


水嶋さんの案内で私達はお屋敷の中の一室に通された。


そのお部屋は初めてお会いしたホテルのラウンジより広く、グランドピアノまであるのよ!


誰が弾くんですか?


お部屋の豪華さと品の良さに圧倒されていると三人掛けのソファーに座った忍様がこっちへおいでと言う様に手招きをしてきた。


「えっとお・・・」


この場合隣りに座ってもいいのだろうか?


いや、向かい側にある一人掛けに座るのは間違っているから・・・・


確実に不自然と思われるくらいの隙間をあけて、私は忍様と同じソファーに浅く腰かけた。


ご実家だけあってかなりリラックス状態の忍様は少しだけ私の方に体を向けて背もたれに寄りかかるように座っている。


おみ足も長いから脚を組んだ姿たこれまたカッコイイ!


ポーっと見惚れていたら水嶋さんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。


お菓子は小さい焼き菓子がたくさん、クッキーにカットしたパウンドケーキ、フィナンシェにマドレーヌ、どれも可愛くておいしそう。


「忍様、本日は柏木へのご訪問はいかがなさいますか?」


「由香里様かあ、亜紀枝様の来客は時間がかかりそう?」


「実は来客というのは祝様でございまして、祝様の社長ご就任のパーティーに関してとのことでしたから、さほどお時間はかかられないかと存じます。」


「だったら、今からちょっと行ってくるよ。桃乃ちゃん。」


「はいっ!!」


お菓子の目を奪われていたら急に声をかけられたのでびっくりした。


「申し訳ないけど、30分ほど留守にします。ここで待っていてもらっていいですか?今から伺う柏木の由香里様にも貴女を紹介したいんですが、お話し好きな方なので今連れて行くと長くなりそうで、亜紀枝様へのお願い事もありあすからこれは後日ということにしたいのですが」


私の様子に笑いをこらえながら忍様がおっしゃった。


あまりの恥ずかしさに少し素っ気ない感じで「分かりました。」と答えてしまった。


忍様は「ゆっくりしていていいですからね。」とおしゃってからお出かけになられた。


もっと可愛くお見送りしたかったなぁ。




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