第36話 愛の書簡 1
ずど~~~~~~~ん
の「~~~~~~~~」がずっと頭の中で続いている。
昨日は色んな事が起こりすぎた。
プールで体力が果てるまで泳いでいたら、暴漢に襲われかけた。
間一髪で助けてくれたのは忍様。
あれ、そういえばどうしてあそこに現れたのかしら?
忍様のマンションに連れていかれて手当などをされて、その間私はほとんど寝たり起きたりだったから記憶がちょっと曖昧。
それから忍様から過去に「おいた」の経験がたくさんあることを告白され、まぁこれは私からその話題を振ったのだけれど、詳細な内容に関しては私が大人になるまでにとおっしゃって昨日は教えてはくれなかった。
でも私は「好きってことを今の私にちゃんと教えてほしい」ってお願いした。
正直、一線を越えてしまうことも覚悟していた。
なのに
なのになのに
忍様が教えてくれたことは「津和蕗桃乃のどんなところが好きか」ということで、しかも1つ言う毎に、今度は私が「周防院忍のどんなところが好きか」ということを言わされ・・・・
2ターン目を終えた頃、疲れ切った私は眠りに落ちていた。
朝は忍様に起こされ、忍様の作った朝ごはんを食べた。
美味しかったぁ。
私が朝ごはんを食べている間に忍様はクリーニングに出した制服を取りに行って下さり、それに着替えて忍様と一緒にあの度派手な車の置いてある駐車場へ行った。
マンションを購入している忍様、駐車場もマンション内のものを購入していて、その駐車場はそれぞれにシャッターが設置されている。
リモコンキーを使ってシャッターが上がり切るのを待っていた時だった。
隣りの駐車場の人が同じようにリモコンキーでシャッターを上げ始めた。
何気なく隣りの人を見たらその人は立花高等科の生活指導の先生だった。
先生を見た瞬間私は無意識に「先生おはようございます」と挨拶をし、頭を下げた瞬間自分がとんでもないことをしてしまったと気がついた!
顔を上げれば先生の方も驚いた顔をしていて、それでも「おはよう」と答えて下さった。
こちらのシャッターが上がり切った時に忍様は「お先に失礼します。」と挨拶をして下さったが、私は車に乗り込んで忍様がシャッターを下げている間はもうどうしていいのか分からず、頭の中はパニック状態だった。
絶対「朝帰り」だと思われている。いや「朝帰り」なのは間違いない。でも「おいた」は無かったのに・・・・
いっそのこと忍様との間に何かが起きていたらこんな気分にはならなかったのかもしれない。
そう思いながら私は深い深いため息をついた。
「今日は何か予定が入っていますか?」
「いえ、特には・・・」
でも遊びに行ったりお出かけしたりする気分ではない。
「亜紀枝様に取成して頂こうかと思うのですが、そういうのはお嫌ですか?」
正直に言えば嫌だった。なんだか他人の権力に縋るようで、でも本当の事情を知ってもらいという気持ちがあったし、今の忍様を誤解されるのは嫌だったから忍様の提案を飲むことにした。
「では僕の実家にこのまま向かいますね。」
そう言うと忍様は私の知らない道へ車を走らせた。